さぁ、探しに行こう『新幹線から見える城 全国編』司書メイドの同人誌レビューノート

秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。

» 2015年06月12日 12時00分 公開
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 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。

新幹線から見える城 全国編 新幹線から見える城 全国編

紹介する同人誌

タイトル:『新幹線から見える城 全国編』

著者:坪内一洋

サークル名:FSIRO WEST

形態:A5 56ページ 表紙カラー・本文カラー

Webサイト:http://homepage3.nifty.com/fsirowest/

Twitter:@tabinoshi

同人誌入手先:COMIC ZIN(販売ページ

参加予定イベント:コミックマーケット88


 レールの上を揺られて進む旅の途中、ふと車窓を見ると、何となく気になる建物が。「あれ、お城なのかしら……」そんなふとした疑問が解ける時が来ました。ページをめくれば、城、城、城! 青森から鹿児島まで、著者の方が実際に新幹線に乗車し、車内から撮影した写真が次々と紹介されています。その数40点!

アイデアを形(同人誌)に!

 元々は「旅の先輩がホームページに披露(ひろう)されていた内容からアイデアを頂戴した」とのことですが、旅の最中にぱっとめくれるのは本の形ならではの良さかも。この俊敏さ、大切ですよー。全ページフルカラーで、それぞれのページにお城の写真と概略データ、車窓からの確認ポイントが掲載されています。新幹線に乗っている時、どの角度から見えるのかという地図もとっても嬉しいのですが、中には見るのにとっても難易度高そうなお城も。

新幹線から見えないかもしれない城

 例えばビルの合間に一瞬だけ見える浜松城。地面すれすれにある墨俣一夜城。地図上に示された視認可能な範囲は狭くて狭くて、とっても鋭利な一筋の光のようです……。さらに長野県の丸子城は「トンネルとトンネルの間にある橋の上から、数秒だけ見ることができる」「(城の色が)黒い色で、山の色とかぶってしまう」というシビアな条件が重なり、写真を見れば……山! お城の写真ではなく、完全に山の写真です。親切に「ココにお城がありますよ」と矢印マークで教えてくださっている先に、じーっと目を近づけてやっと発見しました。写真ですらこの状態なのに、車窓から発見できるの? ……いや、気になるお城のページをささっと開いて、本と首っ引きで車窓を眺めて、きっと発見してみせる! 眺めているだけで気持ちが高ぶります!

山形城:ぶれていたり、車内灯が写りこんでいるのがまさに新幹線から撮っているというのが伝わり、味わい深いですね
姫路城:お城に関することから、見える方向、見る際のポイントまで情報が盛りだくさん
熊本城:望遠で撮られたのでしょうか。遠くに見える熊本城もばっちり収められています

おまけも楽しい

 最後に「新幹線から見えるお城っぽいけど、お城じゃない建物」にもページを割く心憎い構成。そうそう、これを補完してくださるのはとっても嬉しいな。「天守風な理容店」や「立派すぎる民家」も見かけたらついつい気になってしまうじゃないですか……。

 こちらの同人誌の発行は2012年。もしかしたら今はお城の周囲の風景も少し変わって、もっと発見の難易度が高まっているかも!? 本を携えて旅に出たくなります。

ミソノ流ワンポイント用語解説

参加予定イベント

 「同人誌即売会に参加して同人誌を販売したい! そのための場所(スペース)がほしい!」と思って申し込んでも、必ず参加できるとは限らないのです。たくさんの人が申し込む即売会は、申込者多数で抽選になることも。もうすぐ大きな即売会「コミックマーケット」におけるサークル参加希望者の当落通知発送時期で、そわそわしてらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

ミソノ:いつでも優しい笑顔で、皆の心をいやしてくれる。普段は大きな図書館で司書をしており、司書ならではの本に関するお話は、日常では知る機会の少ない情報満載で、一聞の価値あり

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