本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載31回目は、司書見習いのサヤがやってきましたよ。今日、手にしているのはどの本でしょうか……。
街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
ミソノの好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って書架にメイドがやってきます。
ねえ、ミソノさん。突然ですけど、思いこみって怖いですよね。わたくしは小さいころ、ジャージー牛はコーヒー牛乳を出す牛だと思い込んでいて、大変恥ずかしい思いをしたことがあります。
茶色い牛さんからはコーヒー牛乳! あらー、かわいい!
でもでも、思いこみは悪いことではない! 思いこむことで面白くなる小説がある! ということで今日わたくしがお勧めするのはこちら、『ふちなしのかがみ』です。
ミソノさんは昔、こっくりさんをやったことはありますか?
あります……! みんなで硬貨に指をのせる感覚、ぞわぞわしますよね。
この本にはこっくりさんとか花子さんなど、誰もが知っている都市伝説などをモチーフにした、ミステリというかホラーというか、みたいな短編が6つ入っています。どれも面白いのですが、わたくしはやはり表題作の「ふちなしのかがみ」が一番のお気に入りです。
まあ、どんな内容なんですの?
「ふちなしのかがみ」は、主人公がある男の子に恋をするあまり鏡占いにはまってしまい、現実と鏡の中の境界があいまいになっていく――という話なのです……が、しかし! わたくしは完全にだまされていました。ミステリでは、わざと読者に誤解させたり、大事なことから目をそらさせたり、そういう手法が使われることがありますよね。この作品でもわざと誤解させるような表現が使われていて、わたくしは見事作者の術中にはまってしまったのです。
誤解したまま読み進めていくと、「あれ? あれれ?」とだんだん違和感が出てきて、違和感が疑惑へと変わり、最後には「そういうことだったのか!」という結末が待っています。まさに、してやられたという感じでしたね。だまされてくやしいんですけど、本当に見事で面白いといわざるをえません。うまいなぁという感想しか出てこないです。
そんなに見事にだまされてしまうの!? 展開の中に自然に組み込まれた叙述トリックは、最後に気付いたときに思わず膝を打ってしまうほどですが、そうですか、そんなにしてやられますか……。
わたくしがこんなことを言ってしまったので、読むときは疑いの目で読んでしまうかもしれないですよね。
もちろん、仕掛けはどこかしらー、とわくわくして読みますとも!
でもはじめて読むときはわたくしの言ったことなんて忘れて、できるだけまっさらな気持ちで読んで、ぜひともだまされてほしいと思います。
あら、あえてだまされるのですか?
そうです!そしてしてやられた感を味わったらもう一回読んでみてください。すると見逃していたいろいろが浮かび上がってきて、同じ小説でもまた違う楽しみ方ができます。一粒で二度おいしい!
思い込みだって悪いことじゃないですよね? 「ふちなしのかがみ」は思い込んでなんぼ、誤解してなんぼですよ!
誤解こそがお楽しみという訳ですか。どんなお楽しみが待っているか、作者さんとサヤちゃんの懐に飛び込む気持ちでご本に飛び込みたいと思います。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:30% サヤ:38%
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