PRS-T3SはPRS-T2と同様に、Wi-Fi設定をした後にReader Storeへ接続すると、製品登録と機器認証ができる。Wi-Fi設定はT2のときからWPSワンプッシュボタン方式による登録に対応しているので、SSIDやパスワードの入力が不要なのは嬉しい。なお、機器認証を解除する際は、Reader Store[マイページ]で、[利用機器の認証/解除]の[変更]からログインして[認証解除]という操作を、その端末自身から行う必要がある。売却や譲渡などをする際には注意したい。
PRS-T3Sのホーム画面は、基本的にPRS-T2とほとんど変わらない。1点だけ異なるのは、上部の「続きから読む」に表示される冊数が、PRS-T2では1冊のみだったが、PRS-T3Sでは1冊または4冊に任意で切り替えられることだ。小さな変化だが、複数の本を同時並行で読み進めることが多い人には嬉しい機能だろう。
以下の写真は、左がPRS-T3S、右がPRS-T2だ。
[アプリケーション]のメニューからは、[定期購読]が消えている。従来も、存在はしていても機能はしていなかったが、ついに廃止となったようだ。また、[設定]メニューのアイコンも、一部絵柄が変更されている。
9月24日にReader Storeは全面刷新されたが、それはPRS-T2にも適用されており、確認した範囲では違いは見られなかった。「電子書店完全ガイド2013:ソニー「Reader Store」を徹底解剖する」でも触れたが、ウェブストアにあるユーザータグや新刊通知機能、コミュニケーション機能(読みたい・読んだ・タイムライン・ユーザーを探す・みんなの履歴など)は、Reader端末からは利用できない。また、レビューを見ることはできるが、書き込みはできない。せっかくの新機能なので、PCなどから利用するといいだろう。
PRS-T3Sの読書画面も、基本的にPRS-T2とほとんど変わらない。常時表示されていたページ数表示がEPUBのコミックでは消えて(ドットブック形式には残っている)その分余白が少なくなっている点と、逆にピンチアウトで拡大操作をしたときにはPRS-T2の方がより拡大できる点が異なる。
解像度が600×800ドットから758×1024ドットに向上したことによる恩恵は、文字モノではさほど感じられないが、コミックのルビのような画像上の細かい文字が判別しやすくなっている点に現れている。
また、白黒反転して画面をリフレッシュする間隔は、他社の端末が6ページに1回なのに対し、PRS-T2時点で15ページに1回と大きなアドバンテージを誇っていたが、PRS-T3Sではほとんど発生しない。最大4時間ということになっているが、かなり特殊なロジックで処理を行っているのか、画面全体が白黒反転するような場面はほとんど目にすることがない。驚くことに、これはコミックなど画像を主体にしたページでも同じだ。詳しくは以下の動画で確認してみて欲しい。
この動画では、PRS-T3Sの方が速く本が開けているが、何度も試しているとケースバイケースであり、実際にはそれほど差はない。また、ボタンを押しっぱなしにしたときのページ早送りがPRS-T2より若干遅いが、これは許容範囲だろう。
少し気になるのは、コミックを読んでいるときに前ページの残像が若干残る場合がある点。濃淡がはっきりしている部分では全く発生しないが、薄いスクリーントーンが貼ってあるような所で時々、下図のような残像が見られた。なお、書籍(文字モノ)ではこうした現象は起きない。
このほか、3分の充電で約400ページが読める急速充電にも対応しているようだが、家庭用コンセント小型ACアダプターは別売(ソニーストアで3675円)のため、今回のレビューでは試すことができなかった。
PRS-T2からPRS-T3Sへの進化は、筐体がひと回り小さくなったこと、解像度が向上したこと、画面リフレッシュがほとんどなくなったことの3点だ。特に、画面リフレッシュを極力少なくする技術には驚嘆させられる。他社の端末と比べたときに、内蔵型LEDライトをあえて搭載しない点や、ハードウェアキーを残しているのは設計思想の違いだろう。紙の本を読むことに慣れていると、別途照明が必要なことに対する違和感はない。ただ、内蔵型LEDライト付きの端末に慣れてしまうと、薄暗い部屋では読みづらさを感じてしまうのも事実だ。
ストアの全面刷新、iOSアプリ、そしてこの新型端末PRS-T3Sが、ほぼ同時期にリリースされたことには「ソニーの本気」を感じる。Kindleストアをはじめとする他ストアの後塵を拝していることに、忸怩たる思いがあるのだろう。昨年PRS-T2のレビューをした時点では、Xperia専用アプリの提供は始まっていたが、Android端末にはまだ未対応だったことを思うと、サービスの質も格段に向上している。
次の一手としては、紀伊國屋書店ウェブストア以外との提携を拡大して欲しいと筆者は考える。本棚が1つになっているのが理想だが、他ストアのアプリが利用できるだけでも構わない。自社の電子ペーパー端末を持っていないBOOK☆WALKERやeBookJapanなどの他ストアが、ソニーの端末からなら利用できるという未来を見てみたい。そういう形でマルチユースできる端末の方が、魅力的ではないだろうか。
フリーライター。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチ電子ナビ、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。ブログ「見て歩く者」で、小説・漫画・アニメ・ゲームなどの創作物、ボカロ・東方、政治・経済・国際などの時事問題、電子出版・SNSなどのIT関連、天文・地球物理などの分野について執筆。電子書籍『これもうきっとGoogle+ガイドブック』を自己出版で1〜3巻まで配信中。
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