本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。30回目の節目は、ミソノからのご紹介です。
すっかり木の葉も落ちたこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書メイドがいます。
ほんわりおっとりした司書メイド・ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。いつもは司書お気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってくるところですが、今日はミソノからオススメ返しをしているようですよ。
風が冷たくなりはじめるこの季節。おうちの中でぬくぬくしながら、冒険とスリルをご本で味わってみるのはいかがでしょうか。この間のレイラさんのオススメがスパイのご本だったので、今日は海賊の本を持ってきました。
古風な海賊姿! 『宝島』みたいね。
はい、表紙の海賊たちの衣装は飾りのついた丈の長い上着、木造の帆船……という具合に、クラシカルです。この本は1716年、北米の少年ジェイクが、航海の際に綴った日誌……という体(てい)になっています。
体……ですか?
少年ジェイクは叔父さんと一緒に塩漬けの魚を積んだ船に乗り込み、船乗りを体験することに。でも出航してみて分かったのは、船長はとんでもなくワンマンだし、船はご禁制の米やブランデーを取り扱う密輸を行っているし、早くも波乱の予感。しかも途中で叔父さんとは生き別れにされ、あげくは船が海賊に乗っ取られてしまいます。
なるほど、表紙はその時の様子ですね。描きこまれたイラストが味がありますね。
そうなんです。この本は子ども向けなので、大きな版型でカラー挿絵もいっぱいです。さまざまな海賊や船員が出てきますが、描かれたおじさん船員たちの表情が、脇のキャラまでちゃんと描き分けされているんです。
文章の方も、出航からの様子が丁寧に綴られます。揺れるハンモックで寝るのが意外と心地よいこと、船の帆の張り方など゜、新米船乗り少年ジェイクの目から見た新鮮なできごとが、いつの間にか読み手のわたくしと同化して、航海をいっしょに体験しているようです。食事状況、とくにパンの描写には「うぐっ……」と変な声が出そうになる事実を突き付けられますよー……。ちょっとここではお伝えするのがはばかられる衝撃的な事実ですが、これも貴重な食べ物だと思うと、イメージしていたさわやかな航海とは違う現実を目の当たりにし泣きたくなります……。
あら…ちょっとハラハラしますね……。
ええ。船が海賊に乗っ取られてからも、海賊のルールや内紛、船長の交代などめまぐるしく物語は進みます。でもその間に、くじらと遭遇して驚いたり、海賊と聞いてイメージする戦いだけでなく船旅の日常が書かれるのが緩急ついてます!
水夫に「こわがらなくていいんだ。あれはクジラっていうのさ」なんて、なだめてもらうさりげないやりとりにほっと一息。そうそう、船の修復のために海賊船や密貿易船が集う小島に降り立つ様子も、なかなかわくわくします。船底に取りついた貝をはらって、甲板を直して……と、海の上以外の様子もうかがえるのがリアルな雰囲気なんですよ。
リアルな「雰囲気」って言葉、なんだかひっかかるわね。
うふふ。お気づきになられましたか。実はこのお話、架空のお話なんです。
あら、ではフィクション小説なの?
そう言っても差し支えないでしょうね。でも、実際にあったことを元に書かれているので、とっても丁寧に船の様子、海賊のことを書いたこの本はフィクションとノンフィクションの境目にいるような雰囲気ですよ。
ページをめくっていくと、ジェイクの日誌もやがて終盤に。けれど船には嵐が近づいてきます! 荒れ狂う波、吹きすさぶ風。少年の行く末はいかに?! と、目が離せません。
何百年も前の船旅をおうちでのんびり体験できるなんて、いい時代になりましたねぇ。この大きな版型も、ゆっくりとページをめくるのに一役買っている気がします。物語と現実を行ったり来たりをどうぞ楽しんでみてください。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:30% サヤ:31%
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