DC、2つの新電子コミックレーベルを発表

インタラクティブ性はスクリーン上にのみ存在するわけではない。出版社とファンとしての読者の間に存在する――米コミック出版大手のDC Comicsはそんな考えの下、2つの電子コミックレーベルを立ち上げた。

» 2013年06月20日 15時01分 公開
[Brigid Alverson,Good e-Reader Blog]
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 大部分の電子コミックは、プリント版コミックとしてスタートしたか、どこかの時点でプリント版コミックとなるべく運命づけられているかのいずれかだが、メディアの成熟に伴い変化が起こりそうだ。

 米コミック出版大手のDC Comicsは6月上旬、電子版に親和性の高いテクニックを用いた「DC2」「DC2 Multiverse」という2つの電子コミックレーベルを発表したことで、その成熟度を押し上げた。

 実際、DC2のコミックをプリント版へ置き換えるのを想像するのはどのような手段であれ難しい。コマからコマへの移動ではなく、読者はスクリーンをタップし、吹き出し、画像、新たなシーン全体などの次の物語要素を取り込む。DC Comicsのジム・リー氏がWIREDブロガーのローラ・ハドソン氏に語ったところによると「クールなことは従来の物語のルールに実際に立ち向かうことです。厳密な左から右への西洋文化のナラティブの恩恵を受けてはいません。前後に行ったり来たりすることもあり得ます」という。

 スワイプするごとに新たなビジュアル要素を呼び出すのは完全に新しいアイデアというわけではない。これはMark WaidがThrillbentで使った手で、MarvelのAvengers vs. X-Men Infinite、webcomickersは何年にも渡って同じような手法を用いてきた(特に頭に思い浮かぶのはダン・ゴールドマン氏のRed Light Propertiesだ)。

 DC2レーベルは1960年代のBatmanのTV番組を下敷きにした『Batman '66』を引っさげてローンチ予定だが、テレビ番組がどのように電子コミックに生まれ変わるか想像するのはたやすく、ポップアップする音響効果と変わった場面遷移が利用されるのではないかと思われる。

 対する、DC2 Multiverseレーベルは読者がシナリオを選択するタイプの電子化された冒険コミックを出版する(本全体の半分ほどのページを次々に行ったり来たりするペーパーバック版に比較するとシナリオを追うのは易しい)。この新レーベルの最初のシリーズは『Batman: Arkham Origins』で、間もなく発売されるビデオゲームとのバンドルが予定されている。ゲーマーにとって魅力的なのは明らかだ。読者は読み進めるごとにストーリーを変更でき、違うシナリオを選ぶとどうなるか枝分かれするポイントまで戻ることができる。しかし、DC Comicsはインタラクティブ性を次のレベルへと押し上げようとしている。

 「読者がストーリーの中でどのような操作をしたか、読者の反応が良かったのはどのストーリーだったかフィードバックを受け取っています」とリー氏。「それにより多次元的ストーリーに章を追加する際に、あるキャラクターの運命を決する投票ができるレベルにまで、意味のある情報が提供されます。インタラクティブ性はスクリーン上にのみ存在するわけではありません。われわれ出版社とファンとしての読者の間に存在するのです」。

 こうした仕掛けについてTechhiveのアンディ・イハナクト氏は、コミックはユーザーの選択をDC Comicsに送信することになり、(データは集積され個々のユーザーの追跡は行われないが)それはやや気味悪いと述べている。

 これらの新コミックレーベルを発表する際、リー氏とDC Entertainmentのダイアン・ネルソン氏はDC全体にとって電子コミックの重要性は増しているとも述べた。「現在、われわれが電子出版しているコンテンツのダウンロード回数は1カ月に100万です。もはやさまつなビジネスではありません」とネルソン氏はWIREDに語った。一方DC Comicsのプレスリリースによると、リー氏は「プリント版と電子版の同日発売を開始して以来、プリント版は2けた成長、電子版は3けた成長を見せています」という。

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