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» 2014年07月04日 19時00分 UPDATE

国際電子出版EXPOリポート:今年の電子出版EXPOを振り返る

いよいよ最終日をむかえた国際電子出版EXPO。展示の紹介や、クリエイターEXPOでのインタビューを交えつつ、2014年のEXPOを振り返る。

[eBook USER]

 国際電子出版EXPO最終日。開催3日目となる7月4日は小雨の降るあいにくの空模様となったが、今日から東京国際ブックフェアで一般客の入場が始まったため会場内は混雑していた。

 7月5日まで開催されるブックフェア以外は本日で終了となる。ここでは、これまで紹介していない展示や、一部クリエイターEXPOの紹介をしながら、今年の電子出版EXPOを振り返ってみたい。

いつでも書店

rmfigbook3-1.jpg いつでも書店の今後の取り組み

 ベストクリエイトの運営する「いつでも書店」のブースでは、今後の取り組みについて左の画像のようなボードが展示されていた。これによると、新たな展開として、大きく2つの事業を考えているようだ。B2B2Cとは、B=business(企業)、C=consumer(客)というところから分かるように、企業がある企業を通して客と取引を交わすことをいう。詳細については明らかとなっていないが、いつでも書店の持つ電子書店としての経験を生かす取り組みのようだ。

 また、新たなサービスとして、電子図書館事業についての記述もある。電子図書館事業といえば、メディアドゥと米OverDriveとの取り組みがあるが、こちらはいつでも書店の持つコンテンツを図書館に貸し出すというように読み取れる。いずれの取り組みについても、詳細は今後明らかにしていくという。

 さらに同ブースでは、ほかのブースにはない目を引く展示がある。

rmfigbook3-2.jpg 見覚えのあるキャラクターも

 これは「電子書籍には漫画家さんたちの力が必要不可欠」との思いから、漫画家さんたちに自由に描いてもらったものだという。初日は空白が目立っていたが、3日目ともなるとにぎやかになっている。

 作品の中には、ビッグサイトで併催中のクリエイターEXPOに参加している漫画家やイラストレーターのものもあるという。第3回となる同EXPOは、過去最多となる700人のクリエイターが参加している。せっかくの機会なので漫画家・アニメ―タ―・イラストレーターの方々にもお話を聞いた。

ベテランから金の卵まで、あらゆるジャンルのクリエイターが集合

rmfigbook3-3.jpg 写真家・漫画家・絵本作家・ライターなど会場ところ狭しとブースが並んでいて、眺めるだけでも楽しい

rmfigbook3-4.jpg イラストレーターのヤマサキミノリさん

 3年連続でEXPOに参加しているというヤマサキミノリさん。もともとはデザイン関係の会社に勤めていたが独立し、現在は週刊誌や書籍などのイラストを描いたり、取材した内容をルポ漫画にしたりといった活動をしている。

 失礼を承知で仕事の話はあったのか聞いたところ「いくつかお話をいただきました。その場で仕事が決まるわけではないですが、短期間に大勢の方とお話しできたり、作品を見てもらえたりできることがいいですね」と答えてくれた。

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出典:ヤマサキさんのWebサイト「yocojiwa


rmfigbook3-6.jpg 漫画家のモクタンさん

 会場内で異彩を放っていたのが、ブラジル出身の漫画家・モクタンさんだ。子どものころに『聖闘士星矢』のアニメを見たことで日本の漫画に興味を持ったというモクタンさん。高校生のときに1年間日本に留学し、その後、自国ブラジルの大学でアニメーションについて学んだあと、日本の大学院に進学。現在日本に住んで8年になるという。

 最近描いている漫画のモチーフは童話。制作に際して、その物語の原作に当たり、原作に則したストーリーで作品を描いている。

 例えば日本人もよく知る『赤ずきん』には、2匹の狼が登場していたり、『浦島太郎』の主人公・浦島太郎は竜宮城ではなく、不老不死の仙人が住むといわれる蓬莱山に登っていたなど、よく知る物語とは全然違うものが多い。また、現代人にも読みやすいように舞台を現代風にアレンジするなどの工夫もしている。

 作品は電子化もしており、Amazon Kindleストアで販売しているほか、運営しているWebサイトでも作品の一部を公開している。

rmfigbook3-10.jpg イラストや短編作品を読むことができる

rmfigbook3-5.jpg アニメータ―・木版作家の中村綾花さん

 美大で油絵や木版画を学びながら、アニメーション制作のアシスタントを経験をしていたという中村綾花さん。「人に作ってもらうとどうしても自分の思っていたものと違うものになる」といった理由から、絵や木版画だけでなく、映像も全て自分で制作しているというから驚きだ。

 「絵本作家」として参加している中村さん。どうやら今後は絵本の制作もやっていきたいというのだが、会場に映像制作のできる作家が少ないことから、仕事の話はもっぱら映像系のものが多いという。



地に足が着いたともいえるが、堅実な展示が多かった今年のEXPO

 今年の東京国際ブックフェアは、「電子出版EXPO」のほか、「クリエイターEXPO東京」「プロダクションEXPO東京」「コンテンツ制作・配信ソリューション展」「キャラクター&ブランドライセンス展」(これらは4日までの開催)といったイベントと併催されたこともあり、過去最高となる1530社が出展した。

 しかし、実際にブックフェアや電子出版EXPOの会場に足を運ぶと、ややさみしい印象も受ける。とりわけ、電子出版EXPOは各社のブースに混じってラウンジ(休憩所)も目立つ。資料によると、電子出版EXPOの出展社は49社。楽天Koboのようにブックフェアの方に出展しているところもあるとはいえ、これは少しさみしい数字だ(ちなみに楽天Koboのブースは、年内に開始予定とアナウンスしているセルフパブリッシングサービス「楽天Koboライティングライフ」の告知くらいしか興味を引くものがなかった)。

 Amazon.com、Apple、Google、ソニー、紀伊國屋書店などなど、出展していないストア事業者が多いことなどもさみしさを覚える一因なのだろう。ボイジャーやメディアドゥなど、最新の電子出版あるいは電子図書館関連のソリューションは人気だったが、そのほとんどは既報のもの。ブックフェアの方は、多くの出版社ブースで書籍が割引価格で販売されていることもあり、それらを求めて足を運んだ来場者も多かったようだ。

KADOKAWAの勢いは止まらない

 こうした状況のため、イベント期間中に大きな発表はないだろうと考えていたのをいい意味で裏切ってくれたのが、イベント初日の午前に行われたKADOKAWAとTwitterの発表だった。立花隆氏によるブックフェアの基調講演と同時間帯に会場内で行われたこの発表には多くの報道陣が押し寄せ、恐らくは期間中最も注目されたものとなった。

 具体的な発表内容は、「KADOKAWA、Twitterと協力しタイムライン上で電子書籍を閲覧可能に」で詳しく紹介したが、その骨子は、「各種情報コンテンツ、主にブラウザビューワで読むことができる電子書籍の閲覧サービスと、Twitterに当サイト内の特定のページ(主に作品詳細ページ)のURLをツイートすることで、Twitter上に前述のビューワとともに該当する電子書籍を埋め込むことができる技術」。平たく言えば、Twitterのタイムラインに電子書籍を埋め込んだツイートができる、というものだ。

tnfigexpoday3.jpg tw-epub.com(Tw-ePub)」上にある作品を埋め込んだ形でツイートして共有できる。ユーザーの多いTwitter上でこうした形で露出されることで、電子書籍の理解促進、あるいは購買につながる有効なものになるだろう。期待して見守りたい

 ツイートに画像や動画、リンク先のプレビューなどを表示できる「Twitterカード」の仕組みを拡張して実現したこの技術。6月には、Twitterカードをうまく活用し、Twitter上でGIFアニメを動かせるようにするWebサービス「GIFMAGAZINE」も話題となったが、今回は、電子書籍(EPUB)の表示を実現したのが目を引く。

 発表会に登壇したKADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏が語った「(編集者または出版社が)納得した本をつくるだけでよい時代は20世紀で終わった。これからはどう読んでくれる人を増やすか、読者とどう共有していくかが21世紀の出版に求められる」という言葉。昨年辺りに電子書籍業界でよくキーワードとして挙がった「ディスカバラビリティ」に通じるものがある。課題として点在していたトピックを線としてつなげ、業界を変えていこうとするKADOKAWAの意欲的な取り組みと言えるだろう。

 この発表後、オープンソースのブラウザビューワ「BiB/i」とDropboxを使って個人でも電子書籍の埋め込みツイートが可能であることを検証したユーザーなども登場している。KADOKAWAはこの仕組みをオープンなものにしていく意向だが、こうした電子書店以外の場所で電子書籍が読めるようにする仕組みの動向はしばらく注目したい。

HTML5ベースの電子書籍ソリューション事業を強化するシャープ

 セルフパブリッシングユーザーなども想定した出版サポートサービス「Romancer」を発表したボイジャーのブースは今年も多くの人でにぎわったが、ここでは、出版社など法人向けの電子書籍ソリューションを強化しているシャープにも触れておきたい。

 同社は、エンドユーザーへ直接電子書籍を販売する「ストア事業」(つまりGALAPAGOS STORE)と、電子書店を運営する事業者にビューワ技術や電子書籍関連ソリューションを提供する「電子書籍ソリューション事業」を展開しているが、今後、HTML5技術/ブラウザビューワを核としながら、法人向け提案の強化、そして他社アライアンスなどを図っていく考えだ。

 同社は、フィーチャーフォン向け、近年だとアプリベースの電子書籍プラットフォームの時代から、今日のブラウザビューワに代表されるHTML5技術を活用したデバイスフリーなクラウドプラットフォームの時代がきていると判断、これを第3世代の電子書籍プラットフォームと位置づけ、そこにしっかりコミットしていこうとしている。

 今後、法人向け電子書籍ソリューションを「EBLIVA(エブリーバ)」という新たなブランドで展開していくことを発表したシャープ。EBLIVAというのは電子書籍(EBOOK)と、英語の「Liberal(進歩的な)/Liberty(自由)」の語源であり、ラテン語だと「本」の意を持つ「Liber」を組み合わせた造語だが、そうした考えに沿ったソリューションを提供していくことで、導入する事業者を拡大させたいようだ。

 同社のブラウザビューワはこれまで、比較的大規模な事業者向けにパッケージとして販売されてきたが、今後は同社のコンテンツ配信サーバを利用するASP型のサービスも提供し、導入規模に応じた価格体系も用意するなどして、広い事業者のニーズに応えていく考えだ。

 ブラウザビューワは単純に読むだけなら便利だが、例えば文中の文字を選択してその意味を検索するなど、わたしたちがWeb上のコンテンツを見るときによくするようなこと、あるいは電子書籍のメリットとして主にアプリなどでは実装されているような機能はまだ使えないものも多い。シャープはその技術力で、そうした部分の改善ができると自信を見せている。ストア事業はそのショーケースととらえ、電子書籍ソリューション事業に注目するのがよいのかもしれない。

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