楽天、米OverDriveの買収発表――電子図書館事業にも参入

Koboは本を購入したい人のために、OverDriveは図書館や学校で本を借りたい人のために。この両輪で電子書籍事業を強化する。

» 2015年03月19日 17時00分 公開
[西尾泰三eBook USER]
楽天常務執行役員、Kobo CEOの相木孝仁氏 楽天常務執行役員、Kobo CEOの相木孝仁氏

 楽天は3月19日、電子図書館プラットフォームの世界最大手、米OverDriveの買収を発表した。OverDriveの発行済み全株式を約4.1億米ドル(約500億円)で取得し、完全子会社化する(買収完了は2015年4月の予定)。ちなみにKoboを買収したときは約236億円だった。

 「10億米ドル規模の電子書籍ビジネスの創出を目指す」――楽天が同日開催した説明会で、同社常務執行役員、Kobo CEOの相木孝仁氏はこのように話し、イーコマース、ファイナンスに続く柱としてデジタルコンテンツ事業をさらに成長させていく考えを示し、OverDriveの買収はその実現に向けたものだと説明した。

OverDriveのスティーブ・ポタシュ社長兼CEO

 1986年創業のOverDriveが提供する電子図書館サービスは、約5000の出版社から提供された250万以上のタイトルをラインアップ。米国では1万8000館、45カ国58言語で3万館以上の公共図書館、学校図書館が導入しており、利用ユーザーは2014年10月末時点で約2100万だという。

 相木氏は、OverDriveの買収で、楽天の電子書籍事業がフェーズ2に入ったと話す。フェーズ1は、Koboの買収により、端末とアプリを通じて電子書籍販売ビジネスに参入すること、そしてフェーズ2は、図書館や教育機関への電子書籍貸し出しビジネスへの参入だ。

 従来は、本の入所場所は大きく分けて書店と図書館だったが、電子書籍によりそのモデルが変わりつつあると相木氏。ストアなどで販売される電子書籍の普及に少し遅れる形で公共図書館での電子書籍貸し出しも普及が進むとみている。つまり、伸びしろがあるということだ。

 「楽天Koboの事業とOverDriveのそれは両輪」と相木氏。楽天Koboが提供していないオーディオブックをOverDriveでは提供していたり、展開地域での補完、つまり、楽天Koboがサービスを展開している欧州やアジア圏でOverDriveの展開を加速したり、あるいはOverDriveが強力な存在感を放っている米国での楽天Koboのブランド強化なども期待されるなど、補完関係にある部分が多い。

 こうしたシナジーも出しながら、今後鍵になると考える教育分野への進出も進めながら、短期的ではないが、10億ドルのビジネスに成長させたいという考えを示した。なお、OverDriveは2014年度の償却前の連結営業利益(EBITDA)が2500万ドルで、これを加えた2015年の楽天グループの電子書籍事業はEBITDAベースで黒字に近づく見込みだという。

相木氏とポタシュ氏 相木氏とポタシュ氏

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