本だけじゃない、神楽坂に誕生した書店「かもめブックス」の魅力に迫った

本格的なカフェ、テーマごとに並べられた本棚、非日常を感じられるギャラリー。この冬、神楽坂に新たな名所が誕生した。

» 2014年12月15日 11時00分 公開
[宮澤諒,eBook USER]

 東京は神楽坂、下町情緒あふれるこの街に11月29日、新たな書店がオープンしました。名前は「かもめブックス」、本の校正・校閲を手掛ける鴎来堂(鴎は旧字体)が運営する書店です。

 校閲の会社が書店を始めるという珍しさも手伝ってか、オープン前から本好きを中心に各所で話題となっていた同店。かもめブックスのWebサイトによると本だけでなく、カフェやギャラリーも併設しているとのこと。

 本稿ではそんなかもめブックスの魅力を写真と合わせて紹介します。後半では、鴎来堂の代表取締役&かもめブックス店主・柳下恭平さんへのインタビューも掲載しています。


店の前は人通りが多く「なんだろう?」と中をのぞく人も。2階は2015年の春ごろ、マンガやライトノベルの専門スペースとしてオープン予定

 かもめブックスは神楽坂駅矢来口を出てすぐ、マクドナルドの隣にあります。もともとは「文鳥堂書店」という街の本屋がありましたが、2014年春に突然の閉店。その事実をシャッターの貼り紙で知った柳下さんは、街から書店がなくなっていくことに危機感を覚えるとともに、インターネットが普及した現代で「教養を得るための読書」という習慣を今一度考え直すべく、出版不況と言われる中あえて本屋の経営に乗り出しました。

扉の先に広がるのはおしゃれなカフェスペース

 そんな思いの詰まったかもめブックス、扉を開けるとまず目に入るのはこちらのカフェ「WEEKENDERS COFFEE All Right」。京都の自家焙煎専門店「WEEKENDERS COFFEE」の豆を使ったおいしいコーヒーが味わえるお店で、テイクアウトもできます。


鴎来堂→おうらいどう→おぅらぃと→All Right!

カフェの店員さんはみんなおそろいのユニフォーム

 メニューはコーヒーや紅茶などのほか、アルコールも用意。お茶をするだけでなく、仕事帰りにふらりと飲みに来るのにもよさそうです。食べ物は軽めのものが中心となっていて、神楽坂にある焼き菓子の専門店「ACHO」のプリンを使った「神楽坂プリントースト」や「イングリッシュスコーン」、そのほか季節のお菓子を提供しています。

神楽坂プリントースト(写真=左) イングリッシュスコーン(写真=右)写真はかもめブックスWebサイトからお借りしました

 テーブル席とカウンター席、外にはテラス席もありますが、いまの季節だとちょっと寒いかも、春になったら利用したいところ。


買った本を早速ここで読むなんてこともできます

 カフェでくつろいでいると目に入るのがこの巨大な棚。並んでいるのはすべて雑誌です。面陳すると判型が大きいだけにとてもにぎやか。


これまで見たことなかった雑誌にも出会えそう

 視線を上に移すと「日本語を綴る、本を作る、本を愛する。」という校閲の会社らしい言葉が。

しかもよく見ると“赤”が入ってます。遊び心に思わずニヤリ

本を楽しむための仕掛けがそこかしこに

 奥に進むと、たくさんの本棚が並ぶ本屋スぺースになっています。でも、ただ本が置いてあるわけではありません。至るところに本を楽しむための工夫が施されていました。


絵本を積んだバギー。ちょっと押してみたくなります

丁寧に作られたPOP

ここにもちょっとした遊び心

「WORKERS BOOKSHELF」には、働く人たちに向けた本が並びます。第1回はかもめブックスの設立に関わった人たち

こちらはデザインを担当したLeif.designpark代表の上野卓史さんの棚

かもめブックスの棚にはそれぞれテーマがあるのも特徴的。こちらは「かもめブックスの1週間」と題して、曜日ごとにテーマを決めて本を並べています。火曜日は「愛」

グッズも充実しています。文房具はやっぱり机の上が一番映えます

バッグもあります。後ろのガラス窓は文鳥堂書店で使用していたものをそのまま残しているそうです

狩猟をテーマにした本が並んでいます。奥にはジャーキーや缶詰なんかも見えますね

レジ横にはオリジナルバッグも販売。描かれてるのは柳下さんをモチーフにした、かもめブックスのマスコットキャラクター「アンドウさん」(名前の由来はコチラ

ギャラリーで感性を刺激

 ギャラリーは、大阪のデザイン会社「G_GRAPHICS INC.」と共同で立ち上げたその名も「ondo kagurazaka」。大阪の「ondo tosabori」と東西2拠点で展開しています。


ギャラリーは店内の一番奥

 ちなみにギャラリーの左側の扉はワークショップ用のスペースになっていて、「ボビンレース体験ワークショップ」や「親子で手作り!アロマバスボム教室」といったさまざまな催しを開催していくようです。

12月16日〜12月28日には、書籍の装丁などを手掛ける小澤真弓さんの個展「日用」を開催予定。写真は12月14日まで開催されていた「えがく展」の様子。企画展は月2回ほど実施していくそうです

かもめブックス店長・柳下さんに聞く

トレードマークの蝶ネクタイがよく似合っています

―― かもめブックスのオープン、おめでとうございます。

柳下 どうもありがとうございます。

―― 校閲の会社が経営する書店というのは珍しいですよね。

柳下 確かに、そうかもしれないですね。

―― 厳選した本が並んでいるといった印象ですが、お店に置かれている本はどのような基準で選びましたか?

柳下 かもめブックスでは、テーマに沿って新刊と既刊を棚に並べています。僕もそうですが、本が好きな人は、床から天井までたくさんの本が置いてある書店が好きですよね。でも、やはり物量の利便性の高さは売り場面積に比例するので、それよりも、自分が好きな本がありそうだという期待感を重要視しました。

―― 校閲の会社が書店を経営する強みとは何でしょうか。

 かもめブックスのバックヤードには、鴎来堂で働く本が好きな50人の社員がいます。このことは書店を経営する上でとても強みになっていまして、例えば企画の棚を作るときでも、それだけ参考意見を聞くことができる相手が身近にいるというわけです。

―― アクセスもいいですし、まさに街の本屋という感じがします。

柳下 街の本屋さんって、場所が決まってからじゃないとデザインが難しいんですよね。東西線には高田馬場、早稲田、神楽坂、飯田橋と4つの駅が連なっていますが、それぞれまったく違った雰囲気の街なんです。もし、かもめブックスが高田馬場にあったら、いまとは全然違う形になっていたんじゃないでしょうか。

―― 神楽坂はどういった雰囲気の街なのでしょうか。

柳下 クオリティの高い食や生活に興味のある人が多い、「大人の街」だと思い ます。そして人情味のあるエリアでもあります。お店のオープンのときは近隣の人たちにいろいろと助けてもらいました。

 雑誌棚も最初はいろいろと試していこうと思います。だんだんと神楽坂の本屋さんになっていければいいかなと思っています。

―― かもめブックスには、本屋だけでなくカフェやギャラリーも併設されていますが、Webサイトではあえてブックカフェとは言ってないですよね。

柳下 ブックカフェと言ってしまうと、個人的に本屋さんの付属品としてのカフェといったような印象を受けてしまうんですよね。でも、WEEKENDERS COFFEE All Rightはこれだけでも独立して成り立つぐらいのきちんとしたお店として経営しています。

 カフェというと、最近どうしてもワークスペースになりがちなんですけれども、コーヒーを味わったり、本を読むという時間を作るときに、そこをあえてオフラインにするということをやってみたかったんです。なので店内にはWi-Fiスポットを設置していません。

 また、仮にカフェを目当てにこのお店に来たとしたら、よっぽど急いでいない限りは、お店の奥を見たくなると思うんです。あれだけ雑誌が面陳されている棚ってなかなかないと思いますし、奥に繋がるように本棚が並んでいて、誘い込まれるようにギャラリーがあって、奥へ奥へと入って行きたくなるようなレイアウトになっていると思います。

 ギャラリーは企画展を2週間に1回ぐらい変えていくので、ギャラリー目当てに来る方もそのうち増えてくるかもしれません。ギャラリー目当てに来た方が、本の立ち読みをして、カフェでコーヒーを飲んで、何となくいいお店だなあと思ってくれたら嬉しいですね。

―― 最後にこれから来られる方や記事を読まれる方に一言お願いします。

柳下 かもめブックスは、普段本を読まない人に来てもらうための書店だと考えています。音楽を聞いたり、映画を見たり、インターネットをしたり、いろいろな時間の過ごし方がありますが、読書という“オフライン”の時間を、かもめブックスで過ごしていただきたいですね。

かもめブックス

住所:東京都新宿区矢来町123第一矢来ビル1階

Tel/Fax:03-5228-5490/03-5228-4946

営業時間:月曜日〜土曜日 午前10時〜午後10時 日曜日 午前11時〜午後8時

定休日:不定休


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