本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はミソノからの紹介です。
夏も近づき緑がまぶしいこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って書架にメイドがやってきます。
そろそろ梅雨も明けるかしら? まだしばらくは、おでかけに傘を持って行くか悩むころかしら。こんな季節になると、ふと、この絵本のことが思い出されるんですよー。
あら、『トマトさん』と同じ作者の方ね? 表紙にどーんと置かれた鮮烈な赤……そしてトマトさんのアンニュイな表情……あの絵本に出会った時はなかなか衝撃的だったものだわ。
レイラさん、絵本を握りしめて見せてくれましたものねぇ!
あのインパクトの強い『トマトさん』に比べると、こちらはずいぶん色が優しい感じ……。
作者の田中清代さんは『トマトさん』を筆頭に、いまやあちらこちらにひっぱりだこの人気作家さん。その田中さんが比較的初期に描かれた作品です。
この表紙の真ん中にあるのは魚のぬいぐるみかしら。
するどい! 一目で「魚……っぽいけど、なんかふわふわしてそう……」と思わせるこの謎の二足歩行形態のものは、実は着ぐるみです。
きぐ……るみ……?
お母さんが作ってくれた魚の着ぐるみが、お気に入りの男の子。魚に着替えて「きょうは ぼく、ぴちぴちのさかなになっちゃって… ぺたぺた あるいて『いってきまぁす』」と意気揚々と二足歩行で幼稚園に出発です。
出発って……この背景、明らかに普通の民家、普通の町並みですよね! この丸いフォルムの鮮やかな着ぐるみが、町をゆく光景って……。
ええ。案の定、猫は驚くし、ご近所のおばさまたちはひそひそにやにや。そりゃそうです。でもいつもは怖いガミガミおじいちゃまはにやりと笑って飴(あめ)をくれるのがちょっと嬉しい。無理解な人ばかりではないのです。しかし! 我が道を行く男の子に無情にも、空から雨粒がぽたりぽたりと……。
着ぐるみに雨! 相当なピンチね!
しとしと重くなった着ぐるみの前に現れたのは……と絵本は続きます。この明るくも、どこか曇りがかった色づかいが今の季節にぴったりだと思うのです。
田園風景に緑の葉が揺れているのも初夏らしいわね。
家々が立ち並ぶ町並みだけでなく、民家のひとかたまりを抜けると田んぼを横切る道に続いているのも「あるある、こんな町」と思わせる空気感ですよね。
「男の子が着ぐるみを着て幼稚園に行く話」と総括すると、突拍子もないイメージなのに、この絵本の違和感のない日常ぶりはすごいわねぇ。
もちろん、道の向こうからお魚が歩いてくることに驚きはされますけど、作品全体に「ふつうの毎日」という空気が満ちている気がします。ちょっぴり変わった格好が好きだけど、「ふーん、まぁいいんじゃないですか。うん、魚の格好、なかなかかわいいよ!」と笑顔で言いたくなりますねぇ。
「着ぐるみという個性を貫く」とか「違うスタイルの他者を受け入れる話」とか、ついついそういう目であれやこれやと言いたくなるのですが、ところがどっこい。読めばすとん、と腑(ふ)に落ちるんですよ。ツッコミどころはたくさんあるはずなのに「よかった!」でページを閉じられるこの絵本は、ちょっと変で、すごく安心できる絵本です。
蒸し暑い空気や、近づく夏の熱気にちょっぴり疲れた時にこの絵本を開くと、肩の力が抜けそうですよー。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:31% レイラ:59% サヤ:66%
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