出版業界ニュースフラッシュ 2014年6月第1週

出版業界で先週起こった出来事をまとめてお届けする週刊連載。6月第1週は取次の決算や日販・トーハン上半期ベストセラー発表など大きな動きがたくさんありました。

» 2014年06月09日 17時00分 公開
[新文化通信社]
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トーハン、増収減益の決算

 6月6日、67期(平成25年4月1日〜同26年3月31日)決算の概況を発表した。単体の売上高は4925億5700万円(前年比0.2%増)で8年ぶりに増収。営業利益は60億2200万円(同10.4%増)、経常利益は38億1700万円(同15.2%増)と大幅に伸長。しかし、当期純利益は法人税及び同税等調整額の増加により22億1100万円(同8.2%減)となった。自己資本率は31.3%と同1.2ポイント向上した。

 役員人事は清水美成常務が専務に、栃木裕史と豊田広宣の取締役2氏が常務に昇任。執行役員の森岡憲司氏(首都圏支社長)と中村勉氏(情報システム部長)が取締役に新任。正能康成専務と小宮秀之取締役が退任し、2氏とも関係会社役員に就く見通し。6月27日に行われる株主総会および取締役会で承認される予定だ。

 関連会社19社を含めた連結決算は、売上高5085億0200万円(同0.9%増)、営業利益60億4200万円(同0.3%増)、経常利益38億7000万円(同23.5%増)、当期純利益19億1000万円(同31.7%減)で単体同様、増収減益となった。

書・雑協、「児童ポルノ禁止法」改正案に反対声明

 書協「出版の自由と責任に関する委員会」と雑協「人権・言論特別委員会」は、6月5日に衆議院本会議で可決された「児童ポルノ禁止法」改正案に反対する声明を発表した。

 それによると、改正案では「児童ポルノ」の規定に「殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部を言う)が露出され又は強調されているものであり」と文言が追加されているが、「依然、定義は曖昧なままであり、いかようにも解釈されうる欠陥がある」と指摘。また、「単純所持禁止」規定については、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意志に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められるもの)」が罰せられるとしているが、両委員会は「そうした事実はどのように証明できるというのだろうか」と疑問を投げかけ、「児童ポルノの定義が曖昧なまま『単純所持禁止』を適用することに断固反対する」としている。

 同改正案は5日、衆議院本会議で可決され参議院に送られ、順調に進めば今国会で成立する見通し。

相賀書協理事長、「軽減税率と仕入税額控除・還付をセットで」と要望

 6月6日、参議院議員会館(東京・千代田区)で開いた「文字・活字文化と国民のくらしを考える緊急集会」(文字・活字文化推進機構主催)で発言。出席した自民党の細田博之衆議院議員(活字文化議員連盟会長)や河村建夫衆議院議員(子どもの未来を考える議員連盟会長)ら国会議員へ訴えた。

 緊急アピールでは政府・与党や野党各党に対し、「軽減税率を導入し、新聞、書籍、雑誌に適用するよう強く要望する」などと謳い、全会一致で採択された。

議連総会、「改正著作権法、必要ならば改正も」

 「電子書籍と出版文化の振興に関する議員連盟」(河村建夫会長)が6月4日に第3回総会を開催した。

 衆参両院で付された付帯決議について、河村会長は「懸念が残るので付いた。電子書籍の再販適用や海外事業者への消費課税などの課題も残っている」と発言。

 日本出版者協議会の高須次郎会長は「紙と電子の一体的な設定でないため、紙の出版権しかない出版者は電子海賊版対策ができない」と述べ、改めて改正を要望。

 これに対し、自民党の小坂憲次参議院議員は個人的見解としながら、「著者の立場は弱く、ある意味で自由度をもたせた。出版契約で一体的な契約を促進すべき」と答えた。

紀伊國屋書店のアジアンベイシス、産業革新機構と6億円の出資契約

 6月3日、紀伊國屋書店の海外ECビジネスを手がける関連会社、アジアンベイシス?に産業革新機構が6億円を出資して、今週中に実行する。アジアンベイシスの資本金・資本準備金の合計は9億1000万円になる。今後3年をめどに産業革新機構が最大9億円、紀伊國屋書店が2億円の追加出資を行う予定。

 アジアンベイストは昨年4月に設立。今年8月にシンガポールでECサイトを立ち上げ、以降マレーシア、タイ、台湾、オーストラリア、アラブ首長国連邦でもサービスを開始する。紙の本、電子書籍ほか、マンガ、キャラクターグッズ、文具、模型、玩具、インテリア雑貨、工芸品、ファッションなどを扱う。

 会見に臨んだ紀伊國屋書店の高井昌史社長は、「3年で30億円の売り上げをあげたい」と話し、世界通販市場の開拓に意欲を示した。

日経BP、トルコの出版社を買収

 トルコの出版社、MDG社を買収し、同国での出版事業に乗り出す。買収額は増資分を含め約6億円。日経BPが80%の株式を取得し、経営権を握る。社名は日経MDG社とし、本社はイスタンブールに置く。社長はMDG社の創業者であるザフェル・ムトゥル氏。日経BPの長田公平社長は取締役会の議長を務め、同社から代表権をもつ上級副社長を派遣する。

 MDG社は2003年設立。米タイム社などからライセンスを取得し、経営誌「フォーチュン」やファッション系の「インスタイル」などを発行してきた。買収後は、既存事業を継続しながらデジタル事業を強化。日経BPの得意分野である医療、建設など専門情報を提供するとともにセミナー、イベントなども展開していくという。

出版デジタル機構内に「読書権管理センター」(仮)設置を検討へ

 5月31日、東京・神保町の「Viva神保町」で行われたセミナー「電子書籍が変える読書の世界」で、大活字文化普及協会の相賀昌宏理事長が「読書権管理センター」についてその必要性を話した。

 同センターは、視覚障害者や高齢の読書困難者に向けた大活字本などを製作する際、著作物の権利者がデジタルデータを提供する際の事務、契約手続きの代行を手がける。これまで個々に行われてきた著作権利用の交渉を一元管理していく。相賀理事長は「一括集中する場所は必要。読書困難者だけでなく、晴眼者にとっても新たなサービスができることにもつながる」とその設置に前向きな考えを示した。

MPD、減収減益の決算

 5月30日、2014年3月期(平成25年4月1日〜同26年3月31日)決算を発表した。売上高は1992億8600万円(前年比3.4%減)で2000億円を割り込み減収減益となった。

 売上高の内訳は、「BOOK」1031億5100万円(同1.1%増)、「AVセル」329億4500万円(同15.8%減)、「GAME」202億5400万円(同3.8%減)、「RENTAL」306億5300万円(同4.2%減)、「その他」122億8300万円(同3.0%増)。

 主力の書籍はプラスだったが、その他のジャンルで軒並みマイナス。とくにAVセル部門の落込みが激しく、CDは前年比19.5%減となり大きく影響した。

 利益面では、営業利益は10億3400万円(同24.8%減)、経常利益は10億9300万円(同21.6%減)。当期純利益も5億6300万円(28.1%減)となった。

日販・トーハン上半期ベストセラー、1位はアスコム『長生きしたけりゃ〜』に

 両社は6月1日、2014年上半期(2013年12月1日〜2014年5月28日)のベストセラーを発表、1位はともに槙孝子『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』だった。同書は現在、93万部(36刷)を発行している。2位は水野敬也、長沼直樹『人生はニャンとかなる! 明日に幸福をまねく68の方法』(文響社)、3位は和田竜『村上海賊の娘 上・下』(新潮社)。

 日販の4位(トーハン5位)はフランクリン・コヴィー・ジャパン:監修/小山鹿梨子:絵『まんがでわかる7つの習慣』(宝島社)、日販5位(トーハン4位)は元宮秀介ほか『ポケットモンスターX・Y 公式ガイドブック完全カロス図鑑完成ガイド』(オーバーラップ)。だった。

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