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» 2014年12月01日 12時00分 UPDATE

電子書籍が紙の書籍を超えるには?

電子書籍はあと数年で紙の書籍を超えると多くのアナリストが主張している。そのためには実現すべきことが幾つかありそうだが、どんなことが必要だろう?

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 電子書籍はあと数年で紙の書籍を超えると多くのアナリストが主張している。中でも大胆な予測はPricewaterhouseCoopers(PwC)が最近発表した、2018年には逆転が起きるというものだ。そんなことがあるだろうか?

 米国と英国では、一般消費者向けの書籍販売に占める電子書籍の割合は4分の1から3分の1だ。Nielsen Booksの最近の調査によると、2014年上半期の電子書籍販売は23%で、ハードカバーは25%、ペーパーバックは42%という。

 Amazonが2007年にKindleをリリースして以来、電子書籍の売り上げは2桁台で伸び続けてきた。だが、2013年には1桁台に鈍化し、Nielsenはこの横ばい状態は異例ではないと指摘する。

 電子書籍が紙の書籍を超えるのがPwCが予想する2018年なのか、それよりも先なのかを見極めることはできるだろうか? 私はできると思うが、電子書籍が一般大衆に受け入れられるには、実現すべきことが幾つかある。

 北米と英国において、電子書籍の普及を阻んでいる障害の1つは、電子書籍というのは購入しても単にライセンスされるだけで、実質的に所有するわけではないという点だ。Amazon、Barnes & Noble、Koboで電子書籍を購入しても、その電子書籍を所有できるのではなく、一時的なライセンスを購入したに過ぎない。こうした所有権の欠如は、大ニュースにつながる多くの問題の原因になり得る。

 例えばAmazonは過去、ジョージ・オーウェルの『1984』と『動物農場』のKindle版について、これらを購入したユーザーのライブラリから無断で削除し、代金を払い戻した。これは、これらの作品の出版社とAmazonとのライセンス契約の問題が原因だった。また、2012年にノルウェー在住のある女性が英国のKindleストアから電子書籍を購入しようとしたところ、アカウントが削除され、ライブラリのコンテンツがすべて失われた。Amazonはコンテンツの提供地域を管理するため、こうした行為を禁じているのだ。

 もう1つの大きな問題は、Adobe DRMだ。DRM(Digital Rights Management)は、電子書籍への不正アクセスやコピーを防ぐための暗号化の一種である。Adobe DRMを採用する図書館や電子書店から電子書籍を借りたり購入したりするには、ユーザーは自分の電子書籍リーダー端末で「Adobe Digital Editions」を使わなければならない。このシステムのせいで、購入した電子書籍は紙の書籍のように友達に貸すことができない。相手に自分のアカウント情報を知らせれば可能だが、それは利用規約に反することだ。KindleとNookには購入した電子書籍を2週間貸し出せる機能があり(日本では未提供)、これに参加する出版社もあるが、この機能はあまり知られておらず、また操作が結構面倒だ。

 電子書籍業界がやるべきことは、コンテンツ保護の標準ツールとしてAdobe Digital Editionsを使うのをやめることだと私は思う。Adobe Digital Editionsの代わりに、ソーシャルDRMとも呼ばれる電子透かしを採用すべきではないだろうか。私はここ数週間、電子透かしを手掛けるDigimarcとBooxtreamを取材して開眼した。これらの企業の説明を受け、私は「なぜみんなこの技術を使わないのか?」と思った。

 ソーシャルDRMとも呼ばれる電子透かしは、肉眼では見えない技術を使っており、一般的な読者には気づかれにくい。電子透かしがデータを管理する方法には、2つのフォームがある。1つは(メールアドレスのような)電子書籍購入者の個人情報で、もう1つは販売事業者がユーザーや販売データベースを確認するためだけに使うID番号だ。電子透かしであれば、ユーザーは簡単に友達に電子書籍を貸し出せるし、サードパーティーのプログラムを使わずにスマートフォンやタブレット、電子書籍リーダーなど複数の端末に読み込ませることができる。端末にコンテンツを読み込ませるには、PCに端末を接続した状態でWindowsエクスプローラでコンテンツをコピー&ペーストするだけだ。

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 米国以外の市場では、電子書籍が普及しない別の理由がある。昨年の消費者向け書籍市場に占める電子書籍の割合は、フランスで8%、ドイツとイタリアで4%、スウェーデンとノルウェーで1%だった。アジアでは、日本が15%とトップだが、それを追う中国とインドは3%と大きく水を開けられている。電子書籍の普及がこれほどまでに低い理由の1つは、その価格だ。ベストセラーリストを見ると、米国の平均価格は12ドルだが、フランスでは24.99ドル、ドイツでは20ドル、スウェーデンでは19.02ドルだ。

 まとめると、電子書籍が紙の書籍を超えるには、所有権への明確な道筋が必要だ。また、価格の安定化も求められている。さらに、電子書籍の貸し出しと複数端末への読み込みをもっと直感的にする必要がある。

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