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» 2013年04月08日 14時45分 UPDATE

KoboとSonyは電子書籍の競争でなぜ形勢不利なのか

今後数年でソニー、Kobo、Barnes & Nobleが存在感を失っていく可能性があるが、今日はその理由を探っていこう。

[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 ソニーとKoboは現在のハードウェアおよび電子書籍販売のビジネスモデルに大きな問題を抱えている。意味のあるコンテンツと買収を欠いており、両社は競合に大きく遅れを取っている。昨今、顧客ロイヤルティーと信頼を獲得する手段として電子書籍を提供するだけではもはや不十分だが、ソニーとKoboは実質的にコミュニティーを持たず、コンテンサーチ機能でも遅れを取っている。今後数年でソニー、Kobo、Barnes & Nobleが存在感を失っていく可能性があるが、今日はその理由を探っていこう。

 先週、米Amazon.comは書籍コミュニティーサイト「GoodReads」を買収した。今年はじめ、Amazonは音声認識システムIvonaも買収している。さかのぼれば、Amazonは2008年、インディー系出版社のレアな古本の供給者であるAbeBooksも買収した。この買収により、AbeBooksが40%の株式を取得しているShelfariの競合企業LibraryThingの株式も手に入れた。Amazonはこうした買収で得られた技術をKindleで提供しているX-Ray機能として活用している。Audibleも忘れてはいけない。

 Koboはその前身となるShortcoversの立ち上げ以来、意味のある買収をまったく行なっていない。これまでに買収した唯一の企業はフランス拠点のAquafadasで、Koboはコミックの自主出版をサポートするためKobo Writing Lifeへ統合する予定だ。

 Koboのエコシステムが抱える欠点の1つは、すでに名の知れたソーシャルネットワークに依存していることだ。現在、KoboはPinterest、Facebookと統合されており、本のレビューをGoodReadsのAPIを利用して引き抜いている。Kobo Voxの発売時はアプリダウンロードにGetJarを利用しており、同社がGoogle PlayへのアクセスでGoogleと合意に至るまで続いた。Koboは適切なコンテンツサーチをサポートをする技術をほとんど自社では開発してこず、代わりに、サードパーティー製の技術を利用している。公平を期すならば、KoboはPulseとReading Lifeを自社開発したが、ユーザーがPulseのコメント/ディスカッション機能を活発に利用しているとは言いがたい。

 ソニーはより嘆かわしい状況に陥っており、過去3年でコア市場でのシェアを失い続けている。2011年に、同社製品はカナダで販売された電子書籍リーダーの28%を占めていた。2012年に市場シェアは18%にまで落ち込み、2013年第1四半期にはさらに12%まで落ち込んだ。

 ソニー不振の主な理由として、新製品と意味のあるユーザー体験の不足が挙げられる。過去、ソニーは年間3モデルの電子書籍リーダーを発表していたが、ここ2年は年間1モデルを発表するに留まっている。ソニーもコンテンツに関してはサードパーティーに依存しており、自ら災いを招く結果となっている。同社はGoogleとPRS-T1上で書籍を直接販売する契約を結んだが、Googleがシステムを変更しGoogle Playにすべてのコンテンツを集約したことで、ソニー製の電子書籍リーダー上ではGoogle Playからの書籍購入はできなくなった。新型のソニー製電子書籍端末を購入して、初回利用時にGoogle Booksのアイコンをクリックするとエラー表示しかされないことを想像してみてほしい。PRS-T2はEvernoteとOverdrive Library貸出機能を統合した点では良い製品だった。ソニーは基本的に電子書籍リーダーと電子書籍を捨てているが、引き続き製品の販売とWebサイトの更新を行なっている。

編注:上述した機能は主に海外モデルの話である

 ソニーとKoboは今後数年で市場から消え、米国、カナダ、英国で市場シェアが落ち込む可能性が非常に高い。その理由は何だろうか。それは電子書籍の価格でも新刊タイトルの入手可能性でも、無料のハリー・ポッター本でもない。ユーザーは意味のある体験を提供し、ほかにはないソフトウェア機能を持つエコシステムに引き寄せられる傾向にある。AmazonはX-Ray、Ivona、音声機能付き辞書、Prime加入により毎月提供される無料電子書籍、大量の書籍を検索可能なネットワーク、自社で保有する出版社、キュレーションされたアプリストアなどを備えている。Amazonはオーディオブックを販売する唯一の企業でもある。顧客がAmazonの電子書籍リーダーとタブレットに引き寄せられるのは、他とは違うからだ。

 筆者は自社でハードウェアを製造し、デジタルコンテンツを販売する企業の電子書籍リーダーの未来を懸念している。それらの企業は魅力あるソーシャル体験を提供しようとサードパーティーに過度に依存しており、自社で技術開発を行わず、自社のエコシステムに組み込み得る技術を持ったニッチ企業の買収も行わない。

 これらの結果、売り上げの落ち込みにより最終的に自社技術のライセンス提供を行おうとする日が来ることを筆者は懸念する。低電力で動作するディスプレイが次に来る技術と言われたころのことを覚えているだろうか。Bridgestone、Plastic Logic、Pixel QI、LG Flexible e-Paper、Liquavistaなどの企業を覚えているだろうか。これらすべての企業は自社デバイスを製造しようとして、他企業へ自社技術のライセンス提供を行うことになったが、すべて失敗した。これがAmazon以外の電子書籍リーダー製造企業の未来ではないかと筆者は懸念している。

 Koboがこれからの未来で生き残るためには何ができるだろうか。筆者はOverdriveの50%以下の株式を取得し、SDKをすべての電子書籍リーダーへ組み込みようにお勧めする。これによりアイルランド、米国、カナダ、オーストラリアなどのユーザーが図書館で無料で電子書籍を借りる際に幾つもの関門をクリアする必要はなくなる。

 あるいは、Autographyの買収もよいかもしれない。この企業は著者が電子書籍にサインできるユニークなシステムを開発しており、Writing Lifeと組み合わせれば、ブックツアーとの親和性も高く、自社出版プログラムを過密な市場の中で際立たせることができるだろう。あるいは、あえて困難を選択し、iOSアプリを通じて売り上げの一部をAppleに提供するのもいいかもしれない。Appleの顧客は世界中のどのモバイルOSの利用者と比較してもコンテンツに金を使う傾向にある。Amazon、Kobo、Barnes & Nobe、ソニーなどの主要企業はアプリ内で書籍を購入できる機能を廃止し、アプリ内購入ごとに手数料を徴収するAppleに抵抗している。まず、Koboはより多くの書籍を販売する必要があり、Cloud Reader経由ではなくiOS内でそれらを販売するのが正しいやり方だ。VookやARC、および将来販売予定のタブレットでエンハンスド電子書籍をサポートするのもいいかもしれない。Amazonがこれらをサポートするのは時間の問題だ。

 最後に、Koboは自社ソーシャルコミュニティーを開発する必要がある。Koboは自社サイトにフォーラムすら持たない。代わりに、Koboの管理者チームはMobileReadのような人気のあるWebサイトを訪問してユーザーからのフィードバックを受け、交流を行なっている。

 ソニーは、逆に非常な苦境にある。同社で優先順位が高いのは広報活動を行うために適当なPRエージェンシーと契約することのはずだ。ソニーは最近、Reader StoreにEPUB 3児童書セクションを新設した。AndroidアプリでもEPUB 3をサポートし始めた。こういったことをソニーがメディアに通知したと思うだろうか。否、ソニーはすべてを秘密理に行い、ジャーナリストにニュースを拾い上げさせるままにした。ソニーも月ごとに特定の本を取り上げるブッククラブを開設しているが、まったくプロモーションを行なっていない。

 また、ソニーはハードウェアレベルで競合に追いつく必要があり、フロントライト付きのPearl HDディスプレイを搭載したデバイスの発売が期待されよう。すべてのタブレット、電子書籍リーダーでソフトウェアを最適化するためにEvernoteを買収する必要もある。ソニーは同社の電子書籍リーダーブランドに忠実なごく一部のユーザーがどれほど献身的になれるかを認識していないのではないか。同社の製品全体の質とデザインを愛しており、ほかのデバイスを購入することなど考えない人々を筆者は知っている。最後に、ソニーは自主出版プログラムを持っておらず、インディー系タイトルを購入する方法がない。同社はこれらのタイトルの供給者としてSmashwordsの買収を考慮する必要がある。

 ソニーとKoboの未来は自社を差別化し製品ラインを再活性化しなければ暗い。これを達成する唯一の方法は自らを変化させるために必要な技術を持つ名声の確立した企業を買収することだ。すべてを内製化するのは効果的ではなく、名声が確立している企業を買収するのがより容易な場合、独自システムを開発するのはほぼ不可能だ。

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この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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