漫画ブロガーが本気で教えたい “今年出たすごい1巻”熱血作品からファンタジーまで(2/3 ページ)

» 2012年10月23日 11時00分 公開
[漣,ITmedia]
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ポップな絵柄、駆け抜ける狂気と切なさ 「空が灰色だから」(阿部共実)

photo 「空が灰色だから」

 週刊少年漫画誌の異端児、週刊少年チャンピオンで生まれたクレイジーな作品。不思議な漫画です。いろんな要素が詰めこまれ、ドロドロに煮詰まっている。絵柄はポップでかわいらしいです。やたらノリのいい会話劇も楽しい。けれどそこから予想もつかない終着点に向かうエピソードも潜んでいます。トリッキーな構成をしていますが、だからこそ「ページをめくって物語を読む」ことのシンプルな面白さが凝縮されています。単行本は現在3巻まで発売中です。

 「俺物語!!」に続き、日販による“この1巻がキテる!フェア”の第2弾に選ばれたりもしました。これで存在を知った読者も多いのではないでしょうか。


photo 突然、歌舞伎のように見得を切るキャラクター。漫画で何が起きるかは、読んでみてからのお楽しみ

ここが見ドコロ! 「感情をふり回される多彩な展開」

photo 時に切ないお話も

 繰り返しになりますが、最後まで何が飛び出すのか分からないのがこの漫画のポイントです。どんなラストがまっているのだろうと、常にドキドキしながら読み進められる――これだけでとても楽しい読書体験です。

 1話1話は短く、コミックスには10以上のエピソードが収録されています。だから一気読みすると展開の速さが恐ろしい。ジェットコースターにのってそのまま肝試しにつっこんでいくような感覚! ムチャな例えですが、それぐらいのスリルが体験できるでしょう。

 狂気的な一面が目立つ作品ではあります。しかし、ふいにリリカルな感動も味わわせてくれる。エピソードごとの強烈な起伏に、虜にされてしまうのです。まさに心がざわつく、濃厚な面白さ。

 毒が強いので人を選ぶとは思いますが、ぜひ1度触れてみてほしい作品です。恐怖も幸福も希望も絶望もごちゃまぜになったカオスが、あなたを待ち構えていますよ。


喪女的黒歴史、全・速・力! 「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(谷川ニコ)

photo 「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」

 言いわけがましいタイトルが見事に内容を象徴している作品。モテない女子、いわゆる「喪女」の女子高生を主人公とした漫画です。1巻が発売された今年のはじめにはブレイクしていました。いまや押しも押されもせぬ喪女ギャグ漫画の代表格(?)にのし上がった印象を受けます。

 鬱屈(うっくつ)してばかりの喪女ライフを送る主人公よ! お前がモテないのはどう考えてもお前が悪い!――でも、彼女の身にちょっと楽しいことが起きると、思わずほっこり。そんな同作の単行本は2巻まで発売中です。作者・谷川ニコ先生のインタビュー記事も楽しいので、こちらもチェックしてみてはどうでしょうか。

ここが見ドコロ! 「イタい!」

 ストレートですが、とにかくイタい。心がズキズキする。この痛々しさは、漫画を読んでいる最中にいたたまれなくなって悶(もだ)えるほどです。話しかけられてどもったり、男子に好かれているんだと勝手な勘違いをしたり――といったイタさは全然マシなレベル。声優が愛をささやくイヤらしいボイスデータを母親に聞かれたエピソード(2巻収録)は……ああーッ! 思い出すだけでッ!

 オタクのあるあるネタから1歩も2歩もふみ外していく主人公のもこっち。「もうやめて! もこっちのライフはゼロよ!」と思いきや……彼女、けっこうピンピンしてる。ナイーブなくせにたくましい。無駄にポジティブで反省しない。

photo 1巻冒頭、高校生になりたてのもこっち。この程度のイタい感じは、序の口もいいところ

 もこっちは苦悩を抱えたヒロインですが、彼女を見て苦悩するのは読者も同じ……。とにかくザンネンな作品なのです。かわいそうだけど、苦笑いしちゃう。人の黒歴史に悶絶(もんぜつ)する。そんな楽しみ方ができますよ。


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