コラム
» 2014年12月29日 11時00分 UPDATE

2014年の電子書籍市場、記者が注目したトピックベスト3

気付けばもう年末。新人記者として電子書籍市場を追ってきたが、さまざまなトピックの中から印象深かったものを3つ挙げてみたい。

[宮澤諒,eBook USER]

 2014年も電子書籍に関するさまざまなソリューションやコンテンツ、サービスが発表されました。

 何が注目であったかは、日本電子出版協会が2007年から毎年実施している「JEPA電子出版アワード」を参照するのが良いかと思いますが、ここではeBook USERのいち記者である宮澤が思う注目のトピックを3つに絞って挙げていきます。

漫画誌の新時代を告げる「少年ジャンプ+」

少年ジャンプ+ 少年ジャンプ+

 漫画に関するトピックで今年1番インパクトがあったのは、おそらく集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+」ではないでしょうか。ティザーサイトも本誌と連携して宣伝されたりと、かなり話題となりました。

 集英社はこれまでにも、東日本大震災による配達遅延の際や、創刊45周年記念号発売時など、何度か『週刊少年ジャンプ』の電子版を配信していましたが、いずれも一時的なもので、継続的な配信はされてきませんでした。

 少年ジャンプ+では、『るろうに剣心』や『DEATH NOTE』などこれまでにジャンプで連載された人気作や、少年ジャンプ+オリジナル作品、さらには月額900円でジャンプ本誌だけでなく、『ジャンプNEXT!!』まで読めるとあって、サービスが開始した9月からわずか3カ月でアプリ版のダウンロード数は200万を突破するほどの人気になっています。

 また、少年ジャンプ+と同時にスタートした、マンガ投稿サービス「少年ジャンプルーキー」も忘れてはなりません。こちらでは毎月、投稿した作品の中からジャンプ編集者が受賞作を決定し、最優秀賞となる「ゴールドルーキー賞」に選ばれた作品はジャンプ本誌への掲載権が確約される「ジャンプルーキー賞」が開催されています。11月27日時点で200作品500話を超える投稿があり、注目度の高さが伺えます。

少年ジャンプルーキー 少年ジャンプルーキー

 12月24日には、講談社も新サービス開始のためのティザーサイトを公開しています。サイトでは『監獄学園』の白木芽衣子や『フェアリーテイル』のナツ・ドラグニルなど、“マガジン”に関係するキャラクターが登場しており、電子版の配信やアプリのリリースといったことも考えられます。正式な発表は2015年1月5日に発表されるようなので期待して待ちたいですね。

進むセルフパブリッシングサービスの提供

 今年はセルフパブリッシングのためのサービスが、盛り上がりを見せた年でもありました。

 セルフパブリッシングといえば、2012年10月25日に日本でもスタートした「Kindleダイレクト・パブリッシング」(KDP)が知られていますが、無料販売ができなかったり、高いロイヤリティー(印税)を得ようとすると、Amazonでの独占販売にしなければならないなどの縛りも存在します(紙の本などデジタル以外の媒体としてなら他サイトでも販売可)。

 ボイジャーが7月に正式版をリリースした「Romancer」では、Wordやテキスト、PDF、またはRomancerのビジュアルエディタで入力したものからEPUB 3データを生成し、Romancer上に公開することができます(ブラウザビューワはBinB)。KDPとは違い、生成したEPUBデータはダウンロードして自由に利用でき、希望すれば別途料金は掛かりますが紙の本として印刷することも可能です。

Romancer 制作画面 Romancer 制作画面

 もう1つは、楽天が12月18日にβ版の提供を開始した「楽天Koboライティングライフ」。こちらも電子書籍の制作から販売までを無料でサポートしており、楽天Kobo電子書籍ストア以外での販売や、無料配信も可能となっています。ただし、対応ファイルフォーマットは現在のところEPUB3のみで、予約販売や海外への販売などにはまだ対応していません。

楽天Koboライティングライフ 制作画面 楽天Koboライティングライフ 制作画面

 また12月8日には、KADOKAWAの電子書店「BOOK☆WALKER」も、電子書籍作成サービス「BCCKS」と連携して電子書籍や紙の本の制作から販売までをサポートするサービス「BWインディーズ」をスタートさせています。

 こういった制作から販売まで行えるセルフパブリッシングサービスが増えることで、個人による電子書籍の制作や販売のハードルが下がり、多様な電子書籍が生まれることに繋がると考えられます。そうして刊行される電子書籍の数は増えてきており、それらをどう知ってもらうか、認知のためのプロモーションやマーケティング手法を著者が考える動きがより盛んになるのではないでしょうか。

図書館資料のデジタル化

 近年、所蔵する資料をデジタル化して公開する図書館が増えています。12月10日には香川県立図書館が江戸から明治に掛けて作られた古地図や古文書を「香川県立図書館デジタルライブラリー」で公開しました(関連記事)。

 こういった取り組みの中でも、日本で最大の規模を誇るのが国立国会図書館が2011年に開始した「国立国会図書館デジタルコレクション」。こちらでは、国立国会図書館が所蔵する4000万点以上もの膨大な資料の中から、デジタル化された約50万点の資料を見ることができます。

国立国会図書館デジタルコレクション 国立国会図書館デジタルコレクション

 これらの資料はこれまで、Webサイトから転載する際には事前に申請する必要がありました。しかし、5月1日に手続きの簡略化が行われ、著作権の保護期間が満了し「インターネット公開(保護期間満了)」と表示されている資料の画像であれば申請をせずとも利用できるようになりました(国立国会図書館Webサイトからの転載だと明示する必要あり)。eBook USERでも国立国会図書館デジタルコレクションの資料を使った記事(それいけ! デジコレ探索部「第1回 知られざる桃太郎」)を連載しています。

 国立国会図書館デジタルコレクションのうち、インターネット公開されている明治以降の図書・雑誌を公開している「近代デジタルライブラリー」というWebサイトも存在します。

 4月21日には、同サイトで公開されている資料の中から、パブリックドメインのものを対象に、インプレスR&Dがプリント・オンデマンドで印刷・販売する「NDL所蔵古書POD」がスタート。Amazonや三省堂書店オンデマンドで販売を開始しました(関連記事)。

 また、10月29日にはAmazonが近代デジタルライブラリーのパブリックドメインをKindle本として販売を開始(関連記事)。インプレスR&Dのプリント・オンデマンドに比べ価格も安く(NDL所蔵古書PODは概ね1000円〜3000円、Kindle本は100円)、12月16日時点で既に1100点超を配信しています。

 デジタル化資料の公開は、個人で楽しむこと以外にもアカデミックの場での活用など、その利用価値はさまざまなところで生まれてくることと思われます。特に近年、タブレットを活用した教育(学校、塾、予備校、通信教育サービスなど)も盛んとなっていることもあり、そういった場での利用が今後増えていくのではないでしょうか。

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