ソニー、PRS-T3を9月19日にリリースか

ソニーは今月中に電子書籍リーダーの最新モデル「PRS-T3」を発表するとみられる。しかし、スペック上は目を見張る特徴はなさそうだ。

» 2013年09月02日 17時30分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 ソニーは次世代電子書籍リーダー「PRS-T3」を2013年9月19日にリリースする。この正確な日付は大量にソニー製品を在庫する複数のオンライン小売業者からもたらされたものだ。新型電子書籍リーダーは150ドルほどで販売されるとみられ、カラーバリエーションはホワイト・レッド・ブラックの3色だ。

 PRS-T3は画面解像度が1024x758ピクセルの6インチE Inkディスプレイを搭載する。他社が今年リリースするデバイスと異なるのは、ソニーがT3でフルHD体験を提供しないことだ。幾つかの電子書籍リーダーはすべて2048x1536ピクセルの解像度を持つ新型HD Pearl電子ペーパーディスプレイを搭載する予定となっている。奇妙に映るのは、ソニーが静電容量性タッチスクリーンディスプレイではなく、Neonodeの赤外線ディスプレイの採用を計画していることだ。

 ソニーはKindle PaperwhiteNook Simple Touch with Glowlightkobo glo、Kobo Auraなどで採用されているフロントライトの採用を見合わせ、代わりに、ライト付きの超薄型カバーを提供することにした。ソニーはタッチスクリーンとフロントライトを初めて採用した企業だが、それらの試みは必ずしもうまく行かなかった。ソニー・フランスのグループIT部長、ステファニー・ラング氏は、最近のインタビューで、「ディスプレイ側面からライティングを行うのは必ずしも便利ではなく、読書体験を損なうことすらあると考えています。従来の紙上での読書体験から乖離しています。反対に、読者の思い通りに調節できるライトをカバーに組み込むと便利ではないかと考えています。端末にライトを組み込むことは追求していません」と語った。

 フロントライトディスプレイ採用への抵抗は、ソニーの旧電子書籍リーダー「PRS-700」での経験から派生している。ソニーは側面にライトを組み込んだ、どうしようもない電子書籍リーダーを2008年にリリースしている。このことがコンセプト全体に大きく影響しているとラング氏は話す。

 「読書用ライトは紙に近い読書体験を求める読書家向けで、ライトはその体験を台なしにするものだと結論付けました。よって、読書体験を向上させるフォント拡大機能のような、紙の本が持たないほかの機能に集中しました」(ラング氏)

 彼女は続けて「われわれが行った調査によると、デバイスに組み込まれたライトの存在は製品選択の基準にならないようです。時に人気のある機能ですが、それだけに過ぎません。効率性の高いデバイスを提供するためライト以外の部分に集中し、ライトはアクセサリーで提供することにしました。これがわれわれの取った対応です」という。

 ソニーがほかの企業に対してやや有利な点の1つは、ソフトウェアだ。電子ライブラリーの怪物企業OverDriveと提携しており、読者はアプリ内から直接書籍を借りたり読んだりできる(編注:日本発売モデルでは未実装)。OerDriveの関係者によると、ソニーは提携関係を続けており、既存のライセンス契約も保持している。契約内容はソニーの電子書籍リーダーが排他的にOverDriveアプリを搭載し、OverDriveが取引のあるすべての図書館に電子書籍リーダーを販売するものだ。これはすべてOverDriveのTest Driveプログラムにより実行され、世界中の図書館に一定のデバイスを推薦し販売するものだ。出版社はその情け容赦なさに定評あるAmazonとは違うソニーにかなり満足している。

 ソニーは2012年を通してReader Storeを更新してきた。電子書籍を推薦する電子書籍発見プログラムと独自機能に多額の投資を行っている。大規模なWebサイトの再立ち上げも行い、古いスタイルを廃止し、より直感的な読書インタフェースを備えている。PRS-T3上での新ストアの見た目はまだ分かっていないが、旧モデルのそれと比較してビジュアル的に変わるだろう。

 PRS-T3は電子書籍リーダーの現在のパラダイムを変更するものではない。既存の電子書籍リーダーユーザーの買い替え需要を喚起するようなものは何も利用していない。ハリー・ポッターの無料書籍を求めているのでなければ、買い替えに足る理由はないようだ。ソニーは現時点で、発売へ向けて準備を進めており、年間の製品リリースサイクルに歩調を合わせている。

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