本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はレイラからの紹介です。
夏嵐が過ぎ去って、真っ青な青空が広がる街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って書架にメイドがやってきます。
今年の夏の超大型同人誌即売会も大盛況みたいね。
そう、本日8月15日が初日ですよー。
6月に当館で、夏コミに向けて同人誌制作のための紙の見本展示をした時に紙を選んでいた皆様は無事に新刊を作れたのかしら。
紙見本展示! およそ300銘柄7000種の紙見本や、B5サイズにオンデマンド印刷でプリントした紙見本を眺めながら、皆で表紙はどれにしようかしら、本文はこれがいいかしらと考えるのは、それはもう楽しかったです。皆さん無事に発行出来ているといいですねぇ。
私、本を作るためにあんなに色々な紙があるなんて知らなかったわ。
お話の雰囲気に合う紙を探して「これだ!」と思うものを見つけた時の満足感は格別ですよ!
ところで、その紙類がどこでどうやって作られているか、ミソノさんはご存知かしら?
いいえー。紙の専門店に行くのは大好きですけれど、どこで作られているかとかは、今まで気にしたことがなかったです。大きな紙工場があるのかしら……というくらいです。
では、今回は本作りには欠かせない紙作りに携わる人達を描いたお話を紹介するわね。
この本は2011年3月11日に被災した宮城県石巻市にある製紙工場の復興の様子を描いたノンフィクション作品なの。
そういえば、震災当時、日本で一番大きな製紙工場が被災して、紙が作れないから本が出版出来なくなるかもって噂がありましたね。
でもその後、普通に本が出版されていて、意外と大丈夫だったのかしらってちょっと安心したのを思い出しました。
私もこの本を手に取るまですっかりこの紙不足のこと忘れていたけれど、実は、すごく大変な思いをされていたみたいなの。
まあ、そうだったのですね。被災したと聞きましたが地震で倒壊してしまったのでしょうか?
いえ、かなり大きく揺れて立っていられないほどだったそうですけど、地震による被害はそこまでひどくなかったそうよ。ただ、地震の1時間後に来た津波により工場一帯が浸水してしまい……。
水分は出来上った紙の大敵ですものね……。でも、地震から1時間も経ってから津波が来たというのは意外です。
その時間差のおかげで、当時工場で働いていた人達は全員高所に避難することが出来たので、1人の死者も出なかったそうなの。
それは不幸中の幸いでしたね。
ええ。なんというか、今まで天災にあった時に「個人としてどう対応すべきか」ということについては色々勉強して備えていたつもりだけれど、4桁を越える従業員を抱えた1つの会社が「集団としてどう危機を乗り越えるか」ということはまったく考えたことがなかったので、石巻工場の皆さんのお話は学べるところがたくさんあったわ。
そうですよね。館内にいる時に被災したら、私たちがみなさまを無事に避難所まで誘導しないといけないですものね。
それもあるけれど、問題はその後よ。
後というと、この本のテーマにもなっている復興ということでしょうか。
そうなの。工場一帯が浸水してしまい、精密機器が塩水と泥まみれになり、電気も通らず、建屋の中も外もガレキの山に埋もれてしまったのよ。工場として再び機能するためにはあまりにもやるべきことが膨大で、いっそ被災した工場は取り潰して、新しく別の場所に作り直した方がマシなんじゃないかってくらいひどい状況だったみたいなの。
巻末に震災直後の工場内の様子を写した写真がありますね。確かに、この状態からの現状復帰には並々ならぬ労力が必要そうですね。
でも、ここで工場を閉鎖してしまったらそこに勤めていた4桁を越える人々が職を失ってしまうし、東京に本社をおく日本製紙という会社全体の存亡の危機にも繋がるわ。だから、何としても工場を復興させなければならない。
そうして、当時の工場長さんが「半年で復興」という目標を掲げて皆で頑張ったんですね。
当時、その目標を聞いた従業員達は誰もが「絶対に無理!」と思ったそうだけれど、電気課が期日までになんとか電源を復旧させ、ボイラー課がボイラーに火を入れ……と、駅伝でたすきを繋ぐようにひとつずつ課題をクリアして、なんとか半年で1台のマシンを再稼働させたそうよ。
それが、8号マシンと呼ばれる、文庫本やコミックスの紙をつくる抄紙機だったのですね。
最初は工場内で一番最新で構造が比較的シンプルな別のマシンを復旧させる予定だったのだけれど、「出版社が8号の紙を待っている」ということでこちらが優先されたのだそうよ。
多くの人に求められての復旧って、胸が熱くなりますね。
そうなの、8号の初再稼働日に行われた「通紙」というセレモニーの様子を記述した8章は、まるで私たちもその場で紙が繋がっていくところを見守っているような臨場感があって、特に感動的だったわ。
工場の人達の紙に対するこだわりも良いですね。本に紙を作った人達の名前は載っていないけど、作った人達はその品質で本を見れば自分の作った紙が分かるっていう、自分達の作った物への自信と深い愛情が感じられます。
奥付けのところにこの本で使った紙の名前が載っているのが、心憎いわよね。口絵に使われているb7バルキーという紙は震災後に開発された新しい紙で、b7はギターコードの1つで「調和」を意味するんですって。
素敵! 制作者の方にギター好きの方がいらっしゃったのかしら。
そうなの。あと、この紙は女性のお化粧から発想を得て作られていて、その制作秘話もすごく面白かったわ。
わぁ、それは気になりますね。
来月の9月14日は、石巻工場の「姫」8号抄紙機が復活した記念日です。ぜひこの本を読んで、そのページや表紙の紙の質感や色あいを楽しみつつ、紙作りに今も奮闘し続けている人達に思いを馳(は)せてみて下さいね。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:38% レイラ:73% サヤ:71%
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