法学者・実務家6名の連名で「出版者の権利のあり方に関する提言」: 出版者の権利議論に終止符か
中山信弘東大名誉教授ら法学者・実務家6名の連名で「出版者の権利のあり方に関する提言」が公表された。これまでの著作隣接権や電子出版権の主張をくみつつ、落としどころになりそうな提言だ。
著作隣接権、電子出版権――紆余曲折を経ながら長らく議論されてきた出版物の権利について、いよいよ決着の時がやってきそうだ。
4月4日、中山信弘東大名誉教授ら法学者・実務家6名の連名で、出版物の権利について新たな提言が公表された。「出版者の権利のあり方に関する提言」としてまとめられたものは同日、明治大学のWebサイト上でクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス(CC-BY-ND)で公開された。同日に開催されたいわゆる中川勉強会(衆議院議員の中川正春氏が座長を務める『印刷文化・電子文化の基盤整備 勉強会』)でも中山氏らが招かれる形でこの提言が伝えられた。
同提言は、中山氏が研究代表者となっている明治大学知的財産法政策研究所コンテンツと著作権法研究(コ著研)プロジェクトの一環として議論・提言されたもの。同プロジェクトでは中川氏のほか、元知的財産高等裁判所判事の三村量一弁護士(長島・大野・常松法律事務所)や、上野達弘氏(早稲田大学法学部教授)、金子敏哉氏(明治大学法学部専任講師)、桶田大介弁護士(北浜法律事務所・外国法共同事業)、そしてeBook USERでも過去数度にわたってこの問題の動きを解説いただいている福井健策弁護士(骨董通り法律事務所、日本大学芸術学部客員教授)といった著名でこの問題への理解が深い法学者・実務家が議論を重ね、今回の提言に至った。
提言は、これまでに議論となってきた著作隣接権などの隣接権、そして先日経団連から出された電子出版権などを踏まえてのもので、それぞれの主張の意図をくみながらも、想定される問題への解を示したものとなっている。
具体的には、隣接権で想定している「出版にともない当然に発生する著作権とは別建ての権利」ではないこと。また、経団連の提案する電子出版権のように、出版権とは別建ての権利にすることなく、著作者との契約によって設定される出版権の拡張で対応するよう提言してあり、権利の複雑化・分散化につながらないよう配慮されている。この「現行出版権の拡張・再構成」を文化審議会で検討するよう提言したのが今回の発表となる。
現行の出版権が原則として電子出版にも及ぶよう改正を求めるこの提言は、著作者との契約に基づくもので、例えば、「印刷のみ」「電子出版のみ」という出版権の設定も特約で対応できるとしているほか、現行出版権の再許諾不可を特約がない限り再許諾可にするよう改正を求めている部分もある。そのほか、現行グレーゾーンといえる版面の企業内複製などに対応する複写利用への提言、さらに、これらをスムーズに行えるよう権利情報の登録制度を整備することを提言している。
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