生きて行くってそういうことよね――『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』私設図書館シャッツキステ18冊目

本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。本好きな二人のやりとりはまだまだ止まらないようで……。

» 2013年08月30日 12時00分 公開
[ITmedia]
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 街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。

 そこには書架を守る司書メイド、ミソノがいます。

 ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。

 いつもはメイドたちからミソノに本をおすすめしていますが、今日は先日のお礼にと、ミソノからメイドへ、本をおすすめするようですよ。


生きて行くってそういうことよね――『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』

ミソノ

先日は、レイラさんがたった2分間で楽しめるミステリの本を紹介してくださったので、今日は逆にじっくり腰を据えて読む本を持って来てみました。

200年前、イギリスの海辺の町に実在した、「化石婦人」のお話です。


レイラ

化石婦人! なかなか気になるタイトルですね。


ミソノ

 夏、リゾート地としてにぎわう小さな町に、化石を売る一件のお店がありました。奇妙な模様の石が動物の化石なのか、植物の化石なのか、それすらもはっきりとしていないまま、インテリアグッズとしてお土産に買われて行く……そんな時代、町で魚竜の化石が発掘され大ニュースに。世界初の魚竜化石の発掘。それを成し遂げたのは、家業のために化石拾いをするたった13歳の無学な少女でした。彼女はそれを皮きりに、次々と貴重な化石を掘り出し、自然科学界に多大な貢献し「化石婦人」と呼ばれることになるのです。

 ……と、ドラマチックな展開は本当のお話。少女と化石というモチーフは、なんだかとってもぐっとくる組み合わせですねぇ! この本の他にも彼女をモデルに絵本や小説が出ています。かく言うわたくしも児童向けの小説『海辺の宝もの』で彼女、メアリー・アニングのことをはじめて知りました。海辺で化石が拾えるという環境、しかもそれが大発見で……とすごい展開にわくわくして、もっと詳しいことを知りたくなって、彼女の生涯を追ったノンフィクション本『メアリー・アニングの冒険』を開いたのです。

『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』(吉川惣司|矢島道子/朝日新聞社)

 ところが読んでみたら、彼女は思ったよりもずっとずっと化石オタクな女子だった! 少女から女性になり、晩年になっても化石を拾い続ける日々。生物の進化や化石の具合について、専門家と丁々発止とやりあうまでに知識をつけます! しかもそれを売りさばくのが彼女の生きる糧ですから、身分のお高い研究者の奥さまとネットワークを繋いで、さりげなく、それでいて「がっちり化石を売り込んでいきますとも!」と、「可憐な少女が偶然化石を拾ってラッキー」なきらきらしたメアリーちゃん像とは違う、頼もしい彼女の姿を知るのです。そして、生涯独身を貫き、晩年はちょっぴり偏屈な雰囲気をまとってしまう……それすらも、幼い時から自分の腕で稼ぎ続けた彼女の背中が見えるようで、なんだか愛おしくなりました。

 本書は翻訳ではなく、お二人の日本人による共著です。矢島さんは古生物学の理学博士、吉川さんは「ルパン三世 ルパンVS複製人間」の監督さんで、「ボトムズ」の脚本家さんです! 異色の組み合わせですが、あとがきを読むと、著者の方がいかに熱心に、そして異国の「化石婦人」に対して誠実に取り組もうとされたかがひしひし伝わってきます。

 馬車が町を闊歩していた頃に、化石とは何かを追い求めた人たちがいたんですねー。とはいえ、レイラさん、自然科学とか進化論ってなんだか遠い話のような気がしませんか……?


レイラ

そうですね。自然科学は嫌いではありませんが、進化論は中等学校で習う程度の知識しかないので、興味がありつつも未知の世界ですねぇ。


ミソノ

あら、興味がおありならきっと、馴染みのある研究者のお名前が載っていますよ! 

本書にはダーウィンやアガシといった著名な研究者がメアリーとご縁のあったエピソードも語られます。たくさんの研究者たちとやりとりする彼女の姿を追ううち、自然科学が形作られていった時代が、メアリーを通じて読み手の自分と繋がるような気持ちで、するりと頭に入ってきました。

ミステリー小説の謎とはまた違いますが、「化石」という過去からのメッセージを受取ったメアリーさんと、進化の謎に迫ろうとする人々の姿をじっくり読んでみるのもまた楽し、ですよ。


ミソノの好感度パラメーター

本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?

エリス:12% レイラ:28% サヤ:21%


本日のメイド

ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館
レイラ レイラ:森育ちのツンデレ魔女。お休みの日には愛猫とお気に入りの紅茶でまったり読書。好きなジャンル:文化 ゲーム ファンタジー 魔女 雑学

推薦本/『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』 (朝日選書

吉川惚司 矢島道子 朝日新聞社

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