hontoカフェが乱歩カフェに? 乱歩賞トークイベントに参加してきた

東京・市ヶ谷、大日本印刷が運営する「hontoカフェ」が江戸川乱歩賞とコラボ。『黄金仮面』の生原稿のほか、トロフィーや、過去の受賞作の展示などを実施している。

» 2014年09月13日 11時00分 公開
[宮澤諒,eBook USER]

 東京・市ヶ谷、大日本印刷が運営する「hontoカフェ」で、江戸川乱歩賞(以下、乱歩賞)とのコラボ企画が、9月19日までの期間限定で開催している。店内では、乱歩の代表作『黄金仮面』の生原稿や、受賞者のみが手にすることのできるブロンズ像、過去の受賞作品などを間近で見ることができるのだ。

 漫画やアニメ、小説とコラボしたカフェは最近都内を中心に各地でオープンしているが、文学賞とのコラボというのは聞いたことがない。乱歩の雰囲気を再現して、ドロドロした空間になっているのだろうか、それとも明智小五郎のような店員がいるのだろうか。実態を確かめるべく、取材に向かった。

壁一面に並ぶ過去の受賞作
もちろん第60回の受賞作、下村敦史さんの『闇に香る嘘』も
乱歩のブロンズ像。第48回まではシャーロック・ホームズの像だったそう
『黄金仮面』の原稿
間近で見ることができる
カウンターには乱歩賞の年表が

 hontoカフェには、電子書籍を閲覧できるタブレットが28台(iPad14台、ARROWS Tab14台)設置されている。会期中はこのタブレットを使い、過去の受賞作18タイトルの試し読みと、受賞作家の言葉や選評を掲載したオリジナルコンテンツを読むことができる。中でも、第60回の受賞作となった下村敦史さんの『闇に香る嘘』のほか、『カラマーゾフの妹』(高野史緒)、『焦茶色のパステル 新装版』(岡嶋二人)、『天使の傷痕』(西村京太郎)、『天使のナイフ』(薬丸岳)、『検察捜査』(中嶋博行)の6作品は通常の試し読みより多く、全体の3割ほどまで読むことができる。

 なぜこのようなコラボ企画を開催したのだろうか。今回の企画の担当者は――「芥川賞や直木賞などに比べて、新人の方が多く参加する江戸川乱歩賞は注目されづらいんです」と、現状をなげきつつ「過去の受賞者には、西村京太郎さんや、東野圭吾さん、池井戸潤さんなどの有名な作家もたくさんいますし、無名の作家でも素晴らしい作品ばかりなので、この機会に賞のことを知ってもらい、作品を読んでもらいたいです」と話してくれた。書店でも乱歩賞の作品を並べた棚を作るなど、応援しているところも多いという。見かけたらぜひ手に取ってもらいたい。

 9月6日には、選考委員を務めた作家の今野敏さん、第51回の受賞作『天使のナイフ』の作者・薬丸岳さん、第60回の受賞者・下村敦史さんを招いてのトークイベントが開催。

左から、今野敏さん、下村敦史さん、薬丸岳さん

 下村さんは、これまで9年連続で江戸川乱歩賞に投稿しており、最終選考に進むこと4度。今回待望の受賞となった。『闇に香る嘘』は、視覚障害を持つ69歳の男性が主人公。目が見えない主人公の立場から文章をつづることで、不安や恐怖といったものを感じ取ってもらいたいという。

 次回作の構想については、下村さん、薬丸さんともに警察小説に取り組んでいると発表。トークイベントは終始笑顔と笑いに包まれた和やかなものだった。

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