コラム
» 2013年08月07日 14時00分 UPDATE

新聞社のペイウォールの大半が失敗するのはなぜか

ペイウォールはいいところ、自立的なビジネスモデルを探す新聞社の未来に対する間に合わせの処置に過ぎない。世界が電子書籍・ニュースの消費に向かう中、書店や新聞が路傍に取り残されないためにペイウォールに代わる手法が必要なのではないか。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]

 北米最大の全国紙を発行する新聞社の一部はオンラインコンテンツへのアクセスを読者へ販売(ペイウォールなどと呼ばれる)する方向へと戦略を転換している。平均的な地方紙がこの新たなモデルを活用するところまできているが、その大半はあまりうまくいっていない。新聞社の収入を押し上げるために、ペイウォールに代わる手法を考える必要がある。

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 ニュースを消費するためのペイウォール手法を確立したのはThe New York Timesの貢献によるところが大きい。同紙はそのアイデアを大きく展開し、ある一定回数までのコンテンツ閲覧は無料で提供し、それを超えた閲覧に対して課金している。現在、同社のオンラインコンテンツの購読者数は64万人で、四半期ごとの売り上げは二けた成長している。英国のThe Daily TelegraphとThe Washington Postといったほかの幾つかの全国紙もこの先例に従っている。

 全国紙は自社の電子ビジネスをペイウォールの構造に転換させるのにそれほど苦労していない。分散した非常にアクティブな購読者層を抱え、業績も好調だが、中小新聞社は広告収入の劇的な減少を相殺するに足る売り上げをいかに生み出すかという難問に直面して苦しんでいる。

 2007年以来、広告収入は英国と米国で40%ほど減少した。全国広告と地方広告を生み出す上で屋台骨となっていた企業はGoogleとアドマーケットプレースの利用へ鞍替えしている。一部の情報によると、今年末までにWeb・動画広告の費用は355億ドルに達するというが、中でもアドエクスチェンジは新聞社がさほど費用をかけずにオンラインオーディエンスにリーチできる最も人気のある手段となっている。アドエクスチェンジとは本質的に購入者が非常に安価に広告スペースに入札し、購入することができる電子プラットフォームだ。多くのWebサイトは――電子新聞だけではないが――業界用語で過剰在庫として知られている空きの広告スポット販売に依存している。

 電子広告は従来の紙の新聞に掲載される高価格の広告の代わりに、広告主がより低価格の広告を当然ととらえるよう仕向けている。「新聞社が3000ドルでアルマーニのスーツを売りつけようとするようなものですが、角を曲がればGoogleから95%割引で同じスーツを買うことができます」と広告エージェンシー、Centroのショーン・リーグセッカー氏は話す。「広告主はコンテキストではなくオーディエンスを購入しており、どのサイトに広告が表示されるかは気にしていません」と語るのは、Webサイトのデータ解析企業、Kruxのゴードン・マクレオド社長だ。

 購読者数と広告収入の減少が相まって、無料のニュースサービスが増えている。ニュースが最終的に掲載されるのはThe Huffington Post、The Drudge Report、Business Insider、Buzzfeed、Politicoなど、世界で最もトラフィックが集まる一部のWebサイトだ。Yahoo NewsやGoogle Newsといった、より巨大なポータルサイトは非常に少ない資源で、従来の報道組織よりも少ないコストで、そのほとんどは無料のニュースフィードを再利用することで、フルサービスのニュースプロダクトを作るというアイデアに基づいている。

 ペイウォールはいいところ、自立的なビジネスモデルを探す新聞社の未来に対する間に合わせの処置に過ぎない。平均的な新聞社は読者が金を払って記事を読むことを保証する魅力的なストーリーを単純に有していない。デジタルに敏感な消費者はZiteやFlipboard、Pulseを利用したり、ニュースソースを直接確認するなどして、より早くニュースに触れている。新聞社は次の20年も持続可能であるために、業務を縮小し、スタッフの数を削減する必要がある。ほとんどの新聞社はサイズダウンし、利益は減少するだろうが、一部は存在し続ける可能性がある。

 業界のエキスパートはほとんどの新聞社が次の10年で死に絶えるとしている。長期間生き長らえるのは、ある地域の住民向けに魅力的な地域ニュース、ストーリー、コンテンツを提供する小規模な地方紙だろう。オンラインニュースが提供する即時報道に対抗できず、全国紙と地方紙の大多数は単純に消えうせるだろう。

 ペイウォールを超えて、一部のニュースアグリゲーション企業は代替ソリューションを探し求めている。広告主が地方紙の広告を購入し、オンラインでもその広告を特集できる機能を提供するプロプライエタリな広告プラットフォームを開発する企業は幾つか存在する。このオールインワンソリューションはより容易な販売につながり、広告パートナーとの直接的関係を発展させるはずだ。

 オンラインのみでの広告展開はリーチこそ拡大するが、個々人への関連はより希薄になるという欠点も持ち、それが持続可能かどうかは分からない。より巨大な小売企業の一部、例えばAmazonでは広告付きKindleデバイスのように自社製品上に広告を直接表示させることで、自社プラットフォーム上でかなり成果を上げているようだ。

 The New York Timesは例外で、その成功はまねできない。ほとんどすべての新聞社がこのモデルに参加し、嘆かわしいほどに少ない購読者数を公表することはほとんどない。ペイウォールのコンセプト全体が失敗のレシピとなっており、Appleが残した足跡に追従する企業のように、成功しているビジネス慣行をまねするほかの業界になぞらえることができる。

 他企業のまねをする代わりに新聞社は革新的であるべきだが、金のない新聞社は研究開発に投資しようとしない。世界が電子書籍・ニュースの消費に向かう中、まず書店が、次に新聞が路傍に取り残されるのではないだろうか。

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