本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はサヤからの紹介です。
長い雨が明けて、夏がやってきたこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。
最近はときめき系の作品ばかり紹介していたので、すっかりときめき担当みたいな感じになっていますが、私は文学メイドですからね、他にも色々と小説を読んでいるわけです。
でも今日持ってきた本のあらすじに「キュートな恋愛小説」って書いてあるわ?
確かに『勝手にふるえてろ』は26歳の主人公ヨシカが、中学生からの片思いをしている相手と、猛烈なアプローチをしてくる同僚との間で揺れる話です。なので恋愛小説でないことはないのですが、ヨシカは恋愛なんて全然していないんですよ。
んん? 片思いをしているのに、恋愛はしていない……?
何でもヨシカは、片思いの相手とはろくにしゃべったこともない上に中学卒業以来一度も会っていなくて、アプローチしてくる同僚のこともよく知らないしこれっぽっちも好きじゃない。しかもそれぞれをイチ、ニと呼んでいます。イチ、ニと順番で名づけてしまうセンスは読んでいる分には面白いですけど、自分がやられたら泣きますね。
こだわっていないと言うか、そっけないと言うか……。
恋愛していない代わりにヨシカは、叶えることが難しそうな理想を貫くか、手ごろに叶えられそうな現実をとるかで悩みます。でもこの小説が面白いのは、理想が理想のままでいてくれなかったからなんですよね。
相手が変わってしまったってことかしら。
イチに会うために開いた同窓会で、イチが自分の名前を覚えていなかったことが発覚します。ここで、現実のイチが自分の好きだったイチと違うこと、自分の好きだったイチは妄想によって作られた自分の中にいるイチだったことに気付くんですよ。そしてそれに気付いたときに、ヨシカは現実を見るの? 見ないの? ってところに『勝手にふるえてろ』の醍醐味があると思っています。
長い間思っていたのに! 長ければ長いほどダメージ大きそうだわ。
『勝手にふるえてろ』を読んで、ヨシカと私ってなんだか通じるところがあるように思いました。私はとあるゲームのキャラクターがとても好きで、日々妄想に励んでいることはミソノさんもご存じだと思います。でもそのゲームの中で、「この言動はこのキャラクターらしくないな」と思うことがあるんです。これってヨシカと同じように、私の中に私の妄想によって作られたキャラクターがいて、それが現実と離れてしまっているんじゃないでしょうか。
自分で「きっとこんな人なんだろうな」って思い込む……きゃーきゃー! 私にもちょっと思い当たる節があるわ!
『勝手にふるえてろ』には「ちゃんと現実見ようよ」っていうメッセージが込められているような気がして、なんだか耳に痛いです。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:31% レイラ:66% サヤ:71%
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