インタビュー
» 2014年09月24日 11時00分 UPDATE

目指すのは「本を媒介としたコミュニケーション」――読書メーター・赤星琢哉

さまざまに存在するWeb上の読書コミュニティーサービス。2008年オープンの「読書メーター」は、レビュー登録数が1000万件を突破するなど人気のサービスの1つだが、その軌跡と今後について同サービスを運営する赤星琢哉さんに聞いた。

[西尾泰三,eBook USER]
読書メーター 読書メーター

 書籍愛好家たちが、自らが読んだ本を披露し、語り合い、交流する場。ネット上には、そうした読書コミュニティーサービスがある。

 大小さまざまな読書コミュニティーサービスが、それぞれ特長を生かした本と人とのつながりを作って、人気を伸ばしている。海外では、読書コミュニティーサイト大手のGoodreadsがAmazonに買収されるなど、ビジネス的な側面で注目の動きもみられる。

 そんな国内の読書コミュニティーサービスの1つが「読書メーター」だ。2008年のサービス開始から着実に利用者を伸ばし、先日レビュー登録数が1000万件の大台を突破した。同サービスを運営する「トリスタ」の代表、赤星琢哉さんに、サービス開始のきっかけや、読書コミュニティーサービスの今後を聞いた。


小説をほとんど読まなかった男が読書メーターを立ち上げるまで

赤星琢哉さん トリスタ代表、赤星琢哉さん

―― 読書メーターは国内の読書系Webサービスの中でもよく知られたサービスの1つなので、すでにご存じの方も多いかと思いますが、最初に、読書メーターを作ろうと思ったきっかけからうかがえますか。

赤星 僕はもともと、小説などの本をほとんど読んだことがありませんでした。小学校の時も読書感想文の宿題がすごく苦手で。読書というとマンガで、それも絵が多くて楽に読める作品ばかり読んでいました。

―― そんな赤星さんがなぜ読書メーターを作ろうと考えたのでしょう。

赤星 直接的なきっかけはPodcastで配信されていたある番組で、伊集院光さんが東野圭吾さんの『ブルータスの心臓』という作品を紹介していたことです。それを聞いて、何だか面白そうだなと思って、文庫で読んでみたんです。

 ちゃんとした小説を読んだのはこのときが初だったんですが、とても面白くて、今まで知らなかった分、もっといろいろな作品を知りたいという欲求が高まったとき、ネットを使って情報交換というか、新しい本に出会えるサービスを作れないか、と思ったんです。

―― 思い立ってからサービスを立ち上げるまで、どのくらいの期間がかかりましたか。

赤星 現在のサービスと比べると、機能も少なく、ほとんど別物ですが、「読書メーター」というサービスの立ち上げに掛かったのは約1カ月でした。サービスの構築はこれまで、基本的に一人でやってきました。最近になって規模が大きくなり、知人にインフラ部分を設計してもらったり、運営スタッフに手伝ってもらったりしている感じですね。

―― ほぼお一人でサービスを構築・運用されているんですね。赤星さんは起業家といえると思いますが、そうしたスキルやマインドを持つようになったのは大学などですか?

赤星 僕は宮城県出身で大学も宮城大学ですが、専攻は事業構想学部という学部で、英語と簿記とパソコンの3つを学んで起業家を育てる、という感じの学部でした。

 大学の授業に必要だったのでノートパソコンを購入してもらって、インターネットを楽しんだり、オープンソースソフトウェア(OSS)を使ってサイトを立ち上げたりはしていましたが、本格的なプログラミングを始めたのは大学を出てからですね。

―― まさに大学が志向する人材となった感じですね。

赤星 大学はあまり真面目に行っていなかったですけどね(笑)。

読書量管理とコミュニティー機能のはざまで

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―― 読書メーターは2008年5月にローンチされていますが、当時、読書メーターのような読書コミュニティーサービスはなかったのでしょうか。

赤星 本管理のサービスはいろいろあったようですが、当時は特に同業他社を調べたり、といったこともしなかったので、よく知りませんでした。立ち上げた後でいろいろな方面から「こんなサービスもあるよ」と教えてもらったくらいです。

 当時自分の周りに読書家の友達がいなかったので、自分がまったく新しい本と出会うために、いろんな人のおすすめの本を知りたいな、と思って始めたものでしたから。

―― 読書メーターは読書量がグラフで可視化されることも特徴の1つですが、レビューをはじめ、どちらかといえば読書メーターに集まる読書家同士のコミュニケーションが支持されているように思います。これはスタート当初から狙っていたものだったんでしょうか?

赤星 スタート当初はあまり狙うとか戦略がどうとか考えていなかったと思います。とにかく簡単に登録できて、自分が使えるようにして、新しい本に出会えるようにしたいと考えていたと思います。ただ一つだけ気にしていたのは、一人でも使えるというツール的な部分を最低限作ったということですね。

 僕はただ単に本を管理できるサービスを作りたかったわけではなく、新しい本に出会うためのサイトを作りたかったので、そのためにはユーザー同士のコミュニケーションが必要だと考えていました。

 なのでコミュニケーションをメインとしたサイトを作りたかったのですが、コミュニティーサイトって、人が集まらないとコミュニケーションできませんし、とはいえコミュニティーが形成されていないとユーザーが集まらない、というジレンマがあると思うんです。

 だから、いきなりコミュニティーの形でコミュニケーション活性化を目指すのではなく、一人でもある程度使える機能を作りこんで、自分がどんな本を、どれだけ読んできたかを分かりやすく、簡単に行えることに注力していました。そうした蓄積を経ながら、コミュニケーション部分の機能も段階的に強化してきた感じです。

サービスは手を掛けないと伸びない

―― レビューを投稿してもらうための仕組みとして、こだわっているポイントはありますか?

赤星 特別これ、というものはありませんが、気軽にレビューを投稿してもらえるよう、レビューの文字数を最大250文字に制限しています。僕自身、あまり長いレビューは書けませんし、読めないので(笑)。書く方もせっかく書くのなら読んでもらいたいでしょうし、読む方も楽に読める方がいいのかなと思っています。短く簡潔に書くことは書く方にとっても読む方にとってもいいと思っています。

tnfigdm004.jpg 読書会やビブリオバトル、イベントページには大小さまざまなイベントの告知がずらり

―― オフ会、あるいは読書会と呼んだりもするイベントを簡単に告知、確認できる機能も人気ですね。

赤星 イベント情報を掲載する機能ですね。ファン同士の交流が深まればいいなと加えた機能ですが、ユーザー同士がそれを積極的に利用して頂けているようで、すごくうれしいですね。

 見ている範囲では、やはり東京(でのイベント開催)が一番多いようですが、全国各地でいろいろと、そういうつながりを作るきっかけとしてサービスを使ってもらえるとうれしいです。

―― 先日はついにレビュー数が1000万件を突破しました。サービス開始からを振り返るとどんな6年間でしたか。

赤星 ものすごくなだらかですが、右肩上がりの曲線を描いて増やしてくることができました。6年かけて得た経験としては、「サービスは手をかけないと伸びない」ということですね。一時期、読書メーターは休日に少しメンテナンスするくらいで、ほとんど手をかけられていない時がありまして、その期間はあまり伸び率もよくないのです。ただ、読書メーターに再び注力し、地道に機能改善したりしたら、また数字が上がってきたり。

―― そのころの機能改善を具体的にいうと?

赤星 本当に地味な改善です。アクセスの多いページのレスポンスを速くするとか、はやりのツール、例えばFacebookやTwitterに投稿するためのボタンなどを導入するとか。それまで中々手を付けられていなくて。そうした部分をきちんと対応して、日々の努力というか、細かな運営を心がければ、アクセスはちゃんと伸びていくんだなと実感しました。

本を媒介にコミュニケーションをとれるコミュニティーを

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―― 現在、サービスを運営する中で、課題と感じている部分はありますか。

赤星 どうしても開発を優先してしまうため、プロモーションや営業的な部分に手が回らないのが現状の課題です。例えば出版社から時折お声掛けいただくようなことがあっても、中々一緒に何かをするというところまで至れずにいて。今後は、それぞれの分野で得意な人たちと一緒に質の高いサービスを作っていきたいと思っています。

―― iOSやAndroidのアプリ開発者の方を募集されているのを見ました。

赤星 iOS向けには一応アプリをリリースしていますが、ほとんどアップデートできていませんので、開発を手掛けてくれる方を探している状況です。

―― サイトの利用はスマートフォンとPCでどちらが多いのでしょうか。

赤星 すでにスマホからの利用がPCを抜いています。正確には、スマホがグングン伸びてPCを追い抜いちゃった状況です。モバイルデバイスの中ではAndroidとiOSがほぼ半々です。

―― 過半数を占めるユーザーにしっかりした環境を提供するためにもアプリを出していきたいと。Webサービスをモバイル向けに最適化していくアプローチではなく。

赤星 読書メーターのサービス内容でいうと、Webの技術でやろうとして技術的にできないことはほとんどないと思います。ただ、現時点ではWebよりネイティブアプリの方がレスポンスが良く、ユーザーがストレスなく使える環境を提供するにはネイティブアプリだという認識でいます。僕自身、他のサービスを利用する際、アプリがあればそちらを使うようにしていますので。

 アプリを志向するもう1つの理由としては、ターゲットとするユーザーの年齢層ですね。

―― 年齢層ですか。読書メーターのユーザー層はどういったものでしょう。

赤星 一番多いのが30代前半くらいです。ただ恐らく、書籍を好んで読む方たちの年齢層はもう少し高いと思うんです。そういう方たちのITリテラシーは一様に高いわけではないと思いますが、読書メーターは、実はそういう方たちにこそ使ってもらいたいのです。

 そして、そういう方たちは画面の小さなスマートフォンより、タブレットを使う方が増えているような肌感覚があります。そうしたタブレット初心者のような方たちに使ってもらうには、やっぱり各種公式ストアでアプリを検索して簡単にインストールできるようにしておかなければならないと考えていますので、そのためにも、ネイティブアプリをきちんと作っておきたいのです。

―― 出版業界は元気がないと言われることがあります。読書メーターを運営されていて、その辺りはどうお感じになりますか。

赤星 出版業界が元気がなくなったというより、他の分野の元気が出てきていますよね。今は楽しむものがたくさんあるので、分散するのは当然だと思います。なので、読書メーターが伸びるためには、そもそも出版業界全体が活性化しなければいけないと思っていますので、読書メーターも何か微力ながらお手伝いができれば、と感じています。

―― 読書メーターに投稿されるレビュー1件につき、1円をルーム・トゥ・リードへ寄付する取り組みなどもされていましたよね。

赤星 はい。1カ月間に読書メーターで投稿された感想・レビューの数と同じ金額をルーム・トゥ・リードさんへ寄付させていただいています。これは「読書家が本を読めば読むほど、世界中の読書家が増える」という素晴らしいサイクルを目標に、昨年から実施させていただいています。

 今年は6月に行い、おかげさまで22万9160件の投稿を頂くことができました。こんな形で、少しでも読書界に貢献していければと思っています。

―― 世界に打って出たい、というような思いはありますか?

赤星 海外でもサービスを展開したいという思いはあります。特にコミック関連だと、日本からのサービスというのは強みとしてやっていけそうな感じもあります。

―― 最後に、読書メーターが今後目指していくものをお聞きできますか。

赤星 読書メーターが目指すのは、ユーザー同士が本を媒介にコミュニケーションをとれるコミュニティーづくりです。人が何か話をする時、その前段として同じ本を読んだ上で話をすることでより深い話ができるということがあると思うので、作品のファン同士がしっかりつながりあえるようなサービスにしていきたいです。



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