今年の教育ITソリューションEXPO、キーワードは「アクティブ・ラーニング」

5月22日まで東京ビッグサイトで開催されている教育分野最大の専門展「EDIX」。次期学習指導要領の改訂も進む中、教育でのICT活用は加速しようとしている。

» 2015年05月21日 15時00分 公開
[西尾泰三eBook USER]

 改訂の際には教育内容、そして目指す方向性などについてさまざまな議論が巻き起こる学習指導要領――次の改訂は2016年度(平成28年度)に行う方向でスケジュールされている。「詰め込み」「ゆとり」「生きる力」など、時代ごとに打ち出される方向性はさまざまだが、次期学習指導要領では「アクティブ・ラーニング」(能動的な学習)がキーワードとして挙がることが多い。

教育ITソリューションEXPOの会場より 教育ITソリューションEXPOの会場より

 5月22日まで東京ビッグサイトで開催されている教育分野最大の専門展「教育ITソリューションEXPO」(EDIX)でも、アクティブ・ラーニング関連の展示が目立つ。そうした大きな文脈の中でデジタル教科書などの用語が顔をのぞかせている、そんな印象だ。

 アクティブ・ラーニングにおけるICTの活用の多くは、いわゆるビッグデータ的な視点で、児童生徒が主体的に学ぶ力を育てることに寄与していこうとするもの。いわゆるBI(ビジネスインテリジェンス)関連のソリューションを教育分野に適用したものが多い。例えば京セラ丸善システムインテグレーションが発表したBookLooperの学習分析サービス「BookLooper kizuki」などだ。

デジタル教科書も本格導入フェーズに

CoNETSブースより。教材ごとに異なる読書体験とならないよう画面の操作系などが共通化されている

 デジタル教科書・デジタル教材の領域に目を向けると、教科書出版社12社と日立ソリューションズによるコンソーシアム「CoNETS」のブースなどで展示がみられる。

 デジタル教科書(ここでは教員が電子黒板などを用いて児童生徒への指導用に活用するデジタルコンテンツを指す)の整備状況は、文部科学省の調査によると、2013年度の時点で以下のような状況にある。都道府県別では、佐賀県が整備率86.1%でトップ、北海道が8.7%で最低と整備状況には差が見られる。


 義務教育では、使用する紙の教科書は国の負担で無償給与されているが、デジタル教科書はそうした位置づけになく、自治体ごとに予算を確保して進めているのがこうした差として現れている。デジタル教科書について文部科学省は「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議を5月12日から開始しており、これから議論が進むところだが、次期学習指導要領の改訂と併せ、導入の検討が急ピッチで進むとみられる。

コンテンツだけでなくハードウェアも

シャープブース シャープブースでは高感度静電容量方式タッチパネルの紹介が多い。奥には4Kの電子黒板なども

 「書く」という視点では、シャープとソニーに注目した。シャープブースは4月に発表している80V型タッチディスプレー「BIG PAD PN-L803C」(8月に発売予定)が、ソニーブースは「デジタルペーパー学習支援ソリューション」や小中学校向け教育専用端末「Tenobo学習システム」などが目を引く。

 80インチクラスの静電容量方式タッチパネルでも高感度・高精度を実現したことを特徴とするBIG PAD PN-L803Cでは、従来機(PN-L802B)に比べおよそ半分となる約15ミリ角の小さな文字の書き込みも可能。また、スマホやタブレットの画面と同様のフルフラットを生かし、複数台並べたマルチボード構成でも快適に使えることなどをアピールし、電子黒板としての訴求を行っている。同様に、20インチの高感度静電容量方式タッチパネルに、筆入力(通電性のある毛先を持つタッチペン)を行えるデモも参考出展されていた。

ソニーブースの「Tenobo学習システム」

 一方ソニーブースでは、13.3インチ(1200×1600ドット)の電子ペーパーを採用したデジタルペーパー「DPT-S1」を用いた学習支援ソリューションを展示している。端末のリリースが先行し、それを用いた学習支援ソリューションが後から生まれた格好だが、國學院大學など幾つかの大学に納入されている。

 Tenobo学習システムは、ペン入力対応の専用タブレットを用いたソリューション。Tenoboという名称はテキストブックとノートブックを合わせた造語で、デジタル教材とノートを組み合わせた画面構成になっている。教材の一部をノートに引用したりするノート作りも容易に行えた。倉敷市多津美中学校や琉球大学教育学部附属小学校での実証実験の様子なども紹介されており、この10月から行う実証実験の公募もアナウンスされている。

 さまざまな企業の多様なサービス・ソリューションが展示されている今年の教育ITソリューションEXPO。これからの授業や教育がどういったものに変わっていくのかを感じ取ることができるだろう。

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