本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。連載10回目は、おやおや、またしても私設図書館シャッツキステの司書・ミソノの独り語りです。
この街の片隅に、メイドが営む私設図書館がありました。そこには書架を守る司書がいます。
その図書館の書架の一角。いつもはミソノをめぐる争いが繰り広げられ、賑やかですが、どうやら今日は誰も書架には来ないようです
今日、ミソノが開いたのは、手に取るとずっしりと重たい図鑑、『駅の図鑑 JR全線・全駅舎』です。このシリーズは、「東日本」「西日本」の二冊が発行されていて、内容は、その名のとおり、北の路線から南の路線まで、ただひたすらに駅舎の写真が並んでいます。
どのページを開いても、駅・駅・駅。淡々と並んだ駅舎の写真。図鑑だけに、それぞれの写真はそんなに大きくないのですが。
……でも、それがこんなにもわくわくするなんて。ぱらりと開いたページで偶然出会う、小さな駅の魅力的な佇まいと言ったら!
例えば室蘭本線の旭浜駅。「駅舎」の図鑑と銘打ちながら、極端にもその駅には駅舎がありません。コンクリートのそっけないホームには、駅名の書かれた看板が立っているだけ。
けれどその向こうには緑の草葉と、遠くの山影……。小さな写真に添えられた、「周囲は平原が広がり、人家はまばら」という短い文章がまた想像を掻き立てます。
どんな場所かしら、どんな人がここで下車するのでしょう。ページをめくる手を止めて、この駅に列車がやってくるのを待つような気持ちで紙面を眺めます。
1つ1つに駅名、開業日、所在地のデータとコメントが添えられ、大きな駅はこころもち大きな写真で紹介されています。けれど、序文の中で交通写真家がおっしゃっているように、この本は2003年と2004年に発行されたので、もうずいぶん変わっている駅も多いのでしょうね。
以前、私設図書館にこの本を持ち込んで紹介した時がありました。本を読んだ方から「懐かしいなぁ、故郷の駅が載っています」とか「この駅をいつも使っていますが、雰囲気が違いますね」などとあれこれお話を伺ったことも思い出します。
じりじりと照りつけはじめた日差しの中、ふいに列車の切符を買ってその駅に会いにいきたくなるような、そんな本です。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:12% レイラ:21% サヤ:12%
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.