とつとつとした語り口が心地良い『ぼくは恐竜造形家――夢を仕事に』私設図書館シャッツキステ14冊目

本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載14回目は、どうやら先週の続きみたいですよ。

» 2013年08月02日 12時00分 公開
[ITmedia]
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 この街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書メイド・ミソノがいます。

 先週の特撮本の紹介を受けて、今日はミソノからメイドへ、本をおすすめしているようですよ。

とつとつとした語り口が心地良い『ぼくは恐竜造形家―夢を仕事に』

ミソノ

この間は、フミカちゃんが熱い特撮への想いを交えて素敵な本を紹介してくれました。

今日は、わたくしからフミカちゃんへ。一緒にこの本を見てみませんか?

こちらは、恐竜の模型を作る「恐竜造形家」さんのご本です。


『ぼくは恐竜造形家――夢を仕事に』(荒木一成/岩崎書店)
フミカ

うわあ! ミソノさん、わたし、恐竜も大好きなんです!!

小さい時に『恐竜家族』という恐竜のファミリーのドラマをずっと見ていて、また『ドラえもん』にも度々恐竜が出てくるので、恐竜には愛着があるんです!


ミソノ

あら良かった!


フミカ

わたしのスマートな電話にも実は“恐竜図鑑”を入れている程でして。


ミソノ

 この本の著者さんも、恐竜にとても愛着を持っていらっしゃって、小さな食玩フィギュアから、大きな博物館の模型まで……雑誌「ホビージャパン」で連載もされていた、その筋では著名な方が、子ども向けに書かれた本です。

 恐竜にはまった少年時代から、「かっこいい恐竜の模型が欲しい」→「売っていない」→「なければ自分で作ればいいんだ!」と模型作りをはじめた様子、スターウォーズにはまって模型作りにますますのめり込む青年時代、けれど職業は鍼灸師に!? と、著者の歩みがその時々の時代の移り変わりを感じさせながら書かれています。

 例えば、恐竜。

 肉食恐竜は、大きな後ろ足と尻尾で立ち上がるスタイルと考えられていた時代もありました。荒木さんの子どもの頃は、怪獣図鑑に恐竜も混同して載っているような時代。でも今は、尻尾もひらりとした前傾姿勢のシルエットです。

 図書館界でも「恐竜の本は新しいのを意識して揃えないと、時代に置いていかれる」と言われるほど、発覚した新事実がすぐに広まるジャンルなんです。

 この本の中でも「恐竜の発見や研究発表は毎日のようにあり、新しい発見があれば、今までの常識が180度変わってしまうこともあります」と書かれていて、それが模型で起こるとどうなるか……「ぼくのように恐竜模型を作っている人間にとっては、前に作った模型が全否定される瞬間でもあります」……全否定ですよ!

 けれど荒木さんはそれを「恐竜好きの醍醐味」とおっしゃって、楽しんでいらっしゃるのがすごい!

 「恐竜模型家」なんて仕事で生きていけると思ってもみなかった荒木さんが、恐竜と模型を慈しんで過ごしたこと、そして鍼灸師という自身の仕事を辞め、趣味だったはずの「恐竜模型家」に全力投球すると決めたこと……。

 この本は荒木さんの「自分の経験を話すことで、何か子どもたちの役に立てたら嬉しい」という気持ちの通り、自身の歩みが綴られていて、わたくしはこの本から、地に足をつけて生きてきた楽しさを感じるのです。

 楽しいことばかりが書いてあるわけではなく、辛いことをドラマチックに盛り上げているわけでもなく。

 少年少女が読むのにぴったりな、余計な装飾のない、それでいてお人柄が分かるような柔らかな文章は、大人にもさらりと染み込んできます。

 恐竜と造形のエピソードに「ふむふむ」と頷いて読み進めれば、読後は「いい人生を送ったなぁ……」と自分自身の人生が充実した気すらしてしまうのです。(荒木さんはご存命です!)

 この時期の少年少女の夏休みの読書感想文にもおすすめですよ。フミカちゃん、特撮と近しい関係の「模型」からも楽しみを見つけてみませんか?

フミカ

模型もずっと作ってみたかったんです!

模型を作るために、随分前から星のマークが2つ付いたエプロンは持っています(笑)


ミソノ

準備は万端ですね。このご本にはちゃんと恐竜制作の手順も掲載されているので、即座に取りかかれそうですよー。


フミカ

楽しみです!!


ミソノの好感度パラメーター

本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?

エリス:12% レイラ:21% サヤ:17%


本日のメイド

ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館
フミカ フミカ:本日のゲストメイド。特撮大好き。

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