紅茶にまつわる命がけの物語『紅茶スパイ』私設図書館シャッツキステ29冊目

本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。シャッツキステといえば、メイドたちの給仕してくれる紅茶。29回目は、ツンデレメイド・レイラがその紅茶にまつわる本を紹介します。

» 2013年11月15日 12時00分 公開
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 すっかり秋らしくなったこの街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書メイドがいます。

 ほんわりおっとりした司書メイド・ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。司書メイドの好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。

紅茶にまつわる命がけの物語『紅茶スパイ』

レイラ

ごきげんよう、ミソノさん。今日は11月1日の紅茶の日にちなんで紅茶の歴史を学べる、『紅茶スパイ』という歴史ノンフィクションをご紹介させて下さい。


ミソノ

ごきげんよう、レイラさん。まぁ、紅茶とスパイって、珍しい組み合わせですねぇ。


レイラ

これは19世紀の中頃、紅茶の輸入を中国に依存していたイギリスが、自国の領土(当時植民地にしていたインドのこと)で紅茶を生産するためにロバートフォーチュンという植物学者に依頼して、中国の茶の木や茶の種をプラントハンティングしてきてもらった時のお話なんです。


『紅茶スパイ』(サラ・ローズ著|築地誠子訳/原書房)
ミソノ

ああ、そういえばダージリンなどのインド紅茶は中国からお茶の木を移植して作られたって聞いたことがあります。


レイラ

そうなんです。紅茶好きにとっては基本中の基本とも言える知識なのですが、この「茶の木の移植」がどれほど危険で大変だったか、本を読んで理解が深まりましたし、冒険談としてすごく面白かったんです。


ミソノ

移植が危ないこと……だったんですか?! どんな風に危なかったんでしょう?


レイラ

まず、中国にとって、茶葉の輸出は国の大きな収入源だったんですね。なので、茶の木は門外不出の作物、茶の木がどんな木なのか? どうやって育て、どうやってお茶に加工するのか、その全てが取引相手の外国人に決して漏らしていけない最重要機密だったのです。


ミソノ

なるほど、つまり現代で言うところの産業スパイのようなことをしないと、イギリスは茶の木やお茶に関するさまざまな知識を手に入れることができなかったのですね。


レイラ

そうなんです。当時の中国は、港の辺りは開けていましたけど、茶の木が農作物として育てられている内陸の方はほぼ鎖国状態で、ロバートさんがイギリス人だとバレてしまったら、殺されても仕方がないような状態だったんです。


ミソノ

それは、とってもドキドキします! きっとページをめくる手も進むでしょうねー。


レイラ

うーん……実は、わたくしは今まで歴史小説もノンフィクションもほとんど読んだことがなかったので、歴史ノンフィクション独特の語り口がすごく読みにくく感じたんですよね。


ミソノ

あらまあ。確かに、ジャンルや訳者さんによって読みやすさの違いはありますね。好きな人はものすごく好きな一方、苦手意識持っている人がいらっしゃるのも分かります。

でも、今回はちゃんと読めたんですよね!


レイラ

はい! はじめて歴史ノンフィクションを最後まで読み終える事ができたんです。

内容はとても面白くて、早く読み進めたいのに、いつも読んでいるフィクション小説の時みたいなスピードが出なくてもどかしい、みたいな気持ちもあったのですが。


ミソノ

もどかしい……ですか……?


レイラ

多分、いわゆる『お決まりの流れ』がないからなのかなって、1冊読んでみて思いました。

例えば、この本の登場人物でいえば、中国で雇った通訳の人が小ずるい小悪人で、もう1人の荷物持ちの中国人とも仲悪くて、ロバートさんは散々な目にあうんですね。フィクション小説なら後でこのキャラは因果応報的な酷い目にあったり、もしくは小悪党ながらもどこか憎めない道化の要素があったりして読者のストレスを緩和するギミックが沿えられるではありませんか。


ミソノ

ええ、そうねぇ。


レイラ

でも、歴史ノンフィクションにはそういう創作は入れられない。なので、この通訳と一緒にいる間、読者のわたくしも何だかイライラ・モヤモヤとした気持ちになってしまうのですよね。


ミソノ

そうだったんですね。わたくしはそういう主人公の苦労がダイレクトに伝わってくるところもこのジャンルの良いところだと思いますよ。


レイラ

そうなんですよ、途中でその楽しみ方の違いに気付いてからは少しだけ読みやすくなりました。

あと、インドの植物園に勤めていた他のイギリス人植物学者たちが出てくるところは面白かったです。せっかく命がけでロバートさんが採集してきた茶の木の苗や種をダメにしてしまった人がいるのですが、こちらはその無能な植物学者と他の学者、東インド会社の人の手紙など、様々な視点からの資料が残っていたので、人物像に深みがある気がするんですよね。

ロバートさんからの視点でしか書かれてない中国人通訳は、ただの小悪党になってしまっていますが、無能な植物学者のように彼自身の手記みたいなものがあれば、また違った描かれ方をしていたのかもしれない、と思うと歴史の見方を捉えなおしてみようという気持ちになりました。これを機に歴史やノンフィクションジャンルをもっと読んでみようと思います♪


ミソノの好感度パラメーター

本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?

エリス:12% レイラ:30% サヤ:31%


本日のメイド

レイラ レイラ:森育ちのツンデレ魔女。お休みの日には愛猫とお気に入りの紅茶でまったり読書。好きなジャンル:文化 ゲーム ファンタジー 魔女 雑学
ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館

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