オプティム、雑誌定額読み放題「タブホ」の近未来を語る

全文検索機能や感想などを共有できる「クチコミ機能」を追加するなど、テクノロジーの活用で雑誌ニーズの創出を図ろうとしている。

» 2015年06月03日 05時00分 公開
[西尾泰三eBook USER]

 オプティムは6月2日、都内で発表会を開催し、雑誌の定額読み放題などを提供する「タブレット使い放題・スマホ使い放題」で今後予定する動きを明かした。

 この日の発表内容はこれまでの概要説明とこれからの施策について。前者はeBook USERで何度も取り上げているので、改めて語ることは少ないが、サービス利用者の属性が幾つか明らかにされたのが目を引く。利用デバイスはiOS端末が75%、Android端末が25%。iOS端末はiPad(51%)とiPhone(49%)でほぼ拮抗(きっこう)。雑誌の読破率(完読率)は24%で、10ページ以上読んだ雑誌は平均して月9.6冊だという。

 これからの施策については、大きく「雑誌ラインアップ拡充」「販売パートナー拡充」「アプリの機能追加」の3点に集約できる。

 雑誌ラインアップの拡充では、新たに講談社、実業之日本社が参画。講談社は『週刊現代』『FRIDAY』『おとなの週末』『COURRiER Japon』の4誌を、実業之日本社は『月刊ガルヴィ』『NAIL VENUS』の2誌を6月中に配信開始する。

 上記の雑誌はいずれもNTTドコモのdマガジンやビューンなどには配信実績があるものだが、他社サービスで配信されていない雑誌の獲得にも成功したようだ。

 学研グループのBookBeyondからは『すてきな部屋づくり』『BMW COMPLETE』『野菜だより』の3誌が、ぶんか社からは『レッツゴー4WD』『ザ・マイカー』『GERMAN CARS』『アメ車マガジン』『VIBES』の4誌がラインアップに追加される。これらは本稿執筆時点で他の定額読み放題での配信は確認できない。これにより、タブホのラインアップは21社189誌になるという。他社サービスとのラインアップ比較は「雑誌読み放題サービスを比較する――ラインアップ編」にまとめたのでそちらを参照してほしい。

 販売パートナーとしては、NTT東日本、NTTぷららに加え、新たにイオンが参画。6月6日から全国のイオン店舗での各種回線契約時にタブホの提案も開始する。

 このほか、総合デジタルショップ「テルル」を有するピーアップ、携帯電話販売事業を手掛けるT-GAIA、マンション向けにインターネット接続サービスを提供しているテンフィートライトなどが新たに販売パートナーとなる。ピーアップとT-GAIAは6月中旬から、テンフィートライトは8月をめどにタブホの販売を開始するとしており、リアルでの流通チャネル開拓が進んでいることを感じさせる。このほか、6月1日に発表されたローソンとのタブホタイアップキャンペーンも紹介された。

全文検索機能や感想などを共有できる「クチコミ機能」を追加

 最後にアプリの機能追加について。6月以降順次追加予定の機能として、全雑誌横断の全文検索機能のほか、感想などを共有できる「クチコミ機能」、ページ上にシールのような画像を貼れる「シール機能」が発表され、主にコミュニケーション面の機能拡充を図る。

シール機能説明(発表会資料より) シール機能説明(発表会資料より)

 シール機能はサービスを利用している他のユーザーにも表示されるというもの。7月追加予定の機能で、実際のデモを確認することはできなかったが、あるページに付けられたすべてのユーザーのシールを表示させるとは考えにくいので、特定のユーザーとの共有にとどまるとみられるが、具体的な機能については不明だ。

 一方、6月に機能追加予定のクチコミ機能は、デモも見ることができた。仕組みとしては任意のページで画面上部の吹き出しアイコンをクリックして感想などを投稿するというもの。

クチコミ機能説明(発表会資料より) クチコミ機能説明(発表会資料より)

 投稿はTwitterやFacebookにも行えるが、オプティムはこの機能拡張に併せPC Webのサイトも新設予定で、同サイトにクチコミの投稿が集約される構造になっている。

 Webサイトでは各雑誌の各ページごとに固有のURLが存在しており、それぞれのページへのクチコミを一覧で見ることができる。アプリがインストールされた環境からなら、そこからアプリを起動して該当ページの表示なども可能となっている。

PC Webサイトも新設する(発表会資料より) PC Webサイトも新設する(発表会資料より)

 一般的に、雑誌の定額読み放題サービスでは、バックナンバーはある一定期間(例えば過去12号)分が用意されており、最新号が配信されると最も古い号がバックナンバーのリストから消えて読めなくなる。これは準新刊を扱うタブホでも同様だ。

 では、リストから消えたとき、それまで集まったクチコミはどうなるのか。もしWebサイトの該当ページも消えるのだとしたら、そこに集まるクチコミも消えることになる。バックナンバーリストから落ちた後も、Webサイトの該当ページとそれまでに集約されたクチコミを残す手もあるが、この場合は読めなくなった以降の新規クチコミは生まれなくなり、継続的なコミュニケーションサイクルとはならないだろう。

 以上から連想できるのは、オプティムは雑誌と読者のインタラクションを雑誌コンテンツの付加価値と考え、それを集約するプラットフォーム化していくことで、バックナンバーの提供期間で有利な条件、つまり、究極的にはバックナンバーすべてを読み放題とする流れを生み出したいのだろう。これは雑誌コンテンツのソーシャルリーディング的なサービスとでも言えそうだが、同社の言葉を借りれば、これらの機能を通じて、“もっと”雑誌を身近にし、潜在需要を掘り起こすことにつながっていくかもしれない。

 既存の書籍流通と競合しない準新刊を扱い、サービスの流通チャネルをリアルの場でしっかりと開拓しつつ、ソーシャルやサーチといったテクノロジーの活用で雑誌ニーズの創出を図ろうとするオプティム。特にソーシャル関連機能の部分で今後の動きが注目される。

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