本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。26回目は、やなせさんの在りし日の姿を彷彿とさせる本をミソノがご紹介します。
この街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書メイドがいます。
ほんわりおっとりした司書メイド・ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
司書メイドの好感度を上げようと、お気に入りの1冊を持って、やって来るメイドもいますし、ミソノのお気に入りを知りたくてやって来るメイドもいます。
どうやら今日は、ミソノからメイドへ、本をオススメするようです。
アンパンマンのアニメの主題歌、「そうだおそれないで みんなのために 愛と勇気だけがともだちさ」という、あの印象的な歌詞をお書きになったのは、アンパンマンの作者やなせたかし先生です。今日は今月13日に亡くなられたやなせ先生の素敵な詩集を紹介したいと思います。
アンパンマン大好きでした。
しょくぱんマンとか赤ちゃんマンとか、キャラクターたちを好きなのはもちろん、歌が大好きで、本当に今でもメイド仲間とお片づけしながら楽しく歌ったり、よし頑張るぞ! という気分の時に聞いたりしていました。
そうそう、やなせさんは作詞家でもいらしたのですよね。
ええ。漫画家、絵本作家でもありながら印象的な歌も作詞され、また「詩」にも長く携わっていらっしゃいますね。
今日紹介する『たそがれ詩集』は2009年の発行で、やなせ先生は当時90歳!ご本人自ら「拡大鏡不要の大活字」とおっしゃる通り、はっきりくっきり大きなフォントで綴られた詩集です。これはお年を召した方にも読みやすいのではないでしょうか。暮れゆく時間「たそがれ」をご自身の年齢と重ねて表現されています。この「老年」の詩が、なんとまあ多彩な色合いを持っていることでしょう。
たとえば「老後のたのしみ」という詩では、思うようにならない体を次のように表現しています。
(中略)
耳は遠いし
眼はかすむ
まいにちあぶない
つなわたり
(後略)
具合の悪さをこんな風に楽しめるなんて! とびっくり箱からうきうきするものが飛び出たみたいな驚きです。老いや病にユーモアのエッセンスをやなせ先生がひとたらしすると、なんだかそれすらも「あはは」と笑ってしまって、ふっと心が軽くなります。
やなせ先生ご本人のイメージはいつも朗らかに笑ってらして、おしゃれをして歌って踊っている印象だったので、“お元気だなあー!”と思っていました。
こういった不調があるのかもなどと推し量ったことが一度もありませんでした…。
こんな風に表現してらっしゃることにただただ驚きと、ミソノさんの言うようにくすって笑ってしまうような気持ちになります。
こんな風に考えて生きていきたいって思います。
一方で、年をとっても仕事と向き合っていたいという気持ちもストレートに詩にされています。「なんにも案がうかばない」(「思案」)の文に添えられた先生の自画像(?)の顔の、なんと苦しそうなことか!あ〜だめだわー……ぜんっぜんだめだわー……と苦虫を噛み潰す時、キャリアやジャンルは関係ない! やなせ先生だって苦しみながら仕事なさってる! と、勝手ながらほっとして、自分もお仕事をがんばろう、と思えたのです。老いがテーマでありながら、仕事人にだって共感を呼んでしまうのでは?
年齢に関係なく、じんわりと来る内容なんですね……。
もちろん、『たそがれ詩集』ですから、終末を感じながら人生を振り返る思い出などを書いた詩もあります。ふるさとを思ってじんわりしたり、若いころを思い起こせばちょっぴりしんみりしたり……。これがまた、するりと胸の中に入ってきます。けして難解ではない、シンプルな、日常に馴染んだ言葉がリズムよく続いていて、その上、はっと心を掴まれる表現があって……思わず音読したくなりますよー。
胸を打つ詩を読むと、脳にぴかっと光りが差したみたい。たそがれどき、とても見事な夕焼けに出会った時のように、思わず足を止めて、空を見上げるような詩集です。
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エリス:12% レイラ:28% サヤ:21%
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