本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はミソノからの紹介です。
去年よりずっと早く、涼しい風が吹き始めたこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。
今日エリスさんにおすすめする本は、もうエリスさんが読んだことのある本なんですよ。
あら、何かしら。
この分厚い……『英国メイドの世界』です。
まぁ! もちろん読んだことがあるどころか、いついかなる時もそばにある大切な本ね。
作者の方は同人誌という自費出版の世界でこのテーマを取り扱われ続け、総集編としてまとまった時は「同人誌界再厚のページ数!?」と驚かれるくらいの厚みでしたねぇ……。そしてそれが講談社さんから書籍化されたのがもう2010年のことなんですね。
この本の、英国メイドの暮らしに関する情報量と言ったら……!
黒いワンピースに白いエプロンのメイドさんたちが、使用人としてお屋敷でご主人さまに仕えていた時代……やがてそれがすたれるまでのメイドさんの暮らしを「ハウスメイド」「キッチンメイド」などの役職別に紹介されています。この紹介が、過去の多くの資料を紐解かれていて、丁寧でとっても分かりやすいです。
この本、計測してみたら、厚みがおよそ3.5cmもあるのよ……。
開く前は「こんなに読めるかしら……」と不安にさせる程の迫力ですよね。でも、ひとたびページをめくれば、メイドの暮らしぶりがいきいきと伝わって来ます。
「カーテンにも衣替えがあって、夏は白いカーテンに取り換えられた」と書いてあると、メイドたちが大きなカーテンをがんばって取り換える姿が目に浮かびます。「生クリームを作るときに、遠心分離機を使うこともあった」と知ると、そんなものを使っていたのね! とわくわくします。メイドたちの衣食住が網羅され、彼女たちの働く姿がまぶたの裏に浮かんでくるのじゃないかしら……! と思うほどです。
わたくしたちメイドは特にとっても共感しやすいわね。トランクに詰め込んだお洋服一覧のコーナーでは、メイドさんのトランクの中身は、ダークグレーのドレス2着に対して白いエプロン6枚! その多さに「分かるわ……。エプロンってお仕事するとすぐに汚れてしまうものよね」とうなづいてしまうわ。
エリスさんは、私たちの私設図書館に著者の方をお招きして、お話を伺った時のことを覚えてらっしゃいますか。
もちろんよ!
その時、私ったら「床掃除のときって、過去のメイドさんはどうしてらしたのかしら。すぐ裾(すそ)が濡れて困っているので参考にしたいです」という、とりとめのない質問を気軽にしてしまったんです。先生は確か、少し笑って「それは今のメイドさんの日常の仕草と一緒なのでは?」と答えていただいたことを覚えています。そうなんですよね。働くこと、特にメイドのお仕事は日常に繋がっているんですね。
「やる気のある後輩が、手際も良くて自信なくなっちゃう……」なんていう、切実な話も載っているのよねぇ……。
「使用人」という響きは、昨今ではなかなか実際の就職口では馴染みがありませんが、ご主人様が社長さんだと考えれば、今でも多くの人は誰かに仕えるお仕事についていることになるのかしら。もちろん、現代社会とは多くのシステムが違っています。その独特の部分に興味津々な一方で、働く事への変わらない悩みに不思議と共感したりもするのです。
メイドのみならず、執事さんや庭師さんも掲載されているわね。長く仕えた一族のために、まだ学生寮に入っているような若き次代の主にわざわざ会いに行き、「私があなたにお仕えすることを、お望みになりますか?」と尋ねた執事さんのエピソードなんて、震えるほど素敵……!
今ではあまりお目にかかれない職業のおもしろエピソードを思い切り堪能でき、一方では日常にうんうんとうなづく……。メイドを鍵にして、かつての時代と読み手のわたしたちが変わらず繋がっていることを感じる本です。エリスさん、あらためてこの厚い本をゆっくりめくってみましょうよ。
あら、じゃあお茶を淹れて……メイドの世界を楽しみましょう!
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:45% レイラ:73% サヤ:76%
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