Amazonの義務とは?

世界最大のオンライン書籍小売企業であるAmazon。実書店の死を招く不安から出版業界では同社を「悪の帝国」とみる向きもあるが、同業他社よりも高潔であることをどこかで義務付けられているのだろうか。

» 2013年09月06日 15時00分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
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 世界最大のオンライン書籍小売企業であるAmazonは誰もが嫌う企業としてのステータスを長らく享受してきた。出版業界内での「悪の帝国」というニックネームは、同社の短期間での急激な成長、そして広く出版・消費サービス業界を支配する能力を考えると当然のようでもある。

 もちろん、この巨大企業が毎月のように新たな分野へと事業拡大しているニュース――今夏だけでオンラインアートギャラリーとプリント版新聞へ事業拡大――は、業界ウオッチャーに恐れ以上のものを感じさせているに違いない。Amazonが触れるものはすべて――少なくとも表面上は――黄金に変わるようだ。

 しかし、1つ厄介な問題がある。誰もがAmazonをそれほどまでに嫌うのなら、同社はどのようにしてこれほど巨大になったのだろうか。

 Amazonと同社の商慣行について冷笑する向きがあるとすれば、消費者は偽善者なのだろうか。人々は悪意ある強い言葉で書かれたブログエントリや記事、あるいは最近の米国書籍販売協会会長の脅迫めいた公開状の中でオンライン小売のトップ企業を攻撃し、一方で25ドルを超えるオーダーを無料配送してもらうため、夜の暗がりにまぎれてAmazonへの注文を行うために夜更かしするのだろうか。

 確かに、Amazonが実書店の死をつかさどることになるという懸念は正当なものだ。Amazonがこれまで出版されたほとんどすべての本を翌日配達できるなら、誰が独立系書店をひいきにするだろう。顧客はAmazonではなく地元の独立店書店を選ぶと想像するのは非常に高潔だが――ところで、Amazonは自宅勤務する体の不自由な米軍兵士と配偶者を雇用するためのプログラムを展開している――すべての人が同じ選択をするわけではない。

 わたし自身は自宅から1番近い書店が隣町にある地域に住んでいるが、その書店は大手書店チェーンの1店舗で、自主出版タイトルの在庫を拒否している。Amazonに向けられる怒りの真実は、同社がそうした自主出版へのアクセスを提供していることが背景にある。書籍の価格から読者に販売する作品まですべてをコントロールしてきた100年の歴史を持つ出版業界の能力をはぎ取ったことで、Amazonは幾つか強力な敵を作ってしまい、悪の帝国を打倒しようという勢力は米国法に抵触することさえ顧みないほどだ。Amazonは自社で抱える従来型の出版部門すら批判されており、とりわけ著者への著作権料支払いを旧来の古くさい四半期ごとではなく、自主出版著者への支払いにならって月ごとに行うことを選択したことがそのやり玉に上がっている。

 Amazonの批判者にとって価値があるかもしれないのは同社の税金問題だ。Amazonは売上税の徴税に関して、多くの州が訴訟を検討するほどの問題に直面している。なぜOverstock.comへの税金が問題にならないのか。なぜTiger Directへの税金が問題にならないのか。AmazonのPRチームのリップサービスかもしれないが、同社は議会がオンライン小売企業対象の米国全土向けの税法案を可決すれば、売上税の法的規制に従うとしている。好むと好まざるとにかかわらず、Amazonは現状有効な税法に従って業務運営を行っており、同社は州内に物理的拠点があると主張するために利用していた関連会社のステータスも解除した。Amazonが50もの売上税コードを採用する見込みはなく、政府が全国対象の統一規制を可決すればそれに従うと述べており、これは繰り返しに耐える。

 もちろん、このことはAmazonがなぜ何らかの方法で欧州の税法を回避しているかの回答にはならず、その事実が独立系書店を煮えくり返らせている。それらの訴訟にも価値があるかもしれないが、欧州の各国政府はほかの方法を検討している。GoogleやAppleなどほかの外国企業への対処のように。

 さて、Amazonはほかの企業よりもましではないとして、では本当に悪なのだろうか。米国の消費者が喜んでひいきにしているほかの大手小売企業と同じように業務運営を行っているなら、なぜAmazonはそれほどまでに悪なのだろうか。同業他社よりも高潔であることをどこかで義務付けられているのだろうか。

 Amazonに遠慮ない批判を向ける者が誰であれ、同社のアカウントを保持していて、それゆえに帝国の誕生に寄与したかどうかを知るのは興味深いかもしれない。

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