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» 2015年04月03日 07時00分 UPDATE

本をきっかけにした交流を、東京・立川の読書バー「Norwegian Wood」が目指すもの

東京・立川にあるバー「Norwegian Wood」。店内には読書席や本棚を設け、お酒やコーヒーを飲みながら本の世界に没入できる。夏目漱石や太宰治ら文豪の作品を好んで読むというオーナーに、バー立ち上げの経緯などを伺った。

[宮澤諒,eBook USER]
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 東京・立川駅の南口。多くの人が行き交うにぎやかな駅前を東に抜け、立川通りから一歩脇道に入ったところに、読書ができるバー「Norwegian Wood(ノーウェジアン ウッド)」はある。陽が沈み始める午後6時、仕事帰りの人たちを迎えるように、今日も静かに明かりが灯る。

 Norwegian Woodがオープンしたのは2014年10月。内装から店のロゴまで、オーナーの大崎佳久さんと友人の3人で作り上げた。

 店名は村上春樹の著書『ノルウェイの森』ではなく、そのタイトルの元にもなったビートルズの楽曲から。中学生のころから漠然と自分の店を持ちたいという夢を持ち続け、店名はNorwegian Woodにしようと決めていたという。

rmfign2.jpg 木材を基調とした落ち着いた店内
rmfign4.jpg 世界各国のお酒が並ぶ
rmfign5.jpg 店内は読書のためにも少し明るめ

 コンセプトは女性をターゲットにした“お酒がしっかり飲める図書館”。女性が仕事帰りに、一人でゆっくり過ごすことができる、そんな店を目指しているという。

 「僕自身、バーに入るのにためらいを感じてしまう人間なので、そういったバーのイメージを覆したいんです」。店で提供する生ビールはキリンラガー。「ラガーの生を出してるバーは見たことないって言われます。確かに珍しいかもしれません」と大崎さん。ラガーの苦くておじさん臭いというイメージを払しょくし、女性にもラガーの美味しさを知ってもらいたいとのこだわりから提供しているのだという。

rmfign3.jpg 開店に向け準備をする大崎佳久さん

 バーを経営する大崎さんだが、これまでにバーテンダーやシェフなどの経験はない。企業からレンタルビデオ店を買い取って経営したり、ゲームセンターの店員をしたりとさまざまな職を渡り歩いてきた。

 「僕は接客業が好きなんです。お客さんと交流できれば仕事は何だっていい。それがいまはたまたまバーなだけです」。

 もちろん、まったくの素人で開業したわけではない。物件を探す傍ら、飲食店チェーンでバイトをしつつ、バーやカフェの専門学校にも通った。

 「バーというとお酒がメインで、食事には期待していない人が多いんです。でも、うちの店では食事も充実させています」。その言葉通り、料理はすべて手作りで、ピザは生地から、カレーはルーから、特製のレアチーズケーキもすべて1から作っている。

 「接客業はお客さんの反応を直に見ることができます。もちろん自分の料理がまずかったり、接客が悪ければ来てくれなくなるし、逆に『この前よかったからまた来たよ』と再度足を運んでくれるお客さんがいたりする。その時のうれしさは何物にも代えがたいです」。

本屋の帰りにふらっと立ち寄りたくなる、そんな場所にしたい

 Norwegian Woodの一番の特徴と言えるのが、読書スペースの存在だ。「本屋で買った本を手にふらっと寄ってもらって、お酒やコーヒーを飲みながらゆっくりと読書をしてもらいたい」。バーを始めるに当たり、何か1つコンセプトをと考え、子どものころから好きだった本を選んだ。

rmfign6.jpg 読書スペースはまだまだ認知度が少ないとのこと

 読書専用スペースは入り口横にある。席は3人分だが広さは十分、スタンドライトも設置されている。読書スペースやカウンターの下には、電子書籍を読む人のことを考えてコンセントも用意。店内ではWi-Fiも利用可能だ。

 店の奥には大崎さんの蔵書を並べた本棚がある。純文学が好きというだけあって、芥川龍之介、夏目漱石、太宰治といった文豪の本が並ぶ。

rmfign7.jpg 「将来的に、この本棚には僕の本じゃなくてお客さんが面白いと思った本が並べばいいと思っているんです。お客さんが読んだ本に対してレビューを書いたりして、そこからお客さん同士の交流が生まれてくれれば」と大崎さん
rmfign8.jpg あなたのお勧めの一冊を並べてみてはいかがだろうか

 「朗読会とか、本をお勧めするようなイベントをやってみたいとは思います。でも、そういう店側からのアプローチというよりは、お客さん同士で、僕がいなくても交流してくれるようになるのが一番ですね」。あくまで自分は脇役、訪れた人たちによって店を作り上げて欲しいという。そのために客のニーズにこたえる努力は惜しまない。「飲みたいけどうちに置いてないお酒があったら言ってくれれば置きますし、こういう料理が食べたいと提案してもらえれば作ります」。

 訪れてくれた人たちを楽しませたい、その一心で今日も大崎さんは店を開ける。

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