滴る水もへっちゃらな楽天Koboの「Kobo Aura H2O」を使ってみた

防水機能を備えた電子書籍専用端末として楽天Koboから来春リリース予定の「Kobo Aura H2O」。実機を試用する機会が得られたので、さっそく水没(!)させてみた。

» 2014年12月18日 15時00分 公開
[西尾泰三,eBook USER]

 楽天Koboが北米・欧州市場で10月1日に発売を開始した防水対応の電子書籍リーダー「Kobo Aura H2O」(以下、H2O)。日本でも2015年2月下旬に発売が予定されているが、発売に先立ち、H2Oを1週間ほど試用することができたので、気になる部分にフォーカスした内容をお届けしたい。

H2OはAuraの後継にあらず Aura HDの後継

左からKobo Glo、Kobo Aura H2O、Kobo Aura。H2Oのみ6.8インチで、ほかの2つは6インチ。表示しているのは「このマンガがすごい!2015」オンナ編の1位に輝いた『ちーちゃんはちょっと足りない』(阿部共実/秋田書店)

 まずはおさらいから。楽天Koboが現在国内販売している電子書籍専用端末は「Kobo Aura」(以下、Aura)のみ。Glominiはすでに販売終了している。海外では「Kobo Aura HD」というモデルも存在するが、こちらは日本未発売。ここに加わるのが来春発売予定のH2Oというわけだ。

 H2OはAuraの直接的な後継機ではない。H2Oは、Auraの特徴であるフラットスクリーンを備えていないし、画面サイズも6.8インチ(H2O)と6インチ(Aura)で異なる。H2Oは、Kobo Aura HDの電子ペーパーを最新世代(E Ink Calta)にし、防水機能を備えつつ軽量化を果たした後継機といえる。

 Auraとの違いは大きく「ディスプレイ周り」と「防水性能の有無」の2点。共通しているのは、フロントライト、4Gバイトの内蔵ストレージ、microSD/SDHCメモリカードスロットを搭載する点などだ。以下は、違いのある部分を表にまとめたものだ。

Kobo Aura H2O Kobo Aura
デュスプレイサイズ 6.8インチ 6インチ
画面解像度 1080×1430ドット(256ppi) 1014×758ドット
採用電子ペーパー E Ink Carta E Ink Pearl
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 129×179×9.7ミリ 114×150×8.1ミリ
本体重量 233グラム 174グラム
価格 1万9980円 1万2800円

ハードウェア

 H2Oは、Auraのようなスクリーンとベゼルの段差がないフラットスクリーンではない。H2Oはタッチパネルに赤外線方式を採用しているため、そのセンサーがこの段差部分に配置されていると推察できる(ちなみにAuraは静電容量式)。

 本体上部には電源/スリープボタン、下部には防水カバーキャップの内側にmicroUSBポートやmicroSDスロット、リセットホールがある。防水カバーキャップが外しにくいということもない。6.8インチサイズながら、なかなか手から離れないグリップ力があるのもよい。

表示周り

H2Oの読書設定画面より。画面のリフレッシュ間隔は最大でも6ページ

 電子ペーパーに特有の画面リフレッシュ(白黒反転)はデフォルトで6ページ単位。設定で1〜6ページ単位に変更できる。画像ページは必ずリフレッシュが入るが、これはKindleもそうだ。

 Auraでは画面リフレッシュが章単位に設定できるため、H2Oでもそれを期待していたが、そうではなかった。これは電子ペーパー技術の付帯技術が適用されているかどうかに依存するのだが、Auraで採用されている付帯技術はH2Oには搭載されていないようだ。


ホーム画面。スクリーンショットを撮ると部分的に色情報が残っているのが面白い

 以下は、端末内の設定ファイルに手を加え、スクリーンショットを撮ったもの(PNGファイルで取得できる)。楽天Koboの端末は、その気になればユーザーカスタマイズの余地が多いのは特定の層にはうれしいところだ。なお、試用時点でのH2Oのファームウェアバージョンは3.11.4。同時期に検証したAuraはバージョン3.1.0だった。

 H2Oのスクリーンショットを確認すると、サイズは1080×1429ピクセル(264ppi)だった(上部に11ピクセルの黒部分が存在する)。


リフロー型の書籍を表示。左からフォントサイズ最小、デフォルト、最大(表示しているのは折口信夫『日本書と日本記と』)

文字列指定でハイライトや検索なども可能

標準50%拡大100%拡大 固定レイアウトのマンガを拡大表示。左からデフォルト、約50%拡大、最大にまで拡大

フロントライトはさらによくなった

 暗いところなどでも読書できるフロントライトは引き続き搭載されている。ライト自体の改善が図られており発色はAuraよりも白っぽい。Kindle Voyageのような自動調光機能は備えていないが、読書中、画面の左端を上下にスワイプすることで明るさを調節できる(Kobo Auraでは2本の指で上下にスワイプすることで調整可能)。

 以下はAura、Kindle Voyageと比較したもの。

H2OとAuraの比較。左がライトオフ、右がライトMAXの状態

H2OとKindle Voyageの比較。左がライトオフ、右がライトMAXの状態

防水機能はいかに?

 Kobo Aura H2Oの特徴的な機能である防水機能は、IP67規格に準拠し、水深1メートルの真水に沈めた状態で最大30分の使用が可能とされる。現時点で国内販売(または発売予定)されている電子ペーパー端末の中で、防水機能を備えるのはH2Oだけだ。

 この防水機能、端末下部のmicroUSBポートやmicroSDスロットを水から保護する防水カバーキャップさえしっかりと閉じられていれば、結構な時間水に浸していても何ら支障はなかった。

防水カバーキャップの下にmicroUSBポートやmicroSDスロット、リセットホールがある

 ただし、水に浸すと画面の水滴をぬぐうよう警告表示が出る。この表示自体は設定からオフにすることもできるが、水にぬれた状態では操作はほとんど効かない。指先と画面の水滴は操作の大敵だ。

警告表示。画面と指の水分に反応して表示される

 H2Oが防水であることを知らなかったeBook USER編集部の宮澤が『ちーちゃんはちょっと足りない』を心をすり減らしながら読んでいる中、目の前に水が入ったバケツを置き、「落として」「え?」「それをここに落として」という問答無用の防水テストを行った様子が以下の動画だ。

まとめ

 まとめると、Kobo Aura H2Oは、電子ペーパー部分がPearlからCartaへ世代交代を果たし、防水機能も備えた。しかし、Auraのようなフラットスクリーンではなく、ページリフレッシュもAuraのように章ごとでは行えない。ただし、E Ink Caltaの採用および、とりわけライトの順当な進化により、表示周りはAuraより優れている。

 1週間ほどAuraと併用しながら試用してみて、甲乙付けがたい印象があるというのが正直な感想だ。静電容量式でフラットスクリーンのAuraは操作性に優れ、使っていて気持ちが良い。H2Oは防水ではあるが、本体が水に濡れると水滴をぬぐわないと操作がしづらくなるので、防水である、という以上でも以下でもない。たまに水滴が飛ぶかもしれないビーチなどで読むといったケースなら最適だが、例えばお風呂で読めるか、と言われれば、指と画面に水気を付けないようにする必要がある。6.8インチの画面サイズと防水機能が必要かどうかが競合製品やAuraとの製品選択のポイントになるだろう。

 なお、H2Oは2015年2月下旬に発売予定だが、10月末には300台を先行販売し、即予約完売となっており、この発送は18日から始まっている。さらにこの日、追加で2000台の先行販売を行うことが発表された。1000円分のクーポンがセットになっており、12月19日10時から楽天Kobo電子書籍ストアで注文を受け付ける。

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