図書館での電子書籍貸出にまつわる課題

図書館での電子書籍貸し出し。図書館が支払うコストとユーザーの電子書籍に対するマインドセットはうまくバランスさせられるか。海外事例から。

» 2014年05月26日 17時30分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 正しい方向へ一歩前進するたびに、新たな問題の火種が生じる公共図書館での電子書籍貸出。かなり昔に提案されたソリューションとともに、著者や出版社の利益保護をめぐる最初の議論が行われてから数年が経過したが、電子書籍の貸し出しを行うことは、公共図書館を苦しめているようにすら感じられる。

 新刊本を電子書籍で借りるために利用者が図書館を訪れる必要のある英国での調査を目的とした最近のパイロットプログラムと、図書館向け電子書籍価格が数百%の暴騰を起こしているというリポートを考えると、どうしても図書館が攻撃を受けているように感じてしまう。しかしここで考えたいのは、無関心な行政や予算削減といった話ではなく、出版社自体だ。

 出版社に図書館向け電子書籍を一般消費者向け電子書籍と同程度の価格で提供するよう求める法案がメリーランド州とコネチカット州で提案されたのが2013年のこと。現状、図書館向け電子書籍の価格設定は、図書館が電子書籍貸出を完全にサポートするのがほとんど不可能なほど高額となっている。

 コネチカット州ダグラス郡図書館システムによる電子書籍価格に関する最近のリポートによると、一般消費者向けには10ドル弱で提供されている電子書籍の価格が、図書館向けではほぼ50ドルになるという。これに加え、図書館は単に電子ファイルを使用する権利を許諾されているだけで実際には本を所有しない事実が、図書館側のためらいとなっている。

 残念ながら、これらの法案は前進しておらず、幾つかの報告では、American Library Association(ALA:アメリカ図書館協会)はメリーランド州の法案に反対したという。

 図書館が直面する問題の一部は利用者にも由来している。一般的な消費者のデジタルマインドセットでは、電子書籍が貸し出しされるのを待つのが無意味に感じられるようだ。紙書籍を借りるのに、借り出しリストに喜んで自分の名前を書き入れるのと同じ人々が、自分のデバイスに電子書籍をダウンロードするのを待つことには不平を言う。

 幸いにも、電子書籍の借用(書籍を読了せずとも、あるいは読まずとも、電子書籍を借用する機能)は、クリックスルーやほかの書籍の購入増加につながっており、出版社に利益をもたらすことが研究では示されている。理想的には、それが図書館向け電子書籍価格を人為的に吊り上げておくための出版社の論拠の背後になければよいのだが。

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