雑誌読み放題サービスを比較する――選ぶポイントは?短期連載

月定額で雑誌が読み放題になるサービスが人気だ。各社のサービスを比較する本連載。最終回ではそれぞれのポイントをチェック。

» 2015年05月26日 06時00分 公開
[eBook USER]

 近年よく話題になる定額制サービス。毎月一定額を支払うことで、利用し放題になるサービスは、音楽や映像の世界では幾つか有名なサービスが存在するが、その波は、本、とりわけ雑誌の領域にも押し寄せている。

 本企画では、NTTドコモの「dマガジン」のほか、オプティムが提供する「タブレット使い放題・スマホ使い放題」、「ビューン」、U-NEXTの「U-NEXT」の4サービスについて、幾つかの視点から比較してきた。

 第1回では、各サービスで読める雑誌のラインアップを比較、第2回ではそれぞれ配信される雑誌の読めるページ数に違いがあるのかを調べた(U-NEXTは雑誌読み放題のサービスを単体では提供していないので、雑誌ラインアップを除く比較は行わなかった)。

 その後dマガジンで『FRaU』(講談社)が追加されたり(5月12日から)、ビューンで『GQ JAPAN』『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)、『パチンコオリジナル必勝本』(辰巳出版)の3誌で全部読みの提供が終了し、読み放題のみとなる(読み放題で読めるページが増えた)など幾つかの動きも起こっている。

 短期連載の最後となる今回は、結局どのサービスがよいのか? という問いに対する幾つかの押さえておきたいポイントをまとめた。

左からdマガジン(NTTドコモ)、「タブレット使い放題・スマホ使い放題」(オプティム)、ビューン

dマガジン 月額400円(税抜き)、試用可能期間:31日(キャンペーン中。通常は7日)

 もうこれは周知の必要もないかもしれないが、dマガジンはdocomo IDがあれば使えるサービス。キャリア依存がなく、1つのdocomo IDで5台まで利用することができる。

 dマガジンは後発のサービスだけにユーザーインタフェース(UI)が洗練されている。モバイルデバイスで使いやすいUIに加え、雑誌ごとのほか、記事単位(14ジャンル)での新着やランキング(6種類)なども提供され、コンテンツを横断的に楽しむことができる。

上下左右へスムーズに動くdマガジンのUI。「雑誌から選ぶ」「記事から選ぶ」「おすすめ」「ランキング」などさまざまな視点で読むものを選べるようになっているのがよい

 初期設定では各記事単位で誌面データをダウンロードするようになっているので、場合によっては表示にもたつきを感じることもある。これは画面右上のメニューボタン内を[ダウンロード設定]-[バックグラウンドダウンロード]と進み、オンにすることである程度解消できる。

 なお、端末にダウンロードしたものはあくまで一時的なもので、雑誌ごとに設定されている閲覧期限の終了後は端末にダウンロードされていても閲覧できなくなる。

 マイページから「最近読んだ雑誌/記事」などに簡単にアクセスできるのはよいが、バックナンバーへのアクセスはあまりよくないのが残念なところ。雑誌を読んでいる際のメニュー画面で[雑誌紹介]からバックナンバーの存在を確認できるが、この画面で書影などタップしても読むことはできない。ホーム画面右上の設定ボタンから[参加雑誌一覧]を選択し、各雑誌のバックナンバーをタップすることでアクセスできるようになっている。

左が雑誌を読んでいる際のメニュー画面から行ける[雑誌紹介]、右が[参加雑誌一覧]の画面。後者からバックナンバーにアクセスできる

 気になるページで「クリッピング」機能を使うと、ページ単位で保存でき、後から参照できる。クリッピングされたページは雑誌の閲覧期限の影響は受けず、dマガジンを利用している限りいつでも確認できる。ただしクリッピングできるのは100枚と少なく、雑誌によっては版元の意向でクリッピングできないページもある。

クリッピングしたページはマイページから確認できる(左)。ただしページによってはクリッピングできないものも

タブレット使い放題・スマホ使い放題 月額:500円、試用可能期間:24時間

タブレット使い放題・スマホ使い放題 タブレット使い放題・スマホ使い放題

 ホーム画面は「ピックアップ」「ビジネス/情報」「生活/文化」「趣味/専門」の大きく4カテゴリで構成。『るるぶ』のみ専用のページが用意されている。カテゴリ分けが大味なので、るるぶ以外は目的の雑誌を選ぶのにやや手間が掛かる。ただし、操作はおおむね軽快で、ストレスを感じることは少ない。

 「お気に入り」機能を使えば、ホーム画面の「お気に入り」をタップした先の本棚画面にお気に入りの雑誌が並ぶ。本棚画面はお気に入りにした号が並ぶ形で、トップページの各書影をタップしたときに出るバックナンバーのポップアップなどは出ない。


ホーム画面の書影タップでバックナンバーがポップアップするのはアクセスしやすい

 dマガジンのクリッピングに近い機能として、しおり機能が用意されているが、雑誌に付けたしおりをその雑誌を開いたときに確認できる、というもので、複数の雑誌に付けたしおりを横断的に確認する手段はない。その性格上、dマガジンのクリッピング機能では許可されていないページもしおりを付けることはできた。

 オプティムのサービスは、幾つかの販売パートナーからも提供されており、アプリ内課金で契約した場合には含まれない端末保証なども付帯サービスとして付く場合がある。

 付帯サービスは幾つかアナウンスされているが、ネットプリントジャパンが提供するサービスと連携し、Lサイズのフォトプリントが毎月15枚まで無料になる「ネットプリントサービス」のほかは、サービス開始から半年たった現在もまだ提供されていない。


左からdマガジン、オプティム、ビューンの雑誌閲覧画面(画面タップでメニューを表示した状態)

ビューン 月額:444円(税抜き)、試用期間:24時間(キャンペーンなどで変動)

ビューン ビューン

 ビューンは先駆的に雑誌読み放題サービスを提供してきたが、今回の比較では、ラインアップ、読めるページ数ともにやや勢いが感じられない。ホーム画面には多くの要素が並び、情報過多な印象もある。

 雑誌読み放題(ビューン)を核に、雑誌単体購入(ビューン全部読み)、書籍・ムック単体購入(ビューンおトク読み)、コミック読み放題(ビューン・コミック)という課金形態(月定額、都度課金)の異なるサービスをアプリで拡張してきたので、やや複雑な構成になってしまっている。

 読み放題とストアサービス(全部読みまたはおトク読み)を1つのアプリで済ませたいという場合などには候補に入るかもしれないが、むしろ、Android搭載SoftBankスマートフォン/タブレットのみで利用する場合は月額300円となるのを生かし、コスト重視で選択するケースの方がありそうだ。


 本稿のまとめとしては、dマガジンは現時点で有望な雑誌読み放題サービスだといえる。雑誌のラインアップ、読めるページ数、UIなど、どこを取り上げても大きな死角はない。強いて課題を挙げれば利用にはクレジットカードが必須なことだろう。

 オプティムのタブレット使い放題・スマホ使い放題は、ラインアップはdマガジンに劣るが、読めるページ数は有料で販売される一般的な電子版と同じものであるケースが多い。最新号が読めないので、時事性の強い雑誌をタイムリーに読みたいという方には向かないが、アプリも軽く、利用のストレスは少ない。これからの動きが注目されるサービスだ。

 そのほかの候補として、U-NEXTの動画配信サービスをすでに契約しているのなら、追加料金が掛からない雑誌読み放題サービスを利用してみるのがよいだろう。雑誌の読み放題が単体では提供されていないので、動画配信サービスが自分に合うものかを軸に検討すればよい。

 キャリアが限定されるが、KDDI「ブックパス」の読み放題プラン(月額562円、無料試用期間14日)もよい。雑誌のラインアップにも優れるほか、実用書やコミックなども広くカバーされており、コストパフォーマンスも高い。

 雑誌はやっぱり紙だ、電子版はあればいいな程度、という方は、TSUTAYAとBookLiveの業務提携により提供されている「Airbook」もよいだろう。雑誌読み放題サービスとは別種のサービスだが、全国のTSUTAYA対象店舗で対象誌を購入する際にTカードを提示すると、その電子版が無料で提供される(BookLive!のサービス上で読める)。

 とはいえ、どのサービスも雑誌一冊程度の月額料金。読み放題なら普段購入しないような雑誌も気軽に読むことができる。サービスの質もひところに比べると格段に進化しており、満足感がある。試すにはいい頃合いといえるのではないだろうか。

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