ビューワ開発者から見た、電子書籍業界のいま(前編)電子書籍覆面座談会(2/4 ページ)

» 2011年10月06日 10時00分 公開
[山口真弘,ITmedia]

iOS、Android、Windows Phone 7……UIの設計はますます困難に

―― iOS向けのビューワアプリだと、設定画面の呼び出し方も、画面中央をタップするタイプもあれば、例えば「理想書店」のように上もしくは下にドラッグしたら出てくるタイプもあったりとバラバラですが、これはAndroidのようなメニューボタンがないから、そうせざるを得ないということなんでしょうか。

T そうです。特に電子書籍のビューワは、とにかく全画面にコンテンツ表示させたいというのがあるので、そうした設計になるんですよね。ほかのアプリだとタイトルバーに置かれたボタンから辿れますけど、全画面でコンテンツを出されちゃうともうどうしようもない。iOS系はもう百花繚乱ですよね。Android端末をメインで触っているわたしなんかがたまに触ると、どうすればいいんだろう? てなっちゃう(笑)。

X 全画面表示で使えるボタンはホームボタンしかないということになると、操作としては完全に詰んでいるんですよね。だから、何か操作方法を考えなくちゃいけなくて、その中で一番単純なのが、真ん中タップだということです。どうしようもないんで、とりあえず何かたたいたら起こる、という範ちゅうで収めるしかないですよね。

T だから、既存の電子書籍ビューワの多くが「タップ=進む」なんですよ。気軽に読み進めたいっていうニーズがあるわけですよね。先ほどの理想書店の場合は、タップにそういう割り当て済みの操作が存在するので、ほかの操作にしなくちゃいけなかったんでしょうね。

 画像系のビューワは特にそうですが、フリックのつもりが動いちゃったり、逆だったりすることが多いですね。慣れている人と慣れてない人、はらうスピードが速い人と遅い人がいるので、チューニングが難しいんですよ。最大公約数もありませんし。

 また、特に問題になりやすいのが、「タップとロングタップの差」です。スマートフォンに慣れている方は使い分けられるんですけど、そうじゃない方だと震えてしまってうまく押せなかったりで、微調整が大変です。画面サイズにも関係するので、なおさらですね。

X 僕もユーザーからメニューが出ないとか、結構クレームが来ましたね。いったいどんな操作をしているんだろうと。

―― 例えばそれは年齢による違いとか、リテラシーの違いとか、有意な傾向はあるものですか?

T やっぱり年配の方は、ロングタップが難しいようですね。後はユーザーのPC歴。慣れてない人の方が、操作中に手がぶれてしまっている印象はありますね。

X 「母親が操作していたら、操作のたびに何か動くといわれた。これをオフにする機能を付けろ」って言われて、機能を付け足したことがありました。タップしてめくろうと思ったら指が当たったみたいで、ピンチになって拡大になっちゃうから、こんな機能は要らないって言われて。

T サービス提供社側から、この機能は使わないから要らないとか言われることもあります。ありすぎて分からなくなるとか、どうせ使われないとか。確かに、そういうオン/オフの設定を触る人ってあまりいないんですよね。そもそもメニューまでたどり着かなかったりするので。だったら取っ払ってくれと。恐らくサポートが大変なので、できるだけ制限して問い合わせがこないようにしてくれということだと思います。

―― なるほど。サポート絡みの事情ですか。概して、Tさんの場合はITリテラシーが低い人に合わせて仕様の部分で切る、といったところでしょうか。

Metro UIを採用したWindows Phone 7.5。OS間で異なるUIが開発の障壁に?

T そうですね。Androidだと、OSの作法に合わせるというのも心掛けています。普通にブラウザを触っていれば、OSの作法に慣れてくるはずなので。逆にビューワ側で勝手なことをやってしまうと、「何か違う」って違和感を覚えるはずなんですよ。

―― OS標準の操作に合わせておくことが、ITリテラシーが低い人への対策にもなるということですね。Androidもこれから初心者がどんどん流入してくる可能性が高いわけですけど、そこはもうOSの作法で学んでくれと。

T はい。ただ出版社の方はiPhoneに合わせて話をしてくるので、Androidのユーザーが本格的に使い始めたら、お互い違う意見を言ってくると思うんですよ。今後そこは揉めるかもという懸念はあります。しかも、Windows Phone 7が新しく出てきたじゃないですか。あれはMetro UIというまったく別のUIなので、iOS、Androidと三つ巴になってきたらとてもじゃないですが共通化できないでしょうね。そうした事情が分からない出版社の方の意見は、今後もっと増えるとみています。

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