PFUから登場した“裁断せずに”スキャンできるドキュメントスキャナ「ScanSnap SV600」。注目を集めるこの製品を試した。
タイトルに「非破壊」とあるのは、書籍の束を“裁断しないで”読み込めるドキュメントスキャナということだ。今回は、大量の原稿を連続して、かつ、自動的に短時間で読み込むScanSnapシリーズに加わったオーバーヘッドスキャナ『ScanSnap SV600』を紹介しよう。
SV600の外観から見ていこう。長方形の台座部分に太めのしっかりしたアーム、上部には特徴的なデザインの読み取りセンサー部が載っている。いわゆる「書画カメラ」的な形状で、平たい台に置いた原稿を上側から読み取るものだ。
ScanSnapシリーズといえば、シート状の原稿を読み取るドキュメントスキャナの雄として認知されている。ビジネス現場で扱われる書類(多くは名刺サイズ〜A4判)を、簡単な操作で素早く読み取ることができ、かつ本体がコンパクトで使用および設置場所を選ばない。このことが国内のビジネスシーンに広く受け入れられ、やがて電子書籍の普及とともに、手持ちの本をデジタルデータにしたいという“自炊”ユーザーが愛用するようになった。
しかし従来のScanSnapは、あくまで薄いシート状の紙を読み取るものである。裏表同時の読み取りや大量ドキュメントの連続読み取りもシート原稿に特化したからこそ可能になったのであり、シートを束ねて冊子や書籍に成型されたものは、分解ないしは裁断しなければならなかった。今回のSV600のように、本を破壊しないで読み取ることができるコンパクトなスキャナが待たれていたのだ。
デバイスドライバのコンフリクトを避けるため、SV600ではドライバソフトのインストールから行う必要がある。1台のPCに複数のScanSnapシリーズを共存できるようにしてあるためか、不用意にPCに接続するとトラブルが起こるのかもしれない。Windows用のスキャナドライバやアプリケーションはDVD-ROMで供給されるため、モバイルノートPCなどを使うときは特に注意したい。なお、ScanSnap SV600のサポートソフトは現時点でWindows用のみ提供されており、2013年秋にはMac OS X用のソフトウェア(ドライバ、名刺管理、OCRソフト)がダウンロード配布予定だという。
正常に認識されたら、専用読み取りユーティリティのScanSnap Managerを起動し、初期設定を行なってしまおう。SV600の動作設定、立体物をスキャンしたときのゆがみ補正、アプリケーションへのイメージデータの受け渡しなど、すべての操作はScanSnap Managerおよび同Folderで行う。ほとんどの項目は初期設定のままでかまわないが、SV600の機能を確認する意味でも一度は見ておきたい。
ScanSnap SV600の特長は、何といっても新開発のVIテクノロジー(Versatile Imaging Technology)にある。Versatile(多目的の、多才な)と称されるのは、シート状の原稿に限らず、本(書籍)など厚みのある原稿も読み取れるということだろう。原稿をセンサーの下部に置き、台座部分中央にあるボタンを軽く押すと、独特なオーバーヘッド構造の読み取りセンサー部分が動き出す。
読み取りヘッドの左右には巨大な変形レンズがあり、その奥に高輝度白色LEDがある。中央が読み取りセンサー(ラインCCD)のレンズ縮小光学系だ。うっかり指先でさわって汚さないようにしたい。
LED照明が付き、ヘッドが前方に突き出すように動き出してから、A3判をスキャンし終わるまで約3秒、ヘッドが元の位置に戻るまでが約2秒と、1回の読み取りに約5秒かかる。なお、読み取りサイズをA4横に指定すると、その範囲までしかヘッドが動かないため、読み取り時間は若干短縮できる。
読み取れる原稿のサイズは最大でA3判横(横432ミリ、縦300ミリ)。SV600には、原稿を置くマットが付属するため、原稿を置くべき場所のおおよその見当が付くようになっている。
原稿は、SV600に対して必ず水平に置かなくても大丈夫だ。ScanSnap Managerにより、原稿の角度のズレなどはおおよそ自動補正が利く。ただし、全体が黒っぽいもの、もしくは光沢があってLED照明の光が斜めに反射してしまうと、背景のマット(の黒)と区別できずに位置認識もうまくいかない。その場合は、白っぽい背景の上に読み取らせたいものを置くとよいだろう。
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