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» 2011年01月20日 19時19分 UPDATE

凸版印刷とインテルが共同で電子書籍ストア「BookLive!」の立ち上げへ

凸版印刷とインテルは共同で、クラウド型の電子書籍ストア「BookLive!」を2月に立ち上げる。リアル書店とのハイブリッドを狙う大日本印刷と、電子書籍ストアの横連携を図る凸版印刷。電子書籍市場における両者の取り組みは果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。

[西尾泰三,ITmedia]

新たな電子書籍ストア「BookLive!」は2月上旬オープン

tnfigbl5.jpg 凸版印刷常務取締役の大湊満氏は、「2010年の電子書籍市場は盛り上がった。2011年はわれわれがその先兵となりたい」と発表に自信を見せた

 凸版印刷とインテル、および凸版印刷の子会社であるビットウェイは1月20日、電子書籍市場の早期拡大を目的に協力することで合意したことを明らかにした。

 この合意に基づき、ビットウェイは凸版印刷およびインテルの投資部門であるインテル キャピタルから第三者割当増資を通じた投資を受ける。この調達資金を基にビットウェイは100%子会社の「BookLive」を1月下旬に設立、クラウド型電子書籍ストア「BookLive!」の運営を2月上旬から開始する。BookLiveの代表取締役社長にはビットウェイ常務取締役の淡野正氏が就任予定だ。

 凸版印刷の出版印刷部門では、さまざまな入稿形態に対応したデジタル化およびマルチデバイスへの出力を特徴とする大規模コンテンツ制作ライン「コンテンツファクトリー」を構築しており、電子書籍データと印刷データの同時出力を可能にすることで、即時性を強化。さらに、CRMシステムなどと連携させた新たなコンテンツ開発や編集ワークフロー支援などの電子出版ソリューションを提供することを目的に、「デジタルコンテンツソリューションセンター」を設立しており、紙にない高付加価値を提供しようとしている。これらはいずれも電子書籍事業を想定した動きといえ、そのさらなる強化策となるのが今回の発表であるといえる。ビットウェイとBookLiveは、凸版印刷の流通事業と電子書店事業を担うと考えれば分かりやすい。従来はビットウェイが2つの事業を手掛けていたが、これが切り分けられた格好だ。

 BookLiveが2月上旬に立ち上げる電子書籍ストア「BookLive!」は、サービスイン当初はPCおよびAndroid端末をターゲットとしており、発表会では、Android端末向けのアプリやPC Webのサイトが披露された。なお、iPhone/iPad向けにも少し遅れてアプリを提供予定としており、会場ではiPhone/iPadにインストールされたBookLive!アプリを確認できた。

 サービスイン時のラインアップは、コミック・小説・実用書を中心に約3万点としており、雑誌や写真集などのジャンルを拡充しながら2011年春までに10万点に拡大する意向。この数字は、NTTドコモが大日本印刷と進める電子書籍ストア「2Dfacto」で掲げているものと同じである。また、定期購読サービスも提供する考えだ。

複数の電子書籍ストアを束ねる「共有書庫」構想

tnfigbl3.jpg 会場に展示されていた端末には、電子書籍ストアアプリ「BookLive!」がインストールされていた。これは本棚の画面

 すでに国内では昨年から電子書籍ストアが相次いで立ち上がっており、TSUTAYA GALAPAGOSやReader Store、LISMO Book Store、2Dfactoなどが乱立している。BookLive!は後発組の位置づけだが、それ故に従来の電子書籍ストアが抱える問題を解決しようとしている。それが「共有書庫」の構想である。

 電子書籍では、1つの本棚にまとめるというのが案外困難であることはよく知られている。これは、それぞれの電子書籍ストアが独立して展開されているために起こるものだが、今回の取り組みでは、クラウド型のプラットフォームを用意し、各電子書籍ストアのユーザー情報や購入情報を共通化することで、電子書籍においても一元的な共有書庫を実現しようとしている。分かりやすく言えば、どの電子書籍ストアで購入した電子書籍であっても、BookLive!が提供する「My書庫」にすべて並ぶということになる。この書庫には1つのユーザーIDで3台までアクセスできるようにしたいという考えも示され、タブレット、PC、スマートフォンがそうしたターゲットデバイスであるという。


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 ここで問題となるのは、どれだけの電子書籍ストアがこの枠組みに乗ってくるかだ。凸版印刷はすでにソニー、KDDI、朝日新聞社とともに電子書籍配信事業を手掛ける事業会社として「ブックリスタ」を設立している。ブックリスタはソニーのReader StoreやKDDIのLISMO Book Storeに電子書籍コンテンツを提供していることから、BookLive!は言うに及ばず、これらの電子書籍ストアがこの仕組みに賛同する可能性が高いが、そのほかに紀伊國屋書店やシャープと協議中であることが明かされた。この仕組みに大日本印刷が進めるハイブリッド型総合書店「honto」や、hontoをベースとする電子書籍ストア「2Dfacto」が加わるかは不明だが、各電子書籍ストアのバックエンドを完全に統合するという話ではなく、情報をひも付ける形で実現するとしており、今後、こうした大同団結の仕組みに加わる電子書籍ストアも出てくるだろう。

 共有書庫の構想は野心的だが、それを除けば電子書籍ストアとしてのBookLive!は、基本的にはブックリスタがコンテンツを供給している電子書籍ストアと同じような品ぞろえになると考えられる。ただし、今回の取り組みでは、日経BPと協業し、新しい電子雑誌の開発を行う予定であるとしており、そうしたコンテンツがBookLive!オリジナルのコンテンツとして提供されるようだ。デモでは360度ビューや動画を埋め込み、コマースとも連携するような電子雑誌が披露された。

tnfigbl2.jpg 複数のビューワを束ねた形のアプリを提供するのは2Dfactoと同様

 もう1つ問題となるのは、それぞれの電子書籍コンテンツがさまざまなファイルフォーマットで提供されているという点だが、こちらは解決の道筋がある程度明らかになっている。つまり、それぞれのファイルフォーマットに対応するビューワをまとめて1つのアプリに内包してしまうことである。この仕組みは、すでに2Dfactoでは提供されており、XMDFビューワやT-Timeビューワ、セルシスのBS ReaderやDNPのImageViewerを1つにまとめたストア/ビューワ一体型アプリが提供されている。

 BookLive!もこの仕組みでファイルフォーマットの差異をユーザーが気にしなくてよいようにしたい考えだ。特筆すべきは、ビューワにEPUBビューワが含まれている点と、必要に応じてビューワエンジンを追加できる点、そして、それぞれのビューワのUIを統一することで、一貫性のあるユーザー体験を提供しようとしている点にある。また、プレゼンの資料には新フォーマットに対するビューワエンジンとあるが、これは上述した日経BPとの協業で生まれるコンテンツに適用されるとみられる。

インテルはどう動くのか?

tnfigbl1.jpg 今回の取り組みにおける各社の役割

 多くの人が気になるポイントは、インテルの役割だろう。今回、第三者割当増資による投資の詳細は公表されていないが、インテルからは発行済み株式の7〜8%に相当する額との説明があった。これだけの投資からインテルが得られるものは何だろうか。

 インテルは、電子書籍プラットフォーム環境の構築や、電子書籍ビューワの開発などについて技術協力を行なう予定であるという。多少強引にまとめれば、バックエンドのシステムからビューワまで、インテルが協力するということだ。

宗像義恵氏 インテル取締役副社長の宗像義恵氏は、バックエンドからビューワまで協力していくと明言した

 また、タブレット市場におけるインテルの存在感を強調しておきたいという思いもあるだろう。iPadを筆頭に2010年はタブレット市場が爆発的に盛り上がったが、この市場は今後数年のITトレンドをけん引するとみられる。しかし、インテルはタブレット市場で明らかに苦戦しており、同市場でインテルのAtomプロセッサは、競合のARMプロセッサに大きく水をあけられている。1月上旬に米国ラスベガスで開催された米国最大の家電ショー「2011 International CES」で、ARMベースのAndroid搭載タブレットが数多く登場したことは、これを象徴している。

 今回の取り組みでは、外資系ではASUS、Dell、HTC、LG Electronics、Samsung Electronicsが、内資系では東芝、NEC、オンキヨーが賛同のコメントを寄せている。これらの企業の中には上述のCESでAtomプロセッサを搭載したタブレット端末を披露していたところもあり、こうした端末が登場してくる可能性が高い。また、これらの企業との協業により、電子書籍専門端末の開発も検討するとしており、電子ペーパーを採用した電子書籍端末なども期待されるだろう。インテルがAndroid対抗で用意している「MeeGo」がどのように絡んでくるのかも注目される。

 2015年には売上で約600億円を見込んでいると淡野氏は話す。先日の2Dfactoの発表会では、NTTドコモの辻村清行代表取締役副社長が「2兆円といわれる出版業界のうち、電子化されるのは1割から2割程度と考えている。hontoでは、そのうちの2割、つまり市場規模としては400億円から500億円程度を担いたい」と述べている。リアル書店とのハイブリッドを狙う大日本印刷と、電子書籍ストアの横連携を図る凸版印刷。電子書籍市場における両者の取り組みは果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。

tnfigbl4.gif 左から凸版印刷常務取締役の大湊満氏、ビットウェイ代表取締役社長の小林泰氏、ビットウェイ常務取締役の淡野正氏、インテル取締役副社長の宗像義恵氏、インテル キャピタル ジャパンの出川章理マネージングディレクター

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