―― ところで先日『大東京トイボックス』最新刊の9巻が発売されましたが、電子書籍版はニコニコ静画のみで紙と同時発売、Kindleストアなどほかの電子書店は少し遅れて展開とのことですが、Kindleストアなどはどうしてもブランクができてしまうものなんでしょうか。
小沢 データ入稿自体はニコニコ静画と差がなく、ほぼ同時に行っていますが、作家や編集部レベルではいつ出るのか分からないので、Kindleストアに並んだものを見つけるしかないです。その点ニコニコ静画は、同じ日で(発売する)と言っていただけるので、出版社側からすれば安心感があるでしょうね。
―― 電子書籍でいろいろなコミックを見ていて気になるのが、カバーをめくったところの本体表紙が抜け落ちてるじゃないですか。作者の方からするとこだわりがあるはずのイラストが、電子書籍では落っこっちゃってるという。
小沢 あれ落ちてるんですよね。
―― 表紙はあるけど、その折り返しの部分はないし、裏表紙もない。これが自炊の場合だと、カバーをまるごと長尺モードで取り込むので、全部残るんですけどね。
小沢 じゃあ背表紙も保存してます?
―― 保存しています。カバーをまるごと保存して最後のページにつけ、それとは別に表紙の範囲だけを別ファイルで切り出して、一番最初のページに持ってくるというやり方ですね。だから『大東京トイボックス』でも、背表紙はもちろん、カバーを取った本体表紙もきちんと残ります。作家としてはこの辺りのこだわりはどうなんでしょう。
小沢 本体表紙が抜けていることは、Twitterでフォロワーの方に指摘されて初めて気が付いたんですね。あれはうっかりでした。何とかできないかなと相談しているところです。
―― わたしが知る限り、どの電子書店でも本体表紙は落ちてますから、実現すれば画期的な話かもしれませんね。
小沢 田中圭一さんの漫画とか、僕はまずあそこを見るところから始まりましたからね(笑)。
―― 漫画単行本の醍醐味(だいごみ)はあそこですよね。僕は喜国雅彦さんの『傷だらけの天使たち』のカバー裏側にあった別の漫画が思い出深いです。ああいう特典は電子化するときも収録しておいてほしいと個人的に思うんですが、漫画家さん自身は、そうしたデータ作りはこだわっていないような。
小沢 こだわってないというか、口を出す機会が皆無で、それはかなり問題だと思っています。そもそもどの電子書店で配本されてるかが分からないし、出版社から毎月もらう明細も、「電子書籍売上」という項目で(電子書店ごとの数字が)丸まっちゃってるんですね。
―― その電子書籍の売上ですが、ある程度は見込めるようになってきましたか?
小沢 恐らく今年は収入の10%が電子(からのもの)になるのではと感じています。それだけで生活はできませんが、無視できる数字でもないという。
―― 10%は大きいですよね。Kindleというプラットフォームができたことで、収入にきちんと反映されるところも出てきているという感じなんですね。
小沢 そうですね。何年か前の「十何円」みたいな世界とは変わりましたね。電子書籍に対して積極的に動いている作家さんは、そういう感じになってくるんじゃないでしょうか。
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