インタビュー
» 2015年02月20日 07時00分 UPDATE

漫画家・花小路ゆみ インタビュー:電子化が作品にチャンスを与える――出版されなかった『女神たちの二重奏』が単行本になるまで

実業之日本社の『漫画サンデー』で連載されたものの、単行本化されなかった作品『女神たちの二重奏』。同作はその後、漫画配信サービス「まんが王国」で爆発的な人気を得て、単行本の出版に至った。「女神たちの二重奏」とは一体どういう作品なのだろうか。作者の花小路ゆみさんに聞いた。

[宮澤諒,eBook USER]
『女神たちの二重奏』単行本第1巻 『女神たちの二重奏』単行本第1巻

 紙の雑誌で連載されていた作品が電子コミックになる、またはWebコミックサイトで連載されていた作品が単行本として出版されるといったことは今日当たり前になってきた。

 しかし、漫画誌で連載されたのちに電子コミック化した作品がその後人気となり、単行本として出版される道筋をたどった例はまだ少ない。

 ここで紹介する『女神たちの二重奏』という漫画は、2010〜2012年に掛けて『漫画サンデー』(実業之日本社)で連載された作品。連載時にも一定の人気はあったものの、単行本化されることはなかった。

 しかしその後、漫画配信サービス「まんが王国」が同作の魅力に目を付け電子版の配信を開始。2014年にはまんが王国で約10万部(単行本換算)に上る好調な売れ行きを見せ、同社の2014年下半期売り上げランキングで1位に、2015年1月26日には単行本の出版に至った。

 面白い動きを見せる「女神たちの二重奏」とは一体どういう作品なのだろうか。作者の花小路ゆみさんにお話を伺った。

電子化されたことで、性別関係なく読まれるように

作者の花小路ゆみさん 作者の花小路ゆみさん

―― 単行本発売おめでとうございます。

花小路 どうもありがとうございます。

―― 先生はもともとレディースコミック(以下、レディコミ)を描かれていましたが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

花小路 友達の代理で、レディコミ作家の北川玲子先生のアシスタントを始めたことがきっかけです。北川先生が編集部の人に紹介してくださって、その後レディコミ作家としてデビューすることになりました。

―― デビュー後は、花小路小町というクリエイター集団として漫画を描かれていたんですよね。

花小路 そうですね。3人組(のちに4人組に)で描いていて、私は作画を担当していました。花小路小町という名前は、その3人の初連載となった『烈風KOMACHI』(講談社の『BE・LOVE』)の主人公の名前から採りました。花小路小町としての初連載は『かかとの高いハイヒール』(笠倉出版社の『ミステリーLa・Comic』)という読み切り作品です。

―― 2000年ごろから青年誌での掲載も始められていますが、レディコミとの違いや、描く上で苦労したことはありますか?

花小路 もともと私の絵柄が青年誌っぽいところはあったのですが、それでも青年誌はレディコミと違って描きこみが多くて……、その部分では苦労しましたね。

―― 花小路小町時代は、アンハッピーエンドものをよく描かれていましたよね。

花小路 当時は、レディコミのハッピーエンド物が全盛だったんです。自分の絵柄がレディコミの中では浮いてたこともあり、ハッピーエンドには向いていないんじゃないかということで、あえて不幸な話ばかり描くようになっていきました。

 そしたらそれがウケ始めて、アンハッピーエンド物の依頼ばかり来るようになったんです。そのときは作画担当だったので、脚本に合わせて絵を描いていましたけど、本来はハッピーエンドが好きです。

 「女神たちの二重奏」は、花小路ゆみとして初めて原作から自分で作り上げた作品なんですけど、結末はハッピーエンドに仕上がっています。

―― 原作からひとりで作り上げるのはどう感じましたか?

花小路 最初に展開を考えていなかったということもあるんですけど、将棋みたいに常に先のことを考えなくてはいけないのが大変でした。連載中は脳をシャープにするために1度もお酒を飲まなかったんですけど、それが一番つらかったかもしれません(笑)。

―― 1つの作品で、連載、電子化、単行本化を経験されたわけですが、先生にとって紙と電子の違いはどのように感じますか?

花小路 漫画サンデーで連載していたときは男性誌だったこともあって、なかなか女性に見てもらう機会がなかったんです。ですけど、電子書籍になったことで女性にも読まれるようになったみたいで、その点では電子書籍で配信するのもいいなとは思いますね。私自身は特に紙と電子どちらが好きというようなことはないです。

―― 単行本化するに当たり、電子書籍から手を加えた部分はありますか?

花小路 中身は特にないですけど、表紙のカバーイラストを女性でも気軽に手に取れるようなデザインに変更しています。1巻と2巻ではイラストはそのままですが、3巻からは描き下ろしになっています。家の本棚に並べても恥ずかしくないできになっているんじゃないでしょうか。

自分が見たくないものは描かない、作画へのこだわり

rmfigm3.jpg 貧乏生活に絶望を感じる茜(画像右)と、裕福な暮らしを送る麗花(画像左)。顔がそっくりな2人が入れ替わる場面から物語は始まる

―― 『女神たちの二重奏』という作品は、2人の人物の人生を入れ替えることがテーマになっていますが、この案はどのように思い付いたんですか?

花小路 この作品の企画を考えてるときに、ちょうどほかの連載の企画が流れてしまったんです。それで、その時の担当さんにオリジナルで考えてみないかといわれて、考え抜いた末にでてきたのがこの入れ替わりというテーマでした。

 別人がいきなり入れ替わったら面白いんじゃないかな、というのが最初にあったんです。どうせ入れ替わりをするんだったら童話の『王子と乞食』ぐらい極端にしてみようと思って……。まさか、2年以上も週刊連載するとは思わなかったです(笑)。

 毎回20ページの中で、ここでこういうことが起こったらキャラクターたちは困るだろうなっていうことを描いていましたね。解決策は用意していなくて、自分も主人公たちと同じように悩みながら描いていました。

rmfigm4.jpg 「きれいに描きたい」という花小路さんの言葉の通りあまり過剰な描写はなく、むしろ女性の顔に魅力を覚えるほど。だからこそ、ストーリーに魅かれる読者が続出するのだろう

―― レディコミでは、いわゆる濡れ場が重要なシーンになってくると思いますが、青年誌ではその部分の描き分けなどはしましたか?

花小路 いまもそうですけど、特に意識はしてないですね。ただ、自分が嫌だと思うものは描きたくないので、なるべくきれいに描くことは意識しています。

―― 先生の絵に対するこだわりを教えてください。

花小路 とにかく絵を見やすく、分かりやすく描くことです。絵が見づらいと、こちらが伝えたいことも分かってもらえなかったりするので。ベッドシーンもきれいに、女性でも嫌悪感を抱かないように、自分が読んで嫌じゃないものを描いています。

―― 最後に、読者の方に一言お願いします。


花小路 「女神たちの二重奏」は、“幸せになりたい”ということをテーマにしています。これは私の人生観でもあるんですけど、幸せになるための一番の近道は人と比較しないことだと思うんです。自分が本当にうれしいことは自分にしか分からないし、自分でさえ分からないこともある。他人を見て判断すると、それを見誤ってしまうんです。

 読者の人たちには、その思いに共感してもらえたらうれしいです。

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