雑誌読み放題サービスを比較する――どれだけ読めるのか編短期連載

月定額で雑誌が読み放題になるサービスが人気だ。各社のサービスを比較するこの連載、今回は各サービスで読めるページに違いはあるのかをチェック。

» 2015年05月13日 05時00分 公開
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 近年よく話題になる定額制サービス。毎月一定額を支払うことで、利用し放題になるサービスは、音楽や映像の世界では幾つか有名なサービスが存在するが、その波は、本、とりわけ雑誌の領域にも押し寄せている。

 本企画では、NTTドコモの「dマガジン」のほか、オプティムが提供する「タブレット使い放題・スマホ使い放題」、「ビューン」、U-NEXTの「U-NEXT」の4サービスについて、幾つかの視点から比較した短期連載をお届けする。

 第1回では、各サービスで読める雑誌のラインアップを比較した。その後dマガジンで講談社『FRaU』が追加される(5月12日から)といった動きも起こっている。

 第2回目となる今回検証するのは、こうした読み放題サービスの対象雑誌は実際にどの程度のページが読めるのか。紙版や電子書店で販売されている電子版と比較するとどういった違いがあるのかを調べた。なお、今回の検証では単体で契約可能なサービスのみとし、動画配信サービスの付帯サービスであるU-NEXTは比較対象から外した。

早速検証

 今回チェックに用いた雑誌は、『サイゾー』(2015年4月号)、『週刊東洋経済』(2015年5月16日号)の2誌。どの読み放題サービスにも配信されており、横並びで比較できるためだ。このほか、両誌の紙版、一般的な電子書店で販売されている電子版(今回はAmazon Kindleストアで購入)も用意し、それぞれのページ構成の違いを調べた。

 結果を示す前に、雑誌のような冊子で用いられる用語として、「表まわり」を紹介したい。これは、表紙(表と裏)、表紙の内側(裏)ページを指し、表表紙を表1、表表紙の裏を表2、裏表紙の裏を表3、裏表紙を表4と呼び、表1〜表4をまとめて「表まわり」と呼ぶ。

 こうした表周りには広告が入ることが多いが、雑誌の電子版ではこうした広告ページは省かれるのが通例だ。表回りも、電子版では雑誌の顔となる表1のみ存在し、そのほかは省略されるのが電子版に共通した特徴となっている。ただし、自社に関連する商品などの広告、いわゆる自社広のページはこの限りではない。本稿では、表1〜4の4ページを含んだページ数の比較を行っている。

『サイゾー』(2015年4月号)の場合:全164ページ

『サイゾー』(2015年4月号) 『サイゾー』(2015年4月号)
ページ dマガジン オプティム ビューン 電子版(Kindle)
表表紙(表1)
表2 × × × ×
3
4
5
6
7
8
9(広告) × × × ×
10(広告) × × × ×
11
12(広告) × × × ×
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57
58 ×
59 ×
60 ×
61 ×
62 ×
63 ×
64 ×
65 ×
66
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70
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75
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77
78(広告) × × × ×
79(広告) × × × ×
80 ×
81 ×
82 ×
83 ×
84
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87
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90
91
92
93
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95
96(自社広)
97(自社広)
98
99
100
101
102
103
104
105
106 ×
107 ×
108 ×
109 ×
110 ×
111 ×
112 ×
113(自社広)
114 ×
115 ×
116 ×
117 ×
118 ×
119 ×
120 ×
121 ×
122 ×
123 ×
124 ×
125 ×
126 ×
127 ×
128 ×
129
130
131(広告) × × × ×
132 ×
133 ×
134 ×
135 ×
136 ×
137 ×
138
139
140
141(広告) × × × ×
142 ×
143 ×
144(広告) × × × ×
145(広告) × × × ×
146 × ×
147 × ×
148(広告) × × × ×
149(広告) × × × ×
150 ×
151 ×
152(広告) × × × ×
153(広告) × × × ×
154(広告) × × × ×
155 ×
156(広告) × × × ×
157(広告) × × × ×
158 ×
159 ×
160(広告) × × × ×
161 ×
162 ×
表3 × × × ×
裏表紙(表4) × × × ×
表紙を除く広告ページ 20
通常ページで読めないページ数 12 0 41 0
読み放題で読めるページの割合 80.48% 87.80% 62.80% 87.80%

 まずはサイゾーについて。

 有料で販売されている電子版(以下、通常電子版)は、広告ページ以外はすべて読むことができた。このケースでは全体の約12%が広告ページだった。

 オプティムのサービスで通常電子版と同じページ数となっているのが目を引く。その秘密は後述するが、これは満足感がある。

 dマガジンは通常電子版から12ページ分カットされ、全体としては約80%を読むことができた。上述した広告ページの割合を考えると、通常ページのカットの割合はわずか。ちなみに、省かれている通常ページの内容は、アダルトグッズやアダルトサイト関連のものだった。

 ビューンは通常ページが41ページと多めにカットされており、全体の62%程度の内容を読むことができた。

週刊東洋経済(2015年5月16日号)の場合:全120ページ

週刊東洋経済(2015年5月16日号) 週刊東洋経済(2015年5月16日号)
ページ dマガジン オプティム ビューン 電子版(Kindle)
表紙(表1)
表2(広告) × × × ×
3(表2との見開き広告) × × × ×
4(広告) × × × ×
5(企画広告)
6(企画広告)
7(企画広告)
8(企画広告)
9
10(広告) × × × ×
11
12(広告) × × × ×
13
14
15
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17
18
19
20
21
22
23
24
25
26(広告) × × × ×
27
28(巻頭特集) × × ×
29(巻頭特集) × × ×
30(巻頭特集) × × ×
31(巻頭特集) × × ×
32(巻頭特集) × × ×
33(巻頭特集) × × ×
34
35
36
37
38
39
40(インタビュー) × × ×
41(インタビュー) × × ×
42
43
44
45
46 × × ×
47 × × ×
48 × × ×
49 × × ×
50 × × ×
51 × × ×
52 × × ×
53 × × ×
54 × × ×
55 × × ×
56 × × ×
57 × × ×
58
59
60
61
62 × × ×
63 × × ×
64 × × ×
65 × × ×
66 × × ×
67 × × ×
68
69
70 × × ×
71 × × ×
72
73
74 × × ×
75 × × ×
76 × × ×
77 × × ×
78 × × ×
79 × × ×
80 × × ×
81 × × ×
82 × × ×
83 × × ×
84 × × ×
85 × × ×
86 × × ×
87 × × ×
88 × × ×
89 × × ×
90 × × ×
91 × × ×
92(企画広告)
93(企画広告)
94
95
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105(広告) × × × ×
106
107(自社広)
108
109
110
111
112
113
114
115
116(自社広)
117(自社広)
118
表3(企画広告) × × × ×
裏表紙(表4) × × × ×
表紙、自社広、企画広告を除く広告ページ数 9
通常ページで読めないページ数 47 0
読めるページ 53.33% 92.50%

 通常電子版が広告ページを除く全ページを読めるのはサイゾーのケースと同様だが、読み放題サービスで提供されているものは巻頭特集をはじめ通常ページが47ページ分カットされており、これはdマガジン、オプティム、ビューンで一律だった。出版社がそうした条件で配信を許諾しているのだと思われる。

閑話:「袋とじ」は電子版でどういう扱いなのか?

 もう1つサンプルとして、袋とじがある雑誌について、dマガジンとビューンでのみ取り扱いがある光文社の『FLASH』2015年5月12・19日号(1330号)でも同様に調べてみた。

 同号は袋とじ部分も含め全104ページ。FLASHの通常電子版はKindleストアでの取り扱いがなかったため、BookLive!で購入している。

『FLASH』2015年5月12・19日号(1330号) 『FLASH』2015年5月12・19日号(1330号)
紙版目次 dマガジン ビューン 通常電子版(BookLive!)
表紙(表1)
表2(広告) × × ×
3 × ×
4 × ×
5 × ×
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
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18
19
20
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26
27
28(広告) × × ×
29(広告) × × ×
30
31
32
33(袋とじ) × ×
34(袋とじ) × ×
35(袋とじ) × ×
36(袋とじ) × ×
37(袋とじ) × ×
38(袋とじ) × ×
39(袋とじ) × ×
40(袋とじ) × ×
41 ×
42 ×
43 ×
44 ×
45 ×
46 × ×
47 × ×
48 × ×
49 × ×
50 × ×
51 × ×
52 × ×
53 × ×
54 × ×
55 × ×
56 × ×
57 × ×
58 × ×
59 × ×
60 × ×
61(袋とじ) × ×
62(袋とじ) × ×
63(袋とじ) × ×
64(袋とじ) × ×
65(袋とじ) × ×
66(袋とじ) × ×
67(袋とじ) × ×
68(袋とじ) × ×
69 × ×
70 × ×
71 × ×
72 × ×
73
74
75
76
77
78
79
80(広告) × × ×
81(広告) × × ×
82
83
84(広告) × × ×
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94(広告) × × ×
95
96
97
98
99
100(広告) × × ×
101(広告) × × ×
102
表3 × × ×
裏表紙(表4) × × ×
表紙を除く広告ページ数 11
通常ページで読めないページ数 38 43 0
読めるページ割合 52.89% 48.08% 89.42%

 こちらも通常電子版は広告ページを除く全ページがあり、読み放題では通常ページが一部カットされる傾向がみられる。同号のFLASHは袋とじが2個所付いているが、dマガジン、ビューンいずれも省かれていた。また、冒頭の独占スクープページ(3〜5ページ)のほか、グラビアページのほとんどがカットされている。

 ビューンではカットされているページのうち、dマガジンでは数ページがカットされておらず、その分だけdマガジンの方が読めるページがわずかに多い結果となった。

まとめ

 今回の検証では、オプティムの読み放題サービスでは通常電子版と同レベルのものが用意されているケースがあることが分った。ただし、週刊東洋経済のように出版社側の判断で通常電子版と同じものを提供できないケースでは「Lite」などの表現を用いている。

 なぜオプティムはこうしたことが可能なのか。それは、同サービスでは最新号をカバーしていないため。雑誌という賞味期限が比較的短いパッケージの特徴と、読み放題サービスによる雑誌販売への影響を考え、最新号はあえてカバーせず、代わりに、提供するものは可能な限り通常電子版と同じものを用意しているのだ。広告ページの割合などは雑誌によって異なるが、同じ雑誌の同じ号で比較すれば、オプティムのサービスで読めるページは多い傾向にあるといえるだろう。

 一方、dマガジンはサービス比較において上位に位置するケースが多かった。少なくとも、比較で最下位となるケースはなかった。オプティムと違い、最新号もタイムリーに配信されること、そしてラインアップの豊富さと合わせ、読み放題サービスと聞いて利用者がイメージするものを高いレベルで提供しようとしている。FLASHのケースから想像するに、ユーザー数の多さも強みとしながら出版社から有利な条件を引き出せているのだと思われる。

 また、今回の検証でビューンはやや奮わない結果となった。ただし、必要であればアプリ内で通常電子版を別途購入できるようにはなっている。とはいえ、こうした比較をしない限り、読み放題でカットされているページがどういったものかを知るすべがないことなどを考えると、サービスが複雑に見えがちな部分がある。


 次回は月額料金やその支払い方法、そのほか読書体験という観点から各サービスを比較し、この連載のまとめとしたい。

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