本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載12回目は司書メイド・ミソノの意外な一面が見られます。
街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイド、ミソノがいます。
誰も来ない午後。読書を満喫しようと思ったら……元気メイドがやって来ました。今日はミソノから元気メイドへ、本をおすすめするようですよ。
ごきげんよう! ミソノさん!
あら、ごきげんよう、リオちゃん。
ちょうどよかった。少しこの本を見ていきませんか?
わー、どんな本ですか! えっ、これってもしかして…!?
そう、この本、『いきものアートシリーズ5 鍬形』はその名の通りクワガタの写真集です。
でも、本の内容の前に、シリーズについて、少しお話ししますね。
この「いきものアート」シリーズのラインナップは、蛙、蜥蜴、淡水類、鍬形、兜虫…と続いています。ほら、本の背を見てください。各巻、透明感のある鮮やかな一色を基調として、すっきりしたフォントでタイトルが書かれていて、なんだかおしゃれなんです。わざわざ漢字で「蜥蜴」なんて書かれる格好良さも合間って、ふらりと手が伸びます。
けれど……実はわたくし、両生類が少々苦手なんです。
一巻目の蛙をパスし、蜥蜴も避けて、三巻目の『淡水類』なら、とページを開いたら、どーんとカエルさんの写真が! ……うっかり書架の間で叫び声を上げてしまうところでしたよ……。でもそこでやめずに『兜虫』に手を伸ばしたのは、さっき見えてしまったカエルさんのお写真がとってもリアルだったから!
写真なのにリアルって妙でしょうか。でも、あのちらりと見ただけで目に焼きつきそうにぬめりを帯びた写真に心を惹かれて……。
どきどきしながらページを開くと、「はい、カブトムシです!」と主張するような兜虫のアップ写真がどどんどーんと繰り出されました。
それがまた、リアルなんです。つやつやしているんです。THE昆虫! なんです。
薄い紙の中に、すぐそこまで虫が迫っているようで、ちょっと苦手なジャンルなら、もうノックアウトされそうな生々しさに溢れています。
「カブトムシですら、生々しすぎるとは……」とおののきながらも、わたくしは懲りずに『鍬形』の巻に手を出しました。すると、どうでしょう! 心臓に優しい!
実物よりも拡大されて、こちらに迫ってきそうなハサミの迫力、ふさふさした毛をたたえた口元、時に緑がかった羽のふち……そんなものをまじまじと、心ゆくまで楽しむことができるんです。これはひとえに、クワガタのマットな質感から生み出される安心感ではないでしょうか。そのマットな質感を感じられるのも、ぐぐっと近くで撮影された写真だからこそですね。
意外なほど丸みがかったクワガタのハサミをじっくりと楽しみながら、読み終えると、ほっと満足の息をつきました。昆虫の生々しさと、造形の美しさを絶妙なバランスで楽しめます。
最後のページには、掲載されているクワガタの種類がすべて掲載されているのも嬉しいですね。
リオちゃんもこの夏、クワガタと出会いがあったのでしょう?
流石ミソノさん! 鍬形の魅力をよく分かっていらっしゃる!
そうなんです。わたくしのお家にいるのはノコギリクワガタ(ジョー)なのですが、ゼリーを食べる姿も、土に潜る姿も、すべてが愛らしく可愛いのです! 明け方カゴを覗くと、元気いっぱい背伸びをしているところも見ていて癒されますよ! わたくしと目が合うとピタッと静止してこちらの様子を伺っています。力持ちなところは私が大好きな輸送機と同じですね! そうだ! この機会にミソノさんも鍬形とお友達になりませんか? わたくし、鍬形がたくさんいる場所を知っているんですよ!
まあ、素敵……。実物の横でこの本を読むのも贅沢ですね!
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:21% サヤ:17%
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