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» 2013年09月11日 11時00分 UPDATE

ラノベだけじゃない! BOOK☆WALKERが“フロア増床”リニューアル

KADOKAWAグループのブックウォーカーが電子書店「BOOK☆WALKER」を大幅リニューアル。そのリニューアル内容とそこに込められた意図について、ブックウォーカー取締役CTOの橋場一郎氏に聞いた。

[鷹野 凌,ITmedia]
BOOK☆WALKER新トップページ BOOK☆WALKER新トップページ

 KADOKAWAグループのブックウォーカーは9月11日、電子書店「BOOK☆WALKER」を大幅リニューアルした。従来の固定された「総合トップ」ではなく“行きつけのフロア”がトップページになる点と、リアル書店の平台のような「棚」表示によって思いがけない本と出会える“場”を目指しているのが大きな特徴となる。今回のリニューアルに先立ち、ブックウォーカー取締役CTO サービス開発部兼サービス企画部 部長 橋場一郎氏に話を伺うことができたので、併せて紹介したい。

今回のリニューアルは、“フロア増床”

tnfigel005.jpg ブックウォーカー取締役CTOの橋場一郎氏

 2010年12月にオープンしたBOOK☆WALKERは、当初はKADOKAWAグループ10社のコンテンツだけを配信していた。グループで大きなシェアを占めるライトノベルを全面に押し出すことで、ユーザーに“専門店”のイメージを浸透させてきた。2013年4月にはアプリの累計ダウンロード数が100万を突破するなど、これまでの取り組みはユーザーから一定の評価を得ていると言えるだろう。

 しかし、グループ外出版社との提携を拡大した結果、現在ではライトノベルの配信比率が全体の約14%になっており、グループ外のコンテンツが約70%を占めている。それにも関わらず、従来のストアはライトノベル推しのままになっており、「いちげんさんには入りづらい店になってしまった」と橋場氏は語る。そこで今回のリニューアルは、“ライトノベル中心の専門店”という部分は残しつつ、コミック、文芸・専門書の“フロア増床”を図ったという。


tnfigel001.jpg 1号館はライトノベル中心
tnfigel002.jpg 2号館はコミック中心

tnfigel003.jpg 3号館は文芸・専門書中心
tnfigel004.jpg 従来の「総合トップ」はライトノベル色が強かった

 これらのトップページは、“行きつけのフロア”のようにユーザー自身が任意で決められるようになっている。秋葉原のいわゆる「オタク」向け専門書店と、新橋や八重洲のサラリーマン向け総合書店とでは、並べている書籍のラインアップがまったく異なるが、1つの書店でもフロアが異なれば間口が広がるのではないかという発想だ。

毎日足を運んでもらえるような、なじみの書店になりたい

tnfigel006.jpg トップページにはBOOK☆WALKERのスタッフのオススメが棚別にずらっと表示される

 また、欲しい本があるときや、セールのときだけではなく、「会社や学校の帰りに何気なく立ち寄るような、なじみの書店になりたい」(橋場氏)という考えもあったそうだ。そして、リアル書店の書店員が本の並べ方にこだわるように、電子書店も本の並べ方にこだわるべきではないだろうか? という発想へたどり着いたことを明かす。書籍の表紙は長年かけて磨かれてきたアピール手段なのだから、例えば書影表示を従来より大きくするなど、ユーザーの目に留まりやすい工夫を心がけたそうだ。

 膨大な作品から自分に合ったものに出会う難しさは、近年、「discoverability(ディスカバラビリティ=発見される能力)」などの言葉でたびたび話題となる。上述したデザイン上の変化に加え、サービスとしてそれらをどう提供していくかについて橋場氏は、「自動でリコメンドする仕組みを否定するつもりもないし活用もするつもりだが、膨大な取り扱い点数と購入履歴の積み重ねに基づくものなので、現段階では仕組みとして弱いように感じられる」とし、まだ今は、人の手を介在させることで『思いがけない本との出会い』を演出する方が効果的だと判断しているという。

 また、ただ安価に提供することに橋場氏は否定的だ。それは、「本は嗜好品で代替性が低いので、いくら安くしたところで『要らない』と思われたら売れない」という明確な理由からだ。1冊1冊をしっかり売っていくしかない中、例えば「著者買い」や「レーベル買い」「ジャンル買い」といった、「context(コンテクスト=文脈とか前後関係といった意)」が重要なポイントの1つになるだろうと話す。

 そこで、今回のリニューアルでは、現在配信している約4万5000点のコンテンツをすべてチェックし直し、従来の「カテゴリ」や「ジャンル」「レーベル」とは別に、約200種類の「タグ」を付ける作業を行ったそうだ。例えば「鉄道」というタグが付いている本は、実用書の時刻表ガイドはもちろん、西村京太郎氏のトラベルミステリーまで及ぶという。

 そのタグ付けが、左図のような、トップページにずらりと並んだ「棚」にも活用されている。この非常に縦に長いトップページは、書店をぶらついて思いがけない本と出会えるような場所を目指した結果だそうだ。通常、こういったインターネットショッピングのサイトはトップページの滞在時間が極めて短いが、本好きな人がリアル書店へ1日1回立ち寄るのと同じように、毎日訪れて上から下まで眺めて楽しめるようなトップページにしたいという。

 このタグ付けは、今後は出版社の編集担当者の意見も取り入れ充実させていく予定だという。一般的な電子書店では、取次や出版社の電子化部門とのやり取りが中心になってしまうが、ブックウォーカーは出版社が母体ということもあり、書籍の編集部や著者との距離が比較的近いらしい。それが「きせかえ本棚」や、購入特典のカバーイラスト集や小冊子といった独自の機能や企画にも結びついているとも言える。

 編集部や著者との近さとともに、「読者との近さ」もポリシーにしていると橋場氏は語る。TwitterやFacebookはもちろん、2月に行われた「BOOK☆WALKER 感謝祭」のようなリアルイベントも、積極的に行っていきたいそうだ。今後のBOOK☆WALKERの動きから、ますます目が離せない。

著者プロフィール:鷹野 凌

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 フリーライター。ブログ「見て歩く者」で、小説・漫画・アニメ・ゲームなどの創作物語(特にSF)、ボカロ・東方、政治・法律・経済・国際関係などの時事問題、電子書籍・SNSなどのIT関連、天文・地球物理・ロボットなどの先端科学分野などについて執筆。電子書籍『これもうきっとGoogle+ガイドブック』を自主出版で配信中。

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