文字を媒介に集う――タイポグラフィ専門の古書店「BOOK AND SONS」が望む未来

4月27日、学芸大学駅近くに、Webサイトのデザインなどを手掛ける「フルサイズイメージ」が運営する古書店が誕生した。

» 2015年05月29日 05時00分 公開
[宮澤諒eBook USER]

 東京の学芸大学駅からほど近く、平日の昼間でも閑静な住宅街の一角に、タイポグラフィをメインに扱う古書店「BOOK AND SONS」がある。

オープンは4月27日。親しみやすさを重視したのだというロゴがかわいらしい

 Webサイトのデザインなどを手掛ける「フルサイズイメージ」が運営するこの古書店では、代表取締役の川田修さんが集めたデザイン関係の書籍が並ぶ。もともと趣味でデザイン関係の本を収集しており、いつか古書店を開くことを夢見ていたという。

天井に届こうかという巨大な本棚に、川田さんが集めた良書が並ぶ
階段を上った先は貸しスタジオになっている
時が止まったかのような静寂を感じる店内
奈良の夫婦が作っているという14面体のスピーカー。カフェで見つけて惚れ込んだのだとか

 特注の本棚に並ぶのは、『アイデア』や『+DESIGNING』といった一般書店で見かける雑誌から、貴重な洋書までさまざま。中には市場から買い付けたものもあるというが、ほとんどが川田さんの自宅の本棚で丁寧に保管されていたこともあり、古書とはい奇麗な状態のものが多い。

タイポグラフィを中心にデザイン関係の書籍が並ぶ
こんな大きなものまで

 いまでこそデザイン関係の企業を経営する川田さんだが、大学時代にデザインを専門的に勉強した経験はない。

 「特に良いデザインをするため、文字とどう向き合うかを考えたとき、タイポグラフィの知識が必須になると感じたんです」。ここから、川田さんの書籍収集が始まった。

 「デザインは細部に宿るという言葉がありますが、文字詰めを変えるだけでデザインの印象が大きく変わることにタイポグラフィの奥深さを感じます」。普段目にする何気ない看板や、ブランドのロゴも目線を変えることで、また違った面白さが生まれるという。

 「できるだけじっくりと本を選んで欲しいので、立ち読みも大歓迎です。腰を据えて本を読みに来るくらいの気持ちでご来店いただければと思います」と川田さん。静かな店内は本を読みこむのに最適の空間だ。

 店内奥はギャラリースペースになっており、取材時にはタイポグラフィ関連のポスターが展示されていた。まだ改装途中らしい。

ソファに座ってゆっくり眺めることができそう

 今後は書籍だけでなく、タイポグラフィのグッズの販売やイベントを開催するなど、文字を媒介として人が集まる小さなコミュニティを作り上げていきたいとのこと。

 BOOK AND SONSという名前には、“本を語り継ぐ”という意味が込められている。人から人へ、BOOK AND SONSを旅立った本がきっかけとなり、人々が集う。そんな未来を予感させてくれる素敵な古書店だ。

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