マンガボックス、新広告導入で売上は上がるか?eBookマーケットリーダー

600万ダウンロードを突破し、絶好調の電子コミックアプリ「マンガボックス」。最近になってネイティブ広告も導入したが、これによる売上増はあるのだろうか。

» 2014年12月10日 10時00分 公開
[杉浦正武,ハートコミックス]

 前回の流れで、マンガアプリの売上について取り上げよう。しかし残念ながら、マンガアプリ単体での売上を公開しているところは少ない。

 珍しく売上規模が分かるのは、「王様ゲーム」などの電子コミックアプリを提供する、株式会社エブリスタだ。これは、DeNAとドコモが立ち上げたジョイントベンチャーとなる。ぱっと見る限り、詳細な決算説明資料は見当たらなかったが、株式会社であるからには、決算公告の義務がある。官報などに出される公告を見れば、ある程度、財務状況を把握可能だ。特にエブリスタの場合、資本金も大きいから「大会社」の扱いとなるのだろう、損益計算書まで開示している。

エブリスタの損益計算書 エブリスタの損益計算書(※なお、改めて開示しておくが筆者の前職はDeNAであり、エブリスタの立ち上げにも関わっている。ただし本稿では、内部情報は一切なく、公開情報のみで議論している)

 その規模は、純利益で5億円を超すほど。内訳までは分からないが、さすがの規模感を誇っている。

 こうなると気になるのが、同じDeNAグループのマンガ事業である、「マンガボックス」だ。9月17日付で、累計600万ダウンロードを突破。Google Playが選ぶ「2014年 ベストアプリ」の1つに選出されるなど、国内を代表する電子コミックアプリと言える。

 しかしマンガボックスの売上は、外からはなかなかうかがい知れない。

広告売上アップで、数字が明かされるか?

マンガボックスアプリを起動すると広告が配信されていることが分かる マンガボックスアプリを起動すると広告が配信されていることが分かる

 マンガボックスは主に、掲載している作品の単行本化でマネタイズしている――と言われている。しかし、具体的な金額は、DeNAの「一事業」として、セグメント売上の中に混ざってしまっている。つまり、主力のソーシャルゲーム事業を含めた「ソーシャルメディア事業」の枠内に、前出のエブリスタなどと一緒に紛れてしまっている状況だ。

 当のDeNAも、決算説明の場でマンガボックスの売上にあまり触れていない。直近の2014年度第2四半期の決算説明資料でも、スライド14で「9月に600万ダウンロードを突破し、着実にユーザーベースが拡大」とあるだけで、具体的な利益などには言及していない。

 マンガボックスが、まだ赤字覚悟で成長をしている段階なのか、それともセグメント売上の隠れみのの中で、がっぽりともうけているか……、真相は分からないのだが、先日、面白い変化があった。

 それは、マンガボックスが新たに広告を導入したということだ。アプリを起動すると、ほぼ「トップページ」といっていい場所に、広告が配信されている。しかも、マンガタイトルの並びに、似たサイズの枠で表示されているわけで、これは昨今よく聞く「ネイティブ広告」(※)の一種と言えるだろう。

※ネイティブ広告の定義は難しいが、本稿では「コンテンツと広告が、似た枠・体裁で掲示されており、広告がコンテンツに溶け込んでいるもの」として扱う。

 マンガボックスのアクティブユーザー数は、AndroidだけでもMAU:80万規模と推測されるので、iOSとの合計では間違いなく100万を超えているだろう。そのユーザーに対し、トップページで広告を打ち込んだということで、数億レベルのインプレッション数も期待できるだろう(この辺りの用語は前回を参照)。いよいよ、マネタイズのフェーズか? と期待もかかる。

 これによって大きな売上が上がれば、次回のDeNAの決算発表会で、言及があるかもしれない。業界全体が注目する巨大アプリの、広告導入は、吉と出るのか。よい結果が出るなら、電子コミックの未来は明るい。

著者紹介:杉浦正武

電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。


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