出版業界ニュースフラッシュ 2014年12月第1週

講談社や小学館の決算、DNPグループのトゥ・ディファクトが始める本の買取りサービスなど、注目の発表が相次ぎました。

» 2014年12月08日 12時00分 公開
[新文化通信社]

講談社、第76期決算は減収減益の見通し

 12月3日、講談社の森武文専務が、東京・音羽の講談社本社で開かれた「メディア事業局企画発表会」で報告。「昨期は増収増益だったが、(今期の売上高は)1200億円を若干下回るところ。減収減益の見通し」と語った。

 書籍は、百田尚樹『海賊とよばれた男』が文庫本と合わせて350万部に到達。コミックスも「進撃の巨人」「七つの大罪」「寄生獣」などが相次いでアニメ・映画化され、好調だった。また、電子書籍を中心としたデジタル収入の伸長率は前年比70〜80%増、ライツ収入も同80%の伸びとなったという。雑誌事業は販売・広告収入ともに苦戦しているというが、森専務は「これまで雑誌ビジネスが守りに入っていた。いよいよ(来年は)『攻勢の年』と心がけて、新たな雑誌・広告ビジネスを積極的に展開していく」と語った。

小学館、児童誌好調で雑誌売上げ1.2%増

 今年3月〜10月の雑誌売上は前年同期比1.2%増、市況が低迷する中で堅調に推移している。11月28日に行った2015年上期「雑誌企画発表会」の席上、桶田哲男常務が報告した。

 「妖怪ウォッチ」のヒットもあり、幼児誌、児童誌が好調。「小学一年生」の売上げは同28%増で、9月・11月号は完売したという。桶田常務は、「組織力」「発信力」「(小学館パブリッシングサービスなど)関連会社との連携」強化をさらに図り、「来年は女性誌でも大攻勢をかける」と語った。

 来年創刊90周年を迎える「小学一年生」の4月号(2月28日発売)は、34万部で発行する。付録に「妖怪ウォッチ」の人気キャラクター「ジバニャン」の目覚まし時計、ドラえもんのB4トートバッグなどを付け、完売を目指す。店頭用のインデックス付き見本も2000店に配布する予定。

挨拶する桶田常務 挨拶する桶田常務

MPD、減収減益の上半期決算

 11月28日、2015年3月期中間(H25.4.1〜同9.30)決算を発表した。売上高は933億3500万円(前期比2.5%減)で減収。営業利益は5億1600万円(同7.8%減)、経常利益は5億4100万円(同7.9%減)、第2四半期純利益は3億0600万円(同8.2%減)となった。

 「ONEP IECE」や「進撃の巨人」などコミックスの好調を背景に「雑誌」は前年をクリア。大ヒット映画「アナと雪の女王」関連本が好調だった「書籍」は前年比2.4%減と健闘したが、「BOOK」全体では同0.6%減に止めた。しかし、「RENTAL」(同19.7%減)が前期に比べ30億5600万円減、「GAME」(同18.8%減)が同6億3500万円減と大きく落ち込んだ。物流コストの圧縮などで販管費3億円強を削減したものの、売上げ減が響き、減収減益となった。

トゥ・ディファクト、来年1月末から本の買取りサービス開始

新サービスを発表した丸善CHIホールディングスの中川清貴社長(左)とトゥ・ディファクトの加藤嘉則社長 新サービスを発表した丸善CHIホールディングスの中川清貴社長(左)とトゥ・ディファクトの加藤嘉則社長

 大日本印刷(DNP)グループのトゥ・ディファクトは、来年1月末からネット書店では初めてとなる本の買取りサービスを始め、同じDNPグループ会社のブックオフコーポレーションの「ブックオフオンライン」で販売する。本を出品するユーザーは、現金かhontoポイントでの支払いを選択でき、買取り金額に応じてhontoポイントを付加する。

 また、来春には、honto内で購入した紙の本が電子化されている場合、その電子版を50%オフで購入できるサービス「読割50」も開始する予定。

 12月中旬にはスマホ用アプリ「honto with(ホントウィズ)」を配信。アプリ内でチェックした複数の本を、同グループのリアル書店を指定したうえで一括検索ができる。さらに、12月11日からはあらかじめ電子書籍がインストールされている端末「honto pocket(ホントポケット)」を発売する。端末とコンテンツをセットにして販売する。取扱い書店は丸善丸の内本店、同日本橋店、同お茶の水店、ジュンク堂書店池袋本店。

角川歴彦氏、「リアル書店の維持がネット書店への対抗軸」

挨拶する角川氏 挨拶する角川氏

 11月28日、東京・丸の内の東京會舘で行われた第5回「山田風太郎賞」など角川3賞の贈賞式で、KADOKAWA・DWANGOの角川歴彦取締役相談役は、リアル書店を「ネット書店への対抗軸」と位置付け、アマゾンとの関係について「ネット書店は大きな取引先であり大事にしていくが、対抗軸をつくることが健全な業界発展に結びつく」と述べた。

 また、大阪屋への出資については「取次会社を救済するのではなく、取次会社と取引きしている書店を救済することが目的」とし「出資した出版社の力で、再建も軌道に乗りそうである」と報告した。

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