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» 2015年07月17日 12時00分 UPDATE

司書メイドの同人誌レビューノート:オタク少女の憧れだったピンクハウスって? 『知らなかった!OTAKUとPINKHOUSEの謎』

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

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 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。

知らなかった!OTAKUとPINKHOUSEの謎 知らなかった!OTAKUとPINKHOUSEの謎

紹介する同人誌

タイトル:『知らなかった!OTAKUとPINKHOUSEの謎』

著者:伊集院みどり

サークル名:桃館

形態:新書判 48ページ 表紙カラー・本文モノクロ

Webサイト:ももプレス

Twitter:@momocan1991

同人誌入手先:ももプレスにて通販受付中

次回参加イベント:コミックマーケット88「日曜日 西地区 "は" 01a」


 PINK HOUSE(ピンクハウス)という、とてもかわいらしいお洋服のブランドがあります。花柄のコットンのワンピースや、フリルのたっぷりついたブラウスなど、華やかでありながら繊細な印象のあるお洋服たち……。そんなブランドが、同人誌即売会に参加するとてもたくさんの人に愛用されていた時代があることをご存知でしょうか?

 知っている人にはあまりにも「あるある」な、でも今となっては「そんなことあったの?」という現象を、自らもピンクハウスを愛してやまない作者さんが、率直に、思いを込めてつづられたエッセイがこちらの『知らなかった!OTAKUとPINKHOUSEの謎』です。

ピンクハウスってなーに?

ピンクハウスはこんな感じのお洋服です(画像出典:PINK HOUSE公式サイト) ピンクハウスはこんな感じのお洋服です(画像出典:PINK HOUSE公式サイト)

 ひらひらふりふりのお洋服というと、「ロリータ服」というジャンルも思い浮かびますが、作者さんは、ピンクハウスとロリータ服の違いを「スカートの長さ」と、ずばっと一言で言い表しています。そうそう! ピンクハウスは基本的にくるぶしまであるような、長いスカートなんです。他にも、小さなレース編みのような加工のピコット(縁飾りとして編む玉状の飾りのこと)など、ピンクハウスに欠かせない要素を紹介されています。この本には挿絵や写真は一切ありません。でも、短く、それでいて的を射た解説は、どの項目も「長くこのお洋服の事を大切に考えてこられたのね……!」というお気持ちが伝わってくるようです。

 なお、こちらのサークルさんは『初心者のためのピンクハウス入門』というシリーズも出されており、最新刊は『初心者のためのピンクハウス入門其ノ47』ですって! 47巻……、それだけ長い間このお洋服のことを考えてこられたなんて……!

目次にはツボを突かれる章が並んでいます。そこが知りたかった! 目次にはツボを突かれる章が並んでいます。そこが知りたかった!

イベントの晴れ着です!?

 とある一時代、こんなかわいいワンピースやブラウスを着込んだ人たちが、同人誌即売会にはあふれていたのです。どこからはじまり、どう広がったのか? 作者さんはそれをアニメ「鎧伝サムライトルーパー」の人気と連動していると考えているみたいです。「鎧伝サムライトルーパー」と言えば、5人の少年が鎧を身にまとい(時に脱ぎ捨て)、妖邪と闘うアニメ作品で、当時、たくさんの女性ファンが彼らの一挙手一投足に黄色い悲鳴を上げたという……! その作品が同人誌即売会で大盛り上がりをするころに、時を同じくして会場でピンクハウスを着用した方々を多数目撃するようになったそうです。

 そうこうしているうちに、ピンクハウスのお洋服を題材にした同人誌を作るサークルさんも登場してきて、大にぎわいになったのが1991年ごろ。

 ミソノも当時の様子を知るべく、コミックマーケットのカタログをめくってみました。例えば1993年冬のコミケカタログの参加者マンガレポートには、「いろんなPINK HOUSEの人が見れました」とか「雨の日……ロングスカート……くすん」といったピンクハウスについての感想がたくさん!

 けれど、2014年冬のコミックマーケットカタログのマンガレポートのファッションの項目には、1つもピンクハウスについて触れているものはありません。なぜ? ピンクハウス自体は、先日ももいろクローバーさんとコラボレーションをしたりと、変わらず元気にお洋服を出されているにも関わらず……。一体、あのころピンクハウスを着ていた人は、今は何を着ているの?

盛り上がったその先に……

 その流れを、具体的な洋服のお店を例に出しながら考察されているのですが、読んでいると「あ、きっとお友達にこういう道をたどった方がいらしたのね」と感じるリアリティのある文章は、やはり長く活動されてきたサークルさんならではだと思います。

 作者さんは、全てをご自身の目線や体験を基に語っておられ、「個人によってとらえ方が違う事象も、できるだけ明確に書いた」と前書きでも触れてらっしゃいます。私はそれがとってもいい! と思ったのです。とってもたくさんの人に知られているブランドですから、もしかしたら「え!? 私は違うよ!」と、読者さんの気持ちを騒がせるかもしれません。でも、だからこそ「当時は○○だった」「私は△△だったよ」と記憶が掘り起こされるのではないでしょうか。とってもとっても素敵で、皆に愛されているからこそ、お洋服のことをこんなにも熱く語ってしまう。その魅力あふれるピンクハウスの世界を後世に伝える1冊だと思います。

同人誌を作る人たちの間で、なぜ愛されているのか……ご自身の体験を基に語られています 同人誌を作る人たちの間で、なぜ愛されているのか……ご自身の体験を基に語られています。

ミソノ流ワンポイント用語解説

晴れ着

 同人誌即売会に着て行く服のことをこう呼んでいたものですねー。大きな同人誌即売会、コミックマーケットの会場が「晴海」で開催されていたのにも、かけ言葉になっているのでしょうか。

rmfigmisono.jpg ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

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