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» 2015年01月19日 10時30分 UPDATE

2015年の電子図書館トレンド

電子書籍に関連し、世界中の図書館は今、“デジタルルネサンス”とでも呼ぶべき状況にある。米国、英国、カナダの図書館が直面する大きなトレンドを紹介。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 大手出版社が電子書籍の提供をしっかりとコミットするようになるにつれ、世界中の図書館は今、“デジタルルネサンス”とでも呼ぶべき状況にある。ここでは米国、英国、カナダの図書館が直面している大きなトレンドを取り上げたい。

 Library Journalがまとめた最近のレポート(PDF)によると、現在、米国で電子書籍を提供する図書館は全体の95%。2012年、2013年は89%の状態が続いていたので頭打ちになったかと思われていたが、再びの伸びを見せている。

 上述のレポートによると、図書館が提供する電子書籍のラインアップは平均して2万244作品。ただしこれは大規模な図書館の数値が全体を押し上げており、中規模な図書館の平均でみると1万434作品となる。

 米国やカナダでは2014年の電子書籍の貸し出しが100万件を超えた図書館が10館以上あり、うち2館は200万件に達している。この数字は3M Cloud LibraryやBaker & Taylorなどの伸びにより今後も上昇が見込まれ、2015年には2倍近くになるとみられる。

 米国では電子書籍はうまくやっているが、英国では、政府や図書館、大手出版社によって持続可能なモデルが模索されている部分がある。2013年に英国政府は公共図書館の電子書籍貸出に関するレポーティングを行っており、いわゆるジークハルト・レビューでは、出版社は紙の本と同様にきちんとしたルールを設けることを前提に、電子書籍の貸し出しも紙と同じように推進していくべきであることを提言した。

 その後2014年3月から英国内の4図書館で行われた電子書籍貸し出し実験は、フロントリスト(新刊や売れ筋)も含むラインアップの中から最長21日無料で借りられるというものだった。この実験のポイントは、公共図書館における電子書籍の貸し出しが著者、出版社、図書館サービスのいずれにとっても適切で持続可能なモデルなのかどうかを実証することにあった。

 この実験の開始から半年以上が経過したが、幾つかの興味深い発見もあった。実験に参加した4図書館のいずれも電子書籍の貸し出しが顕著に伸び、貸出期間の延長により一回当りの貸し出し冊数も増えたという。また、電子書籍の貸し出しが紙の本の貸し出し、および来館者を減少させることはなく、“Buy it Now”ボタン(編注:貸し出し中などに備えた購買導線)経由で購入するユーザーはほとんどいなかったという。

オーディオブックは次の波が

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 2007年当時は3000弱だったオーディオブックのタイトルは指数的に伸びており、2011年には1万2000以上に、2013年には2万以上、そして2014年には3万5000ものオーディオブックが大手出版社、あるいはAudibleなどから生み出されてきた。

 世界のオーディオブック市場は現在、26億ドル規模に成長しており、最近のNew York Timesの記事では、“2014年の最初の8カ月間でオーディオブックは前年比プラス28%の売り上げ成長を果たし、同じ期間で6%だった電子書籍を上回った”とAAP(米国出版社協会)の発表を交えて伝えている。

 図書館でのオーディオブックの提供も進むとみられる。海外では、図書館向けにオーディオブックを提供する大手事業者として、3M Cloud Library、Baker & Taylor、Hoopla、Overdriveなどがいる。ほとんどのケースで図書館向けの電子書籍を貸し出しソリューションを提供する事業者がオーディオブックも提供している。

 こうした事業者の中にはラインアップを外部に依存しているところも多い。例えば3M Cloud LibraryやBaker & Taylorは米Findaway Worldに依存している。ニューヨークに拠点を持つ同社はオーディオブックの制作プロダクションとしてよく知られ、自前のスタジオなども所有している。また、Overdriveは独自に出版社にアプローチしており、AudibleやFindaway Worldとは距離を取っている。

 3M Cloud Libraryのマーケティングマネジャーのトム・マーサー氏は、「私たちは2015年のオーディオの世界で非常に大きな機会があるとみています」。Right now we’re two weeks into the “real world” of Audio, しかし、顧客は私たちのソリューションを気に入って頂けているようで、βテストのフィードバックもポジティブなものが多かったです。

 Hooplaはオーディオブックをはじめとするストリーミングサービスを図書館向けに提供しているニューカマーだが、その知名度は高まりつつある。そのラインアップは1万3000タイトルほどで、毎月1000タイトルほどの拡充を図っている。Hooplaはシステムのセットアップを無料で提供しており、これが平均的な図書館には魅力的に映っているようだ。

 ではHooplaはどうマネタイズしているのだろう。彼らはペイパーユース型のモデルを採用しており、特定のタイトルが貸し出されたときにのみ料金を図書館に請求する方式を採っている。サンフランシスコ公共図書館は、図書館のコストを押さえ、利用者により多くのラインアップを示すことができるHooplaと同様のモデルを採用する事業者が2015年に増えるとみている。

 出版社はオーディオブックの領域でどううまく振る舞えるだろう? ペンギン・ランダムハウスでオーディオブック関連のコンテンツを扱う部署のマーケティングディレクターを努めるシェリル・ハーマン氏は、「わたしたちの図書館向けデジタルオーディオの売り上げは2014年に35%ほどの伸びを見せました。わたしたちははオーディオブックの数をもっと増やしたいと考えていますが、これは孤独な戦いではありません。この領域に新規参入する多くのプレーヤーがいますし、より多くのオーディオブックがこれまで以上にリリースされると考えています」と話す。

 2015年は図書館におけるオーディオブックの存在感は高まるだろう。テープやCDといった媒体はもはや経済的な観点で考えても道を譲らざるを得ないからだ。OverdriveもHTML5ベースのストリーミングソリューションを開発中で、館内端末(Overdrive Media Station)からでなくともオーディオブックを聴けるようにしようとしている。HTML5ベースということで、さまざまなOSを搭載するデバイスからも利用できるようになるだろうからこれは非常に有益だといえる。

電子新聞/雑誌も伸長

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 何千もの図書館が、電子版の新聞や雑誌を利用し始めている。電子版であれば最新号だけでなく、過去のコンテンツも入手・保有できるからだ。

 電子新聞/雑誌が図書館にとって非常に便利な理由の1つは、複数の異なる分館にあるタブレットや電子書籍リーダーにコンテンツをインストールできることだ。例えば、サンフランシスコ公共図書館は本館に電子ニュースセンターを新設し、チャイナタウンとノースビーチの分館からもアクセスできるようにした。実際のコンテンツはカナダのバンクーバーに拠点を置くPressReaderが提供している。同社は図書館業界向けのこのサービスで急成長中だ。

 PressReaderは図書館への新聞・雑誌配布企業の最大手といって間違いないが、この市場には新たな競合も参入しつつある。EBSCO Information Servicesは2014年10月、「Flipster」を発表した。このサービスでは、図書館利用者は人気雑誌の最新号を高品質なデジタル版としてiOS端末で閲覧できる。

 EBSCOで製品管理担当上級副社長を務めるマイケル・ラディン氏は、FlipsterはEBSCOの顧客がエンドユーザーにコンテンツを提供するための新しい方法だと語った。「Flipsterにより、図書館利用者は高品質なデジタル読書体験を、図書館内だけでなく図書館の外からも享受できる。同サービスは、人気雑誌のコンテンツ閲覧や図書館のサービス拡大のためのユニークなアプローチを提供する。Flipsterは、特に人気雑誌の最新号を閲覧したい利用者向けに設計されている。EBSCOのフルテキストデータベース(例えば、MasterFILE、MAS、Business Sourceなどの雑誌を含む)を包含しており、利用者はこのデータベースで興味のあるトピックスを検索できる」(ラディン氏)

 電子版新聞雑誌の提供をサードパーティーに依存せず、自ら電子化する図書館もある。ブルックリン公共図書館は最近、新聞アーカイブを電子化する新イニシアチブを発表した。電子化したアーカイブはオンラインポータル経由で一般公開する計画だ。このイニシアチブの下、地元紙「The Brooklyn Daily Eagle」のすべての記事が電子化され、閲覧可能になる。電子化の基となるのは、米国議会図書館保有のマイクロフィルム版だ。

 私はGoogle Newsで毎日、図書館関連ニュースをチェックしており、ここのところ図書館による電子版新聞・雑誌関連の提携発表が急増していることに気付いた。毎週5〜25の地域でこのコンセプトが受け入れられており、これは利用者にとって明らかに価値のあることだ。デジタル化により、コンテンツは永続するだけでなく、新聞・雑誌には電子書籍のような「1冊1貸出」ポリシーがない。雑誌を大量に貸し出せるようになることで、雑誌の価値が高まることになる。2015年には恐らく、PressReaderやZinioと競合する多数の企業がこの市場に参入するだろう。

ほうぼうでさまざまな取り組み

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 米国ニューヨーク市のクイーンズ図書館はiOS/Androidアプリを独自開発し、Acoustikのオーディオブック、Zinioの電子雑誌、OverDriveとBaker & Taylorの電子書籍の貸し出しを1つのアプリから行えるようにした。

 このアプリには検索機能をはじめさまざまな機能が盛り込まれている。店頭で販売されている書籍の電子版が図書館で借りられるかを簡単に確認するためのバーコードスキャンや、司書とのライブチャットなどもそうだ。このアプリを7月にリリースして以降、ダウンロードはiOS版が5400、Android版が3300といったところで、クイーンズ図書館はIT予算をほとんど持たない分館向けにこうした統合型のアプリの開発を促進するかもしれない。2015年に注目の動きだ。

 2014年のトレンドの1つは、デジタルコンテンツのみで展開する新しいタイプの図書館だった。その先駆けが米国テキサス州ベア郡にオープンしたBiblioTechだ。バラク・オバマ米大統領は2015年中に同様の図書館をもう1館建設する考えであることを述べている。

 2015年はより多くの図書館が地理的な制限を超えて電子書籍の提供を行うことになっていくだろう。図書館が建つ地域外からの利用者に一定の年額利用料を課し、その収益を蔵書の拡充に充てようとする動きも出てくるかもしれない。

 2014年の5月には、個人作家・インディーズ系電子書籍サービスを展開する米Smashwordsが、自社の個人作家陣が執筆した電子書籍を米Overdriveに供給すると発表している。そうしたものをどう選書し、コストを掛けて蔵書するかという点で司書の悩みは尽きないが、2015年はこの部分も少しは洗練されていくだろう。また、うわさレベルではあるが、例えばLULU、あるいはKindle Direct Publishingなどもこの分野へ進出するのではないかとする話も聞こえてくる。

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(翻訳責任について)
この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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