絶版書籍を電子書籍としてリバイバル――絶版堂は今度こそ成功するか

デジタルハーベストは、絶版書籍を電子書籍としてリバイバル出版する「絶版堂」の運営を引き継ぎ、サービスを再開した。

» 2011年03月10日 18時17分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

今度は軌道に乗る?

絶版堂 絶版堂

 デジタルハーベストは3月9日、絶版書籍を電子書籍としてリバイバル出版する「絶版堂」を再開した。

 かつて一騎が運営していた絶版堂は、「現在の委託状況からサービス継続が困難と判断した」と2010年8月にサービスを終了しているが、これをデジタルハーベストが引き継いだもの。

 絶版堂のビジネスモデルは至ってシンプルだ。詳しくは「絶版状態の著書を電子出版したいときに出版社と交渉する方法」などが参考になるが、要は、出版契約書の内容を確認し、場合によっては出版権の消滅請求などを行いながら、著者の作品の電子書籍化を支援するというものである。

 再開を果たした絶版堂だが、課題が残ることも事実だ。例えば、以前、漫画家の赤松健氏がeBook USERのインタビューに答える形で、「文章がメインの本の場合は、作家はテキストのデータしか持っておらず、版のデータを持っているのは出版社や製版所なのですが、作家側が『この版の全データが欲しい』と言ってきても、出版社や製版所に渡す義務はありません」と話している。法務的には問題がなくても、こうした問題をクリアしなければ、電子化に伴う作業量を減らすことはできない。絶版堂では「書籍スキャニングによる販売から、著者より頂いた原稿をスマートフォンやKindle向けサイズに再レイアウトし販売」としていることから、まだこの辺りでスマートな仕組みが構築できていない可能性がある。

 また、絶版堂における電子書籍の販売価格は300円からを推奨しており、そこから最大70%が著者の利益となるという。この場合、1部売れると著者には210円が入ってくることになる。4万字程度の作品であれば、15万円でPDFを制作するとしているため、単純計算で700部以上売れないと制作費の回収すらままならないことになる。ここからいえるのは、価格戦略と需要のバランスが取れていなければ、絶版本のリバイバル出版は難しいビジネスであるということである。

 絶版本を電子化するという絶版堂の取り組みには記者も大いに賛同するところがある。しかし、なぜ過去の絶版堂がうまくいかなかったのかを考察しなければ、成功にはつながらないだろう。再始動した絶版堂の手腕に期待したい。

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