マンガ業界を盛り上げたい――コミックスマートの取り組み(1/2 ページ)

新人のマンガ家が作品を発表できる場だけではなく、制作に取り組める環境も提供しているコミックスマート。その取り組みについて聞いた。

» 2014年02月24日 13時00分 公開
[渡辺まりか,eBook USER]

 2013年2月、ネットマーケティング事業やソーシャルゲームを中心としたコンテンツ事業を展開しているセプテーニ・ホールディングスが新会社コミックスマートを設立した。設立された同社は新人マンガ家の支援プログラム「Route M(ルートエム)」と新人マンガ家の作品を配信するプラットフォームとして「GANMA!(ガンマ)」を提供している。

 この支援プログラムの目的について事業担当者に、またそれを利用して作品を発表しているマンガ家に話を聞いた。

マンガ家になりたい人を本気で支援したい

―― まず、コミックスマートの概要について教えてもらえますか。

コミックスマート取締役・上河原圭二氏(以下、上河原) マンガ家を発掘して支援・マネジメントするためのプログラム「Route M」と、読者の反応がリアルタイムで分かる仕組みも取り入れた連載型マンガ配信プラットフォーム「GANMA!」を提供しています。将来的にはそれらの作品を単行本化したり、ゲーム化、アニメ化するなどしてコンテンツ配給していくことを目指しています。

コミックスマート取締役・上河原圭二氏 コミックスマート取締役・上河原圭二氏

―― Route Mですが、1月末にリニューアルし、マンガ家に毎月支給する支援金をステージに応じた額にする形となりましたよね。新人発掘の際、コンテスト形式などの賞金として数10万円〜数100万円を贈与することはあっても、毎月継続してというのは例がないように思います。

上河原 そうですね。マンガ家を目指す人の多くが、制作活動を続けるために、多くの時間を生計を立てるためのバイトに当てているのが現状だと思います。でもせっかくの能力ですから、全力で制作に当たってほしい。僕たちは本気でプロになりたい人たちを支援したいと考え、そのような形を採っています。

―― ステージに関係なく、制作スタジオを無料で利用できる、とありました。月に何回までなどの制限はあるのですか?

上河原 いいえ、制限はありません。社員がいる間であれば、毎日来ていただいても、何時間使っていただいても構いません。もちろん、制作に必要な画材――ペン先やインク、スクリーントーン――もすべて無償で提供しています。

デジタル/アナログどちらにも対応しり制作スタジオ
マンガ家はリラックスして制作に励める
豊富な画材はすべて無償

作品をより良いものにすることだけを本気で考える

―― GANMA!の作品を拝読しましたが、レベルの高い作品がそろっている印象を受けました。

上河原 コミックスマートでは、クオリティを上げるためにマネジメントにとても力を入れています。特にRoute Mでは、一定の基準を設けてマンガ家の選定を行っており、セレクションに通過したマンガ家に対しては、当社の担当編集者と制作方針を詰めていきます。

 制作進行過程では、対面の打ち合わせだけではなくLINEやSkypeなどを利用したコミュニケーションも日常茶飯事です。取材が必要であればその段取りなども行い、まさに二人三脚で作品を作り上げているんです。

アプリ内のイラスト投稿機能 アプリ内のレビュー・イラスト投稿フォーム。投稿されるとこのように即時更新されていく

―― アプリの作りも興味深いです。アプリ内にレビューやイラスト投稿フォームを設け、読者とマンガ家がコミュニケーションを楽しんだり、加えてランキングによりマンガ家自身もそこから励みを得られるようになっています。実際、どれほど活発にやり取りされている印象でしょうか。

上河原 レビューやイラストはリアルタイムに更新されており、最新号はもちろん、過去に配信された作品に対しても日々新たな投稿が増え続けています。時々、マンガ家本人が「本人降臨!」とイラストを投稿すると、読者も盛り上がって、さらに投稿が増えます。

―― 現在13本の作品が連載中ですが、ランキング最下位になってしまった作品は、早晩打ち切られたりしてしまうのでしょうか。

上河原 紙の媒体と違い、「枠」が決まっているわけではありませんので、「打ち切り」という概念はありません。

 一方で、このアプリはストリーミング形式のため、ページをめくるごとにデータ通信が行われ、読者の作品閲覧における行動データを把握できるようになっています。作品の閲覧数やPV数、滞在時間だけではなく作品からの離脱率やピンチアウト(画像を拡大して閲覧)された数なども把握できるため、ストーリーの流れやセリフのボリューム・フォントの大きさなど、課題解決のヒントとなるデータを取得できます。このデータを活用して、マンガ家と担当編集者がよく協議し、どうすればもっと読まれるようになるか、魅力的な作品になるかを追求し、工夫・改善するようにしています。その努力の結果、作品のレベルはアップしていると感じています。

―― 連載が進んで、手離れが良くなったとしても、本気で良い物を作っていこうという意気込みが良いサイクルを生んでいるのですね。

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