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» 2011年07月14日 10時00分 UPDATE

腐女子勉強会:腐男子ってゲイなの? いいえ!

男性同士の恋愛を扱った小説や漫画などを好む女性を指して使われる「腐女子」。現代のコンテンツマーケットで強力な存在になりつつある腐女子の世界について、今Web上で女子力全開のまみぺこさんが4名の方に教えを請う。今回は、芸人として活動する傍ら、一橋大学の非常勤講師も務める才人、サンキュータツオさんが男性の視点から腐女子の世界を考察する。

[まみぺこ,ITmedia]

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ここまでのあらすじ

 「えっちなことしかよく分からないWebデザイナー&コーダー」のまみぺこさんが、未体験の腐女子ワールドを4人の導師に学ぶ本企画。これまで、「透明感のある恋愛」を求めて若くしてボーイズラブ(BL)の世界にはまった才能あふれるマルチアイドルのJulieさん、卓越した妄想力で制作サイドが予期すらしない関係性を楽しみ、「BLは脳の知的スポーツ」と公言する秋葉原のメイド喫茶「シャッツキステ」オーナー、エリスさんが腐女子ワールドの深淵をまみぺこさんに垣間見せた。彼女たちがオススメするBL作品は、外れのない傑作ばかりだ。

 繰り返し述べておくと、腐女子の世界は広大であり、その一端を知ったところで、それが腐女子のすべてだといえるようなたぐいのものではない。しかし、未体験の分野を理解しようと努めるまみぺこさん、あるいはこの記事の大半の読者にとっては、この4人の言葉はすばらしいガイドとなるだろう。

 では、引き続きまみぺこさんとともに体験いただこう。腐女子たちの脳内ワールドを。そして、現代のコンテンツマーケットの一角を占めるジャンルの奥深さを。

「萌え」と「BL」はつながっていた――サンキュータツオさんの場合

まみぺこ
漫画もアニメもゲームも大好き。
きちんとヲタクとして育ってきたはずなのに、ボーイズラブ(BL)だけが分かりません!
なぜ? どうしてみんな腐っていくの? 私だって腐女子になりたかった。
BLの魅力をもっと知りたい。腐女子の世界をもっともっともっと教えてほしい。
腐女子は、一体何に萌え、ときめいているのか。その素顔に迫ります。

「腐男子だからってゲイじゃないです!」
ヲタク芸人で腐男子のサンキュータツオさん。
男子から語られることのなかった「BL」の魅力を熱く語ってくれました。

サンキュータツオさん

オフィス北野所属の芸人として活動する傍ら、一橋大学の非常勤講師も務める才人、サンキュータツオさん。アカデミックな立ち位置からお笑いやBLに関する考察も多く、腐女子への理解も深い。ちなみに、前回登場いただいたエリスさんがオーナーを務める秋葉原のメイドカフェ「シャッツキステ」の大ファンでもある。今、芸能界一BLを深く、鋭く語れる人物

まみぺこ
サンキュータツオさんは大学の非常勤講師もされているヲタク芸人さんで、
「萌え」と「BL」と「フィギュア」をこよなく愛する、いわゆる「腐男子」。
現在、腐女子布教本を執筆中ということですが、
タツオさんはどうしてこうなったんですか?

サンキュータツオさん
どうしてこうなったってそんな!
僕はもともと萌えアニメが大好きだったんです。
『ちょこッとSister』っていうね、クリスマスに妹がプレゼントされるという
ぷにぷにロリロリした女の子が出てくる萌えアニメでブヒブヒしていたんです。
BLのことは知っていたけど、腐女子の世界の魅力を本当の意味では理解できていなかった。
でも、分かったんです。今まで頭でだけ分かっていたものが、体で分かったんです。

まみぺこ
えっwww
体で分かっちゃったんですか♂ はぁはぁ。

サンキュータツオさん
あの! 何か誤解していませんか?
すべてが「ああそうか、そういうことだったのか」と、体で理解したんです。
点と点が線になって、面になったような。BLの悟りをひらいたんです。

僕をこの境地に導いてくれたのは『純情ロマンチカ』。
中村春菊先生の漫画です。BLのお約束が詰め込まれていて、
ご都合主義的なやおいの文法をすべてまとめました! という神BLなんですよ。
最高のBLを読んだら、いきなり腐女子の世界にハマってしまったんです。
今までまったくお酒を飲めなかった下戸が、いきなり純米大吟醸を飲んだら
「うまい!」ってお酒の味を知って、飲めるようになったような感じです。

藤井あやさん
大人に……なったんだね……。

サンキュータツオさん
はい。
でも「萌え」と「BL」ってつながっていたんだなって今にして思います。
男が焦ったり恥ずかしがったりする姿はきちんと「萌え」ですし、
性別関係なく「こいつ可愛い」って思えることが「萌え」なんだと気づきました。

サンキュータツオさん

サンキュータツオさん
僕、完全にゲイだと思われていたみたいなんですよね。
BLにハマりたてのころは、そう誤解される危険性にまったく気づいていなくて。
いろいろなところで「BL好き!」「BL好き!」って言いまくっていたら、
あるとき「ゲイなの?」ってツッコんでくれる人がいて、ようやく気づいたんです。
ああ、男が「BL好きです」って言うと、ゲイだと思われるんだ……って。

まみぺこ
wwwwwwww(息ができない)

サンキュータツオさん
ゲイだから男同士がいちゃいちゃしている作品が好きなんだと思われていたんですね。
今まで聞かないでいてくれた人は、僕に気をつかってくれていただけで、
やっぱり僕のことをゲイだと思っていたんだろうな……ってあとで後悔しましたよ。
でも違うんです。僕はゲイじゃないんです!
腐女子のフィルター「腐ィルター」が体で分かったんです。
フィルターの「フ」は「腐」ですよ。「腐ィルター」で世界が広がるんですよ。

まみぺこ
腐ィルターとな!

サンキュータツオさん
例えば『ミラクル☆トレイン』という作品。
大江戸線の駅をイケメンに擬人化した作品なんですけど、
「新宿」だったらホストっぽいのかなとか、
「両国」だったら江戸っ子でスポーツマンなのかなとか、
「月島」はもんじゃが好きなのかな、とかきちんと設定があるんです。
しかも、実在するそれぞれの駅と駅には関係性が存在するので、
腐女子の「腐ィルター」を通して見るとBLとして楽しめるんです。

エリスさん
何かと何かの関係性を読みとって
「こんな要素もある。これもある。あれもある」
「じゃあこんなときめきシチュエーションができるよね」
というふうに腐女子の妄想を広げていくときって楽しいですよね。

サンキュータツオさん
そうですね。
やっぱり「関係性」なんですよね。
実は僕、腐男子になる前から、山岸凉子先生の『日出処の天子』が大好きだったんですが、よくよく考えてみたら、あれってBLとしてもしっかり楽しめる作品だったんだなと。BLの読み方をしなくても、毛人(えみし)と王子は幸せになればいいのにって思えるんです。
ここでがっつり「腐ィルター」を通して読んでいくと世界は変わりますよ。
ただ普通に原作を読むだけでも楽しいのにひとつの作品で二度おいしいんです。

サンキュータツオさん

サンキュータツオさん
少女漫画って、女の子のリアクションがメインですよね。
男が主人公の少女漫画もあるにはあるんですが、やはり少ない。
男が悩んでいる姿ってなかなか読めないんですよ。
でも、BLは、男がめちゃくちゃ悩むんです。そこがたまらなくいい。
恋愛で悩む男の子を読めるって、めったにないですからね。

現実の男が女の子を好きになる理由って「可愛いから」なんです。
もっとストレートに言えば、「セックスをヤリたいかヤリたくないか」なんですよ。
男はセックス脳。でも、女は恋愛脳なんです。
男にしっかり恋愛で悩んでほしいんです。悩んでいる姿を読みたいんです。
どうしてこの2人が結ばれるのか、その関係性をしっかり解釈したいんです。
もちろん男にも恋愛脳はあるので、絶対に男もBLを楽しめると思います。

本当に女としてその人のことを愛しているかどうかなんて
セックスを飽きるまでしてみないことには分かりませんよ。
でも男同士の恋愛では、性欲を抜きにして精神的なつながりを大切にするんです。
「結婚したい」だとか「子どもがほしい」だとか、もうそんなのはどうでもいい。
「おまえ“だけ”がほしい」というストレートな気持ちに真実の愛を見いだしてしまうんです。

エリスさん
男同士だと、その2人の話なんですよね。
その2人は男という性別を超えるんです。BLを読んでいると感情移入してしまって、
「男としてこいつを押し倒したい!」という衝動に駆られることがありますね。
私の中にある男を目覚めさせられる感じ。

サンキュータツオさん
腐女子はBLを読むとき男の気持ちにシンクロしているんですね。
腐女子よりもむしろ腐男子が正しいのかもしれませんよ!
コミケだって1日目と2日目も楽しめるようになりますから
世界がまったく別の世界になって、ぐっと広がります。
ある日いきなり体でバーーーンッと分かる日が来ますよ。
僕、BLって、日本の女性が生み出した文化遺産だと思うんです。
これは男性でも理解できるし、国を超えて理解できます。
腐女子が天下統一する日も来ますよきっと。

まみぺこ
わはー! 私も体で分かりたいです!
「腐男子はゲイじゃない」勉強になりました!
でも、まだまだ腐女子の世界は謎だらけ。
腐女子座談会の最終回はBL漫画家の藤井あやさんから、
「BLを描いているときは完全に攻め」というお話を伺います!
お楽しみに!

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